第32話

声を殺して泣いていた。瞳、ごめんなさい、私のせいだ。私とは連絡取らないで逃げてるかもしれないし。


…あ。


瞳からだ。


知紗ちさ?」


いつものように、名前を呼んでくれた。


「…っ、ごめん、なさい…」


「…どうした?」


「私のせい…」


「…知紗?どうした?具合悪い?」


「…瞳、いなくならないで…」


「…今家?」


「…うん」


「待って。宮本さんに話すから。…宮本さーん!すんません!あのー、彼女が!1人だとまずいというか、心配なんす!まじで、俺…」


「いーよー。帰りな?」


「すみません!…知紗!すぐ帰る!待ってて!」


いつもの瞳の声と違って、慌てていた。必死な声だった。瞳は、帰ってきてくれるって。よかった。でも、私がやったことはきっと、許されない。


「知紗!」


瞳がいつの間にか帰ってきて抱きついてきた。


「どうしたんだよ…話してくれよ…」


「旅行の話…」


「ん?…あー、なんか言ってたな」


「私、瞳のこと話したし、瞳の写真も見せた」


「は?」


ほら、ね。


「ごめん…もう、私ともう、会えないよね」


「なんで…?」


「っだって、瞳のこと他人に話したりして…捕まっちゃうよ」


「…え?いや、大丈夫だって。知紗どうしたんだよ」


優しく、抱きしめられたまま話している。

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