第3話アレから時がすぎて…

 そんな初めての魔法を見てから4年が経ち、現在レリアは9歳。

 姫様である自覚も出てきたのか、段々と外行きの顔が出来上がってきた。


「それではここらで王国歴の授業を終わります。姫様お疲れ様でした」

「えぇ、ありがとうございます」


 と、こんな感じで基本丁寧語を使うようになってる。ただまぁ、あくまで外行きの顔である。

 教師の方が部屋を出て数十秒後、部屋に俺とレリアだけになると外面の仮面をぶん投げるが如く豹変する。


「リファル〜、疲れたぁ…竜吸いさせて〜」


 レリアは俺を抱き締めて俺の後ろ首ら辺に顔を埋める。

 …それは猫にするやつでは?一応俺は竜なんですけど吸っても意味があるのだろうか。


「この後は予定無いし…魔法でも使って遊ぼうかな。て事で私の部屋へゴー!」


 とまぁ、内面は割と元気っ子なのだ。外行き顔は清楚で内面は元気っ子、俺的にはこの元気っ子の方がレリアらしくて好きなのだが対外的には清楚を装っていた方が良いと思ったらしい。


 レリアは俺を肩に乗せて移動する。

 成長途中に頭に乗せたり抱きしめてたりするのは作り上げるキャラ的にもよろしくないと言う事で肩に乗せるようになった。


 なんとも息苦しい考え方…だがこれも王族が故、上流階級だからこそのしがらみだろう。


 ちなみに俺の全長は成長して普通にレリアの身長と同じくらいある。

 だがそれだと肩に乗れないので身体の大きさを調整している。大きさの調整は召喚者が召喚獣の合意の元で出来る魔法みたいなものだ。


 召喚獣の召喚も、この大きさの調整も召喚術って言われていて魔法とは別物である。


 身体が小さくなったり元に戻ったりする程度だが、大きい召喚獣だと必須の召喚術なのだ。

 召喚者が任意の身体の大きさにして、召喚獣は任意で元の大きさに戻れる仕組みであり、変化前の大きさ以上には出来ない仕組みだ。


 と言う事で俺は大人の肩から肘ぐらいまでの長さを全長としたちっちゃい竜の姿でレリアの肩に乗っている。

 最近の移動のデフォルトはこれ(肩乗り)だったりする。



 そして自室に着いたレリアは魔法で遊び始める。


「えっと、まずは氷で箱を作って中を空洞に……おっけ!じゃあ遊ぼうかリファル!」


 ちゃんと魔法の危険性も知って、魔法で遊ぶ時はアイスウォールの応用って感じで氷の部屋を作ってから遊ぶようになってる。ちなみに俺の属性の一つが氷なので、寒さに耐性が出来てるのだ。


「えっと、まずはレイン!次にフリーズ!そしてショック!………うん、良い感じ!」


 まずは周囲に雨粒を生成し、それをフリーズで凍らせてからショック…つまり電気で通電させて凍った雨粒を砕いてさながらダイヤモンドダストが起きたかの様な空間が広がる。


 水・氷・雷属性の合わせ技、そしてこの三つが俺の属性である。一応あと二つ属性はあるが、それはどうやら俺だけでレリアは使えない様だ。

 そして実はこの世界では複数属性持ちは非常に珍しい。三属性となれば国に1人居るか居ないか程度だろう。


 そしてレリアは対外的には水と氷の二属性持ちとなっている。この世界には属性を測る様な物は無く、基本的には召喚獣の属性リストによって判断されるのだが、竜と言うのは個体差が激しいのだ。


 そしてレリアが姫様としての自覚を持ち始めたくらいの時に雷属性が発覚してレリア自身が隠したと言う感じだ。


「うーん、今日は色々工夫してみたいんだよね。そうだ!」


 拳大ほどの氷の塊を生み出し、もう一つ水の塊を生み出してから水の塊をギューっと圧縮していく。

 そして圧縮した水を氷の塊に向かって放出…すると氷の塊に綺麗な穴が空いた。


「やっぱり!じゃあじゃあこうすれば…!」


 今度は圧縮した水を指先に集めて水を放出すると同時に指先で氷を切るように動かす。

 水の放出が終わると同時に氷は綺麗に切れて落ちる…


「すごーい…水で切れちゃった」


 いやいやいや、この子アクアジェット加工を再現したんですけど?ほんとに子供か?

 確かに水圧で物は切れる…だがそれに気付けるか?と言うと難しいだろう。


 とまぁ、こんな感じでレリアは魔法の扱いがかなり上手い。しかも氷と水の二属性持ちと言う事もあってもはや魔法教師が要らない状態である…まさに魔法の申し子。


 レリアは魔法で遊ぶと言っていたが俺的には遊ぶ=自主練習だと思っている。


「水ってもっともっと色々出来るんじゃ…!」


 そう呟いてからどんどんと魔法を試していく。

 霧を生み出したり、氷属性と合わせて過冷却水を生み出したり、水の形の自由さを目につけて俺の水像を作ったりと本当に色々と試して行ってる。


 この子、将来どうなるんだろうか。



 そんな風に遊んで夕方時になって部屋のドアからノック音が鳴る。


「ヤバっ、リファルお願い!」


 氷の箱ごと魔法で生み出された物を全て魔力へと変換して消去する。これがレリアの魔法遊びでの俺の仕事だったりする。


「姫様、お食事の時間ですよ」

「分かりました、少し待っててください」


 服を着替えてから、再度外面の仮面被り。そして食事へと向かっていく。

 これが俺とレリアの日常だ、多分学園入学までこの日常が続くのだろう…そう思っていた。





 …事件が起こるまでは。


 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

【召喚獣】

 一生を共に過ごす存在であり、この世界では居なくては生きていけない存在である。


 召喚獣は召喚者の魂と最も相性の良い存在が神によって創造されると考えられている。

 その為、神の祝福の具現化とされている召喚獣は基本1人1匹であり、再召喚は不可能である。また、召喚獣の属性によって召喚者の魔法属性が決まる。


 召喚獣とより親密になる事で互いの繋がりが強固となり、魔力の受け渡し量や意思疎通のしやすさが上がる為、召喚獣と親しくなったり早めに魔法の練習をする為にも早い頃から召喚獣を呼び出すのは良しとされている。


 一部召喚獣を虐待する召喚者が居るが、その場合はどんどんと召喚獣との繋がりが薄まることで魔法も使えなくなり、召喚獣も召喚獣の枷が無くなり野生の魔物になる事もある。


 召喚に関する魔法の様な現象は厳密には魔法ではなく召喚術と呼ばれており、魔力を使わない特殊な術である。

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