第54話 勇者と魔王とカレーうどん

「それじゃぁ、これで今日の授業は終わるわね。皆さん、お疲れ様」


 お婆ちゃん先生がゆっくりとした足取りで教室から出て行くのを見届けてから、レリアの方に視線を戻すと……レリアは少し眉を顰めて悩んでいた。


「んー……回路の構造は分かってるけど、これじゃ二つの魔法を——いやでも、うーん?」


 授業でわからない所……と言うよりも応用に頭を悩ませている感じだろうか? 俺にはよく分からないが。

 ……俺も人の姿を取れていたならば魔道具製作に手を出したかもしれないが、この竜の姿じゃ魔道具なんて作れないしな。あんまり真面目に授業は聞いてなかった。


 不真面目? うん、そうかもしれない。


「まぁ、これは放課後でいっか。リファル、ご飯食べに行こっ!」


 レリアは俺を肩に乗せ、レーナ皇女と合流してお昼ご飯を食べる事に。

 最近はこのレリアとレーナ皇女の組み合わせが定着してきており、視線が厳しめではあるが比較的過激な奴は現れなくなってきていた。


 レリアとレーナ皇女が言うには、ダンジョンから帰還出来た後の暫くの間はプリモディア組も、帝国組ことフォース組もお互いに王族/皇族を狙った暗殺かと騒いでたらしい。


 授業中に起こったことが原因だから学園も調査に入り、痕跡からして「とある犯罪組織」の手による物と判断されて一旦幕は引いたのだとか。


 とはいえ一度事が起きてしまったからか、やはり苦言を呈して来る輩がちょくちょく居たんだとか。


 まぁ、レーナ皇女は獣人としての力を使って決闘で黙らせ、レリアも魔道具を巧みに使って決闘で黙らせたらしいが。


 ……結局、レリアとレーナに勝てない一般生徒は引き下がるしかなかったとの事。


「あら? その食べ物……新しいやつじゃない。なんだか最近開発されたって言うあの〜〜……なんだったかしら?」

「かれーうどん、ですね」

「そうそう! カレーうどん! いやぁ、研究者もよくもまぁこんな冒涜的なものを考えたわね……普通、聖なる食べ物と悪魔の食べ物を混ぜるなんて考えないでしょ」

「えっと……悪魔の食べ物であっても、聖なる食べ物で清めれば問題無い——でしたっけ?」

「……カレーを食べたいから作られた言い訳みたいね」

「美味しいから文句は無いのですけれど……これ、カレーなんですよね」


 今レリアが食べているこの「カレーうどん」……その名の通り、前世日本にあったカレーうどんその物だ。


 何故こんな物があるのかと言うと、それは昔も存在していた勇者と魔王が関係している。



 昔々、突如現れた魔王と言う存在に人類は苦しめられていた。

 何やら召喚獣を魔物化させて人間を襲わせていたのだとか……


 そこでピンチとなった人類は究極の召喚術とか言われる物で異世界人を呼び出したらしい。


 その異世界人が、現在勇者と呼ばれて語り継がれている者らしい。

 そんな勇者が生存中に開発した『うどん』が異世界で大流行。勇者が開発したと言う事で聖なる食べ物とされたのだとか。


 時を同じくしてとある料理が流行った。

 それが、カレー。

 癖になる辛さや、パンとの相性が素晴らしく、こちらも大ヒットしたのだが……人類側は魔王が開発した物としてこのカレーを規制。


 規制されてもカレーの味を忘れられなかった民衆の一部は、魔王側へと寝返って【魔王軍】と言う存在が誕生した。


 相手を堕とすなら胃袋から掴むべし……そんな出来事が起こったのだ。


 後に勇者と魔王が激突し、両者共に行方不明となったわけだが……大ヒットしたうどんとカレーはそれぞれ——


 うどんは民衆の裏切りを抑制させた聖なる食べ物。

 カレーは民衆を裏切らせた元凶である悪魔的な食べ物。


 とされるようになった。



 で、最近開発されたこのカレーうどんは聖なる食べ物である「うどん」で、「カレー」の味と言う悪魔の誘惑を打ち消せば、魔王が生み出したカレーの誘惑にも勝てるはず! と言う発想の元作られたらしい。


 ……何してんだよ人類。


 ちなみになのだが、勇者と魔王の遺体は一切発見されてないらしい。

 勇者はイケメンな男で、魔王は美人な女性と言う事もあって「駆け落ちした説」を唱える者も割と居たりだとかなんとか……

 割と小説として勇者と魔王の駆け落ち物が書かれているらしい。

 …………何してんだよ人類(二度目)



 そんな勇者と魔王の歴史を授業で習ったな〜とか思いながらも召喚獣用のカレーうどんを貪る。

 うーむ、普通に美味しいのが反応に困る。日本で売ってる物より質がいいからか? と言うか勇者と魔王ってほぼ確実に地球人だろうなぁ。いつか会えたりしないだろうか?

 ……寿命で亡くなってるか。


「ふぅ、美味しかった。それじゃあ教室に戻ろうかな?」

「よく食べたわね……カレーを」

「案外美味しかったよ? レーナ皇女も今度食べてみたら?」

「いや、遠慮しておくわ……私はまだ誘惑にも堕とされたくないもの」


 ……食べ物に罪はないからね?


 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 ちょい雑


 いやぁ、すみませんがまた執筆速度が不安定になりましてね……

 ほんと、もっと筆が乗ってくれるとありがたいんですが。


 まぁ、そんな話は置いといて……

 今話に出てきた勇者と魔王について話しましょうか。


 この勇者と魔王……ぶっちゃけ覚えてもらわなくて結構です。

 だって本編に一切関わらせるつもりはないですから。

 でもどうでも良い開発品の話を日常パートに入れたい気分。今回のカレーうどんもそんな気分によって書かれましたね。


 そんなカレーうどんの話を書いた作者こと冰鴉は別にカレーうどんはそこまで好きじゃないんですよね。

 カレーよりもシチューですし、うどんよりも蕎麦ですし……

 更に言うなら辛いの苦手ですし。


 ……肉蕎麦はいいぞっ! 豚コマと蕎麦を市販の出汁に突っ込んで火を通すだけで食えるお手軽料理。

 マジでお手軽なんで是非是非。料理経験無くても作れる程に簡単ですしね。

 お好みでお揚げとか卵を入れるのも良いよね〜


 なお冰鴉は料理を全くしない模様。

 僕、実家暮らしなの。(台所は母の領域なり)

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る