第46話 寝ていた二人
あの後、結局ブラッドワイバーンが追ってくることは無かった。俺を追跡できなかったのか、それともフォレストハイウルフの血で満足したのかは分からないが、とりあえず戦う事にはならなかった。
一応警戒しながら洞穴に帰ったわけだが……洞穴の前にオロオロとしている熊が居た。
氷の壁に爪痕が残っているのを見る感じ、多分洞穴に入ろうとしたらしい。オロオロしてる感じを見るに元々この熊の巣穴だったのだろうか?
んー……でもレリアとレーナ皇女を休ませるためにもここの洞穴を明け渡すなんて事は出来ない。
突然巣穴を奪った感じになったのは申し訳無いが倒させて貰おう。
さっと氷で囲んで水で満たし、蓋をする。今回もアクアリウム戦法だ。
稲妻属性を使ってやっと対等に戦える上位種と正面堂々と戦うなんて非効率だし、体力も使う。ならば卑怯な技であっても確実に倒せるこのアクアリウム戦法の方が良い。
これ、レリアの結界が使えればもっと完成度上がったんだけどなぁ……
『ゴポッゴポポポポ!!(グオォッグルアァァ!!)』
『ゴンッ、ゴンッ……ミシッ……ペキッ……パキパキパキ……』
熊が必死の抵抗で氷の壁を殴っているのを見ながら、ヒビが入った氷を修復し続ける。
にしてもやはりこの層辺りの魔物はかなり強い。そこら辺の召喚獣程度なら破られないほどの硬度にしたはずの氷にさも当然の様のヒビを入れてくるのだから。
5発ほど同じ場所を殴られたら穴が開きそうなまであるし、本当に火力が高い。一撃でも貰えば致命傷になりそうなのは本当に怖い。
そんな怖い奴を無事に討伐し、氷の壁に穴を開けて洞穴の中に入る。
レリア達の様子を確認するが、特に問題はなさそうだ……ゆっくりと眠っている。レーナ皇女の容態も……うん、問題なさそうだ。
洞穴の隅に採取した食料を置いておき、レリアの近くで休憩の姿勢に入る。恐らく、レリアとレーナ皇女が起きたら上層──というか地上に向かってダンジョンを駆け上がっていくことになるだろう。
こんな安全な状況でゆっくり休めるのは今だけかもしれないからしっかりと休息を取っておく。
あぁ、ヤバい。ちょっと気を張ってたせいか眠気が……固体である氷の壁で洞穴の入口は塞いだし、食料も取ってきた。これ以上やるべき事は無い……はず……
ふぁ……休息は大事……だしな。いったん眠るとしよう……
-----------------
レリア・プリモディアside
「…………よいしょっと。レーナ、リファルは寝たよ」
「えぇ……凄いわね、リファルは」
「でしょ? 自慢の召喚獣なんだから」
「知能が高すぎるわよ。普通の召喚獣じゃありえないわ……主人の為に食料を自主的に取ってくるとか」
「ふふっ、流石はリファルだね~」
本当にリファルはもう……私の為とは言え頑張り過ぎだ。
私たちが恐らく転移? で下層に飛ばされて気を失ってからずっと守り続けて、ボスと戦って、それで先に寝た私達を守るために魔法を使い続けながら食料まで持ってきてくれた。
あまりにも……頑張り過ぎだ。
労わりにしては足りないかもだけど、感謝の気持ちを精一杯込めてリファルを撫でる。本当に、ありがとうね。
「それじゃ、話を再開しよっか」
「そうね。それで……レリアが言うには今回の犯行は獣解放同盟とか言う奴の仕業と思ってる訳ね?」
「その通り」
「どこかの貴族の差し金とか……」
「うーん、王女と皇女の暗殺なんてあまりにもリスクが高すぎると思うの。それに、私を狙う理由が無い。私は第二王女……私を狙うよりお兄様やお姉様を狙った方がプリモディア王国にとってはダメージになるの。私に婚約者も居ないしね……自由にさせてもらってる分、私を狙ってもそこまで効果が無いの」
「となると私……を狙うのは無いわね。帝国に喧嘩売るだなんて正気じゃないわ」
帝国は血気盛んな事で有名で、プリモディア王国ですら国の許可なしに帝国に喧嘩を売るのは禁止にしている。下手に手を出せば全面戦争になる可能性も高いし。
「獣解放同盟、貴方は狙われたことあるのよね?」
「うん……一回誘拐されたね。あいつらの狙いは希少な召喚獣。召喚獣を解放しろって言い分だったけど本当の狙いとかは分からないかな。ただ……竜であるリファルを従えてる私は狙われてるの」
「なるほどね……ラナも雷獣で希少だし狙われてもおかしくない訳ね。とは言っても確証が無い以上は憶測の域を出ないわね」
そう、結局は憶測でしかない。貴族が犯行に及んだ可能性も高い……特にあのライザーだとか言うスファレライト家の子息。あの腹の内に何を考えてるか分かんない奴も怪しいと思っている。
普段王女としての皮を被ってたから分かる……あのスファレライト家の子息は何かを隠してる。
「まぁ……考えても仕方がないわね。とりあえず今後どうするか決めましょうか」
「そうだね。うーん、救助を待つのも手だとは思うけど……」
「ここが何層か分からない以上、救助を希望にするのは危ないわね。食料は何とかなるにしても精神が持つか分からないし。
それに、ラナが居ない以上……リファルの負担も大きいわ」
「となると上層を目指すしかないね。上を目指せば魔物は弱くなっていくはずだし、生存率も高くなりそう」
それでもリファルに負担を掛ける事には変わりない。ごめんね、リファル……私もレーナも精一杯戦うから。だからリファル……今回も頼らせて貰う事を許して。
……与えられてばかりの私はどうやったらリファルに返せるんだろうか。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
二人の仲が良くなったのが伺える呼び捨て……一体リファルが居ない間にどんな会話をしてたんでしょうね? 描写するつもりはありませんので是非想像して楽しんでくださいませ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます