黙示ノ見聞録~村を焼かれて将来を誓った幼馴染も亡くなり、死を望む僕をヤンデレ仕草満載の機械少女が心を教えろと押し倒してくれるのですが~

リヒト

プロローグ

 この世界はクソッタレだ。

 子供の頃、とはいってもつい先日の話だ。

 僕はこの世界がもっと単純で素晴らしく、美しいものであると。

 人は努力すればした分だけ報われて成功し、望んで己が行動すれば不可能など存在しないと愚直に信じていた。

 だが、少し空想の世界から立ち直って世界を見てみれば。

 現実を見てみれば。

 この世界はそんなに甘くなかった。

 世界には理不尽で溢れており、残酷だった。

 曇りなき、幼い少年の瞳に映った美しき世界は偽物であった───だけど、本当に。

 

 ───だけど、本当に幼き少年の瞳に映った美しき世界は虚構だったのだろうか?

 

 ■■■■■


 息が苦しい、足が重い。


「はぁ……はぁ……はぁ……暗いなぁ」


 世界にはかつて、太陽というものがあったらしい。

 遠き空のかなたで輝き、大地を優しく明るく照らしてくれるらしい。


「……くれぇ」


 ならば、どうだろうか?

 今、空を眺めてみれば何が見えるだろうか?

 息を切らしながら、痛む足を動かしながら、それでも歩き続ける僕は視線を上に向ける。

 それで得られたのは、分厚い赤黒い雲に覆われたその空による圧迫感ばかりだ。

 優しさも、明るさもない。

 

「……」


 だから、圧迫感から逃れるために視線を少しばかり下へと下げてみよう。

 それで、僕の視界に映るのは廃墟となった一つの村だ。


「おぇぇぇぇぇぇぇぇ」


 僕は堪えることのできなかった吐き気に従って、地面へと膝をついて、もうほとんど何もないような胃液だけを口から吐き出す。


「はぁ……はぁ……はぁ……」


 廃墟となった村。

 そこは、僕がつい先刻までいつもと変わらぬ日常を送っていた村だ。

 後には残ったのは崩れた建物に焼けた遺体、無残に食い荒らされた肉片ばかりだけ。


「……クソっ」


 上を見上げれば圧迫感が、視線を下げれば絶望が。

 ならば、前を見るほかない。


「……クソっ、クソが」


 僕は一度地面についた膝を再び持ち上げて立ち上がる。


「……」


 何もない。

 明日の食料も、明日の水分も、明日を共に生きる仲間も、明日を生きるための活力も。

 ただ、それでも僕は前へ前へと進んでいくのだった。

 自分の手にたった一つ。ボロボロになった一つの地図だけをもって。


「あの山の中腹には私たちの願いを叶えてくれる神様が居て、私たちを救ってくれるんだ。今度、私たち二人でそこに行って皆を救ってもらおう。それで、その後に私と一緒に世界を見て回ろう。あの山の中腹には───」


 痛いほどに聞かされた少女の言葉を淡々と自分の口で反芻しながら。

 僕は歩くのだった。

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