第4話 わぁおやっぱりそう言う(事件)のってあるのね
学園の入学が近づき、準備がてらに市街に出てる俺とレリアはあんまり来ない街の光景を楽しみながら歩いていた。
制服とかの試着だったり寮生活に必要な物の準備だったりだ。今後入学する学園は全寮制なのだ。
「見てリファル、これ綺麗だと思わない?」
そう言ってレリアが見せてくるは花があしらわれただけの銀細工の髪飾り、とても王族が買って身に付ける物では無い…が確かに綺麗だ。
「姫様、確かに綺麗でございますがこちらは平民の方々が付けるものでございます」
「まぁ、そうよね…」
そう注意するのは護衛であり侍従のミレイさん。ある程度戦闘ができる事もあってレリアの仮専属侍従兼護衛みたいな立ち位置に居る。
しかしやっぱり特級階級と言うのは過ごしづらそうだ、平民が着飾る物を着れば威厳に関わるだとか…うん、めんどくさい。
実際にレリアは顔には出してないがちょっぴり落ち込んだ感情が召喚の繋がりから感じる。
まぁでもこういう場面は何度もあった…普通に我慢するしかないのだ。王族の地位を捨ててまで求めるほどの自由では無いとレリア自身も分かっている。
とは言えお忍びで来てるから食事程度なら問題ない。屋台で串焼きなどを買って食べてみたりしながら市街を歩いていく。
そして無事に制服などの準備をし終えて帰ろうと店から出た時、急に土で出来た縄で捕まえられて路地裏に引き込まれて睡眠薬かは分からないが唐突な眠気に襲われるのであった。
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「……ル!…だ!起き……ファル!起きてリファル!」
そんな声と共に段々と意識が覚醒していく。
辺りを見渡してみると見た感じは木製の小屋。レリアは縛られており、俺は首に首輪を付けられて鎖に繋がれてる。
…この首輪、魔力操作を阻害する魔道具が入ってるな。これじゃあレリアが俺から魔力を取り出せないだろう。
誘拐だろうか?縛られたレリアと俺以外には貴族っぽい女性一人とごろつきらしき三人の男がいる感じだ。魔道具って割と高価らしいから多分この女性が実行犯のリーダーだろうか…
「うるさい姫様ね…人の身に竜種の力は身に余るのよ、だから私達【獣解放同盟】がこの竜を解放するの。お分かり?」
「そんな事リファルは望んでない!勝手な事しないで!」
「いくら召喚術で繋がってるとは言え言葉の通じない獣が望んでないだなんて分からないでしょう?だから解放するの。貴女は大人しくそこで縛られてなさい」
「待って!リファルを連れてかないで!ヤダっ!やめてぇ!」
そんな悲鳴に近いレリアの声も虚しく俺は女性に連れてかれる。王族の身が目当てかと思ってたけど俺が目当てだったとは…こっちはレリアと楽しく過ごしてただけだって言うのに酷いことをしてくれる。
レリア…ちょっとだけ待って欲しい、もう少しで行けるから。
そしてある程度小屋からの離れた所で誘拐犯…獣解放同盟だとかなんとか言う女性が止まり、こちらに向いてくる。
「さて、貴方を解放しましょうか」
そう言って取り出すのは身の毛がよだつ様な剣。見た目はただの儀式用の剣だが、使われている素材からか非常に破壊して粉々にして抹消させたくなる様な雰囲気を感じる。
…あと少し。
「では…竜種よ、解放されなさい!」
そう言ってゆっくりと俺とレリアの召喚術の繋がりを切っていく…
だが流石に召喚されてからほぼほぼ離れずに過ごしていた事もあって繋がりは非常に強固、一気にスパッと切れるわけでは無かったようだ。
お陰で間に合った。
魔力阻害の魔道具の核部分に魔力をひたすら送り込み、回路を壊す。魔道具の核…魔物から取れる魔石なのだが、それの魔力許容量を上回れば魔石は壊せるし、核が壊れた魔道具は機能しない。
それに魔道具と言えど人間の適正での魔力操作技術が目安なのだ、魔力の適正が人間より圧倒的に高い俺には核さえ見つけれれば破壊は容易い。例えるなら通信を逆探知して通信元に爆弾を放り投げてる感じ…確かに普通の召喚獣ならば逆探知できずに魔力を阻害されたままだろうが、今回は相手が悪かったな。
全身に雷を纏い、全身の色合いが青色から輝く黄色へと変わる。
その変化に驚いて目の前の女は繋がりを切るのをやめて後方へと飛ぶ。
繋がりは…まだ完全に切れてないな。と言うか目に見えない繋がりを的確に切るってどうやってるんだか。
「なんで魔技が?魔道具はちゃんと作用してるはず…って壊れてる⁉︎」
自身の身体を元の大きさへと戻して女を見据える。と言うかコイツなんか見た事あると思ったら召喚術と魔法の教師だな。よくもまぁこんな大胆な行動が出来た事で…
ちなみに首輪は身体が大きくなったついでに壊れた。魔力操作を乱す故に魔力が第二の血液的な存在である魔物や召喚獣を弱くする効果もあったけど壊れた今じゃただの首輪だ、魔物や召喚獣にとってこの程度はすぐに壊せる。
「チッ、仕方ないか…マッドサーペント!足止めをしなさい!」
『シュル…シャァー!』
出てくる相手の召喚獣は泥の蛇だ。なるほど、だから水と土の属性を使ってたのか…貴重な二属性持ちが何をしてるんだか。
相手はどうやら召喚獣で足止めして繋がりを完全に切らせるらしい。
…させるわけないけどね。
マッドサーペントが生み出した土の網やら水に球などを躱して女へと肉薄、竜とヘビでは種族値が違うらしくて結構簡単だった。
思いっきり身体で体当たりして女を後方へ飛ばしたあと、追いかけてきた蛇を氷の部屋で閉じ込める。
レリアが魔法練習で使う氷の部屋だ、しかも召喚獣の俺製。そう簡単に壊せないはずだ。
とりあえず氷の部屋はどんどんと小さくさせてマッドサーペントを圧死させるとして、もう一体の敵である女を見る。
雷を纏った体当たりをくらって麻痺を起こしてたらしく、今ようやく起きたらしい。
「やってくれるじゃない…いいわ、解放だけするつもりだったけど私もまだ死にたくない。こうなってしまったら殺してあげる…!」
そう言って繋がりを切る剣を放り投げる。…その剣大事じゃないんだ。
「雷を使えるのは知らなかったけど土に雷は弱いわよ!」
土属性を基本に遠距離攻撃を仕掛けてくる。人と召喚獣ではフィジカルが違い過ぎるからこその判断だろう。
雷を対策するのは良い、水属性も相手が使えるからこそ効きが悪いだろう…だが氷は?
「やっぱり近づいてくるわよね!アースウォール!」
相手の飛ばしてくる魔法を避けながら近づくとアースウォールで壁を作り身を守る。一見どうしようもないと思うだろうがそんなことはない。
円錐状の氷を生み出し、それを回転させて次の壁をぶち抜いてそのまま女の方へと飛ばす。
こちとら召喚獣の魔力適性を持ちながら魔法を使えるのだ、人の使える魔法で対抗出来ると思わないで欲しい。
円錐状の氷はそのまま女の腕を貫いて、左手を欠損させる。
「ぅぐっ…!戦ってから薄々思ってたけど、相当知能が高い!なんて厄介な…これが竜種!」
流石に部位欠損したからには凄い警戒する様になった。けどまぁ、さっさとレリアの所に行きたいのですぐに終わらせるつもりだ。
繋がりが結構切られたせいでレリアの感情を感じれないのだ。
…さっさとレリアの元に帰らせてもらうぞ。
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召喚獣にとって召喚者の側はかなり落ち着く場所なのです。
言わば実家のような感じですね。勿論毒親みたいに虐待などばっかりする場所には帰りたくなくなりますのでまさに我ら人間にとっての家が召喚獣にとっての召喚者の側なのです。
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