眠りの神秘、父性

 カタルは歩いていた。長いあいだ。おそらくあなたが生まれるよりもずっと前から。いつもいつも、ずっとずっと、歩き続けていた。疲れ果てて倒れるまで歩き続け、足が動かなくなると倒れこんで死んだように眠る。目を覚ますと再び足を前に運ぶ。カタルにとってはもはや昼夜などどうでもよかった。カタルにはすべてを超えた、大切で重要な目的があった。カタルにはずっと分かっていた。彼の目的が何なのか。


 そのときもカタルは動かなくなった足を止め、重力の働くままに身体を倒した。ものすごく疲れていて、青臭い土に体をうずめ、押し寄せる眠気に身を任せた。ミミズが腹の上を這いまわるのも感じなかった。

 ものすごく長い時間眠ったあと、彼は目を開けて上半身を起こし、周りを見渡す。何をすべきなのか彼には分からなかった。


  なぜ僕はここにいるんだろう?そして僕は何をすればいいのだろう?


 彼は眠りすぎたのだろうか、それとも彼の目指す目的があまりにも大きくそして遠すぎたのだろうか。カタルは歩く目的を見失ってしまった。


  僕は何のためにここまで歩いてきたのか?どうしても思い出せない。それより、とにかく眠い…



  ジリジリジリ…!

 目覚ましの音でかたるは起きた。「今日は休みじゃなかったか⁉」語は慌ててカレンダーに駆け寄る。「良かった、今日は祝日だよな...」休みだから寿司詰めの通勤列車に揺られて陰気なオフィスで憂鬱な一日を過ごさなくともいいのだ。語はもう一度体を横たえ、目を閉じる。とても大きな、神のように偉大な睡魔が、圧倒的な暴力性で彼を包み込んだ。


  このまま世界が終わってしまえばいいのに…

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