悪厄貴族~悪役貴族に転生した少年は知識とスキルで蹂躙無双する~
折本装置
第1話「悪役貴族、処刑される」
「アルバルゴ・サトゥーゴ!国家転覆をもくろんだ貴様を、反逆罪で処刑する!」
冤罪だ。父親の言葉を聞きながら、アルバルゴはそう思った。
齢十四の自分にはそんな大それたことをする力はないし、意思もない。
「貴様が、我がサトゥーゴ公爵家の嫡子であるマリアンヌを殺そうとしたことはわかっている。これはただの殺人未遂ではなく国家に対する反逆罪だ!」
確かに父の言葉は半分は正しい。
公爵家というのは、つまり王家の分家であり、それを害そうとすればそれは国家そのものへの反逆。極刑は免れない。
ただしそれは本当に彼が殺そうとしていればの話だ。
実際にはやっていないし、やろうと思ったこともない。
しかし、反論は許されない。
相手が聞く耳を持たないから、ではない。
「むー、むー」
「はっ、何を言っているのかわからんな!」
猿ぐつわをされているので声が出せないからだ。
ついでに言えば逃げることもできない。
手枷足枷をされているし、呪術師によって拘束の呪いがかけられている。
そして、悲しいことにこの限りなく最悪に近い状況も長くは続かない。
もうすぐ終わる。
アルバルゴのすぐ隣にはフルプレートの鎧と斧を装備し、腰に剣をはいた処刑人がいる。
確か父の従姉妹だったはずだ。
冤罪を晴らすことはできない。
そもそも、サトゥーゴ公爵家は代々王国の司法を司ってきた一族。その当主である父がこの陰謀に加担しているのだ。
この状況を打開する方法などあるはずがない。
「アナタ、そろそろ処刑してもいいのではなくて?私もう飽きたわ」
「お父様!お腹が空きました!」
「おおすまないなあ!あと一分で終わるから我慢しておくれ」
相好を崩した父。
彼の隣にしなだれかかる妖艶な美女とフリフリのドレスを着た子供。
側室タルラーとその娘であるマリアンヌだ。
父は側室の言いなりであり、彼女とマリアンヌにとって邪魔な正妻の忘れ形見であるアルバルゴを排除するという願いもあっさりと聞き入れてしまった。
司法も親子の絆も捻じ曲げて、ただ色欲に駆られた下衆に、父は成り下がってしまったのだ。
「こーろーせ!こーろーせ!」
はっとアルバルゴは上を見る。
ぐるりと自分を取り囲み、見下ろす人々を見上げる。
「こーろーせ!こーろ―せー!」
「…………」
彼らは観客だ。
処刑はこの国において娯楽とされており、金を払えば誰であろうと観ることができる。
高額なので大抵は貴族か大商人だが。
「…………」
こんなにもたくさんの人が、アルバルゴの死を願っている。悲しいとは思わなかった。ただ怒りだけがあった。
ぎりぎりと口にはめられた縄を噛み締め、かといって他に何かできるわけでもなく。
「殺せ!」
父が叫ぶと同時に、斧が振り下ろされる。そして、彼の首が胴体と分かれた。
――こうして、アルバルゴ・サトゥーゴは命を落とした。
『再起動』
ーーはずだった。
『異能ーー『再起動』が発動しました』
『条件を達成しました』
『前世・佐藤十三の記録を閲覧可能になりました』
◇◇◇
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