第8話実技試験
「ファイアーボール!」
そんな声と共に一人の受験者が火の玉を的に向けて撃っている。
そう、やる事は距離の離れた的により正確にどれだけの威力の魔法を当てれるかと言っただけの試験であり、正直言って凄く簡単な試験だ。
そして火の玉を放った受験者の隣では火を纏ったトカゲが近くの的に向かって炎を纏って体当たりしたり、火炎放射をしたりしている。
「これで良いのでしょうか…凄く楽そうですが」
そんな小言がレリアから聞こえてくるが、同意見だ。
とは言え、これでも充分なのだろう。先程から見てる感じだと割と的を外してる人も居るし、制御が甘くて的に届かない事もしばしば…火力だけを重視しすぎて明後日に方向に飛んでく事もある。
こう言うのをみてて思うのはそう言えばレリアは魔法大好きっ子だったなぁと言う事だ。好きな物は実力が伸びやすい。だからこそレリアの魔法の実力はこの中でも抜きん出ているのだろう。
「次っ!レリア・プリモディア!」
「はい」
名前を呼ばれたのでレリアと一緒に前に出る。指定の位置に着くと召喚術が解除されて元の大きさに戻される。
後ろの方から『あの方が氷竜姫…』だとか『コレが竜種…』だとか聞こえてくるが無視する。
「それでは的に向かって魔法を、召喚獣には的に向かって魔技を使ってもらう様に」
「分かりました…クリスタルダスト・集っ!」
レリアの周りに数十個の氷結晶が生み出され、それらが的の中央一点に向かって一斉射される。
そして氷結晶は全て的確に的の中央に命中し、突き刺さる。
一応あの氷結晶は今のレリアなら破裂させる事も出来るのだが、それはしないらしい。
そんな感じで見てるとレリアから氷結晶に向かってブレスを出すようにお願いされた。
特に拒否する事もないので魔力を氷属性へと変化させて、ブレスを放つ。
普通のブレスは大抵拡散する為、離れた的には届かないだろう…だが、そこは工夫する事でどうにかなる。発射口を狭め、圧縮した氷の魔力を放てばレーザー状の氷ブレスが放たれるのだ。
レリアの放った氷結晶に氷ブレスが当たると、氷結晶が破裂して的全体を凍らせる。本来は召喚獣用の近距離の的もあるのだが、遠距離系の魔技を使う召喚獣は同じ的目掛けて放つのでこれで良いだろう。
「…見事だなこれは。下がって良いぞ」
「ありがとうございました」
元の位置へと戻っていく間に受験者たちの反応が聞こえて来る。
総評して言うなら驚愕・感嘆・尊敬…こんな感じだろう。
そうなるのも仕方がない。何せ大体複数個の魔法を一斉射する魔法はかなり制御が難しく、放つ場所を一つに絞るとなると更に難しいのだ。
本来複数個も魔法を一斉射する場合は、基本数撃ちゃ当たる戦法な時が多い。だからこそ一点集中させたレリアはかなり驚かれているのだろう。
「次っ!レーナ・フォース!」
「はい」
「レーナさん…雷属性の方ですね」
レリアの次に呼ばれたのは雷属性の女性受験者。雷を纏った狼型の召喚獣を連れている。
金髪ツインテールの割と気の強そうな感じで、フォース…確か王国の仮想敵国であるフォース帝国の皇女だっただろうか?
「それじゃあ行きますわ…稲光っ!」
放たれた魔法は速度が重視された雷だった。かなり速い…流石に稲妻属性の速度には大きく劣るが、雷属性でみるならば不意打ちをつけるほどに速いのではないだろうか。そして狙いも正確、ジグザグに動く雷属性特有の軌道をしていてもしっかりと的の中央に当たっている。
召喚獣の方も、雷を纏ってひたすらに的を切り裂き続けている。雷を纏ったことあるから分かるが、雷属性ってのは纏うと止まらない限りドンドン速度を増していくのだ…現にあの獣もどんどん切り裂く速度が上がっていっている。
「そこまで、召喚獣を止める様に」
その言葉を聞いてレーナとやらは雷の獣を止めにかかる。その間にも受験者からはヒソヒソと声が聞こえてくる。
『アレが雷光レーナ皇女か…』
『凄まじい速度だな…一瞬でしか魔法が見えなかった』
『召喚獣の方も恐ろしい…途中から目で終えなかった』
などなどと聞こえてくる。
「…流石は我が国にまで話が聞こえてくるレーナさんですね。私の魔法はどちらかと言うと威力重視ですし」
どうやらレリアも速度に少し驚いたらしい。確かにレリアの使う雷魔法は速度よりも威力が重視された感じだ。
これは多分召喚獣の違いで同じ雷属性でも違った性質があるのだろう。これはまた新たな発見だな…
そしてレーナ皇女は雷光の名を持ってるらしい。多分速度が早過ぎる雷魔法が印象的だから付いた名だろう。
そんな感じで実技試験は過ぎていく…
他にもかなり見応えのある人達が居たが、俺からみた感じだとやはりレリアとレーナ皇女が頭ひとつ抜けてる感じがした。
…レリアに関しては身内贔屓が入ってる可能性があるかもだが。
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【レーナ・フォース】
プリモディア王国の仮想敵国であるフォース帝国の第二皇女。
ウルフ型の雷属性である雷獣を召喚獣にしており、速度に特化した雷属性魔法を得意としている。
ウルフ型はフェンリルの印象が強いせいであんまり目立ってはいないにも関わらず、雷獣は確認数が少ないため、あまり知られてないが実はフェンリルに一歩劣る程度の実力を持つ召喚獣。
レーナの見た目は金髪の碧眼であり、かなり気が強めな雰囲気を纏っている。
帝国の皇女としてのプライドと自身の実力にかなりの自信を持っており、慢心することなく更に実力を磨くことに努力するタイプ。
最初は雷の速度を全く操れず、振り回されるばかりだったが、たゆまぬ努力のおかげで扱えるようになった。
生粋の努力家で更に努力を隠すタイプ。誰かに努力を認めてほしいと思っていても、周りの評価は戦闘の天才で固定されてしまったためにほぼほぼ諦めている。
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