ハダカの殺人者

一の八

第1話



誰かが呼び鈴を鳴らした。


「すみません」

そこには見知らぬ男が立っていた。


「はい、どちら様ですか?」 僕は答える


「こんな、遅くにすみません。ちょっとこの先で車を修理してもらえる場所などはありませんか?」

男は、とても慌ていたのか額に汗を流しながらも困り果てた様子で尋ねてきた。


「そうですね…この先に行った所にはあるんですが、この時間だと今から行っても恐らく閉まっているの可能性がありますね」


「閉まってるのか…」

茫然自失というような表情で俯きながら笑顔を作っていた


「誰か来たのー?」

奥の部屋から女性の声が聞こえた。


んっ?疑問を浮かべた顔をしたので


「あっ、奥にいるのは妻です。せっかくの休みだからと2人で親戚に別荘を借りて旅行に来てるんですよ」


「それは、大事な時間をお邪魔しました」


男がそのまま帰ろうとしていくので声掛けた。

なんせ、こんな寒い時期に故障した車の中で一夜を過ごしたら凍死してしまう。


「あの、もしよかったら今晩泊まっていきますか?」

僕はその方がこちらとしても安心できると男に問う。


「えっ?でもせっかくのお二人の旅行に私なんかが居たら困るのでは無いですか?」


見知らぬ人間を泊めるのは、こちらとしても気が引ける部分があるが、

それよりも死体としてこの男と再びあるのも寝覚めが悪い気がした。


「いえいえ、そんなことは一向に構わないですから。」

社交辞令の笑顔を向け答える。


「助かりました。正直、こんな寒い時期に車で一夜を過ごしたらと考えると不安で不安で」


男は、心からホッとするような表情を浮かべていた。



シャワー浴びて軽装な妻がリビングでくつろいでいた。


「ちょっと、すみません。妻に説明してきたいので少しだけ待っててもらえますか?」


「分かりました」


すると、奥の部屋から言い合いのような声と諦めのような話し声が聞こえた。


「妻の方には、何とか理解してもらえたので安心してください。どうぞこちらへ」


リビングには、少し機嫌の悪そうな妻がいた


「急にお邪魔してすみません。」

男は妻を見つめながら謝った。


「いえいえ、車が壊れたなら仕方ないですよ。困った時はお互い様ですから」


言葉と表情に乖離があった



「お食事は、すみましたか?

よければ、温かいスープはどうですか?」


丁度、夕食の支度をしていた所だった


「泊めて頂く上にお食事までなんて」


「全然、お気になさらず」


テーブルの上には、前菜のサラダとスープに合わせるバケットが用意されていた



「料理を作るのが趣味なので油断しているついつい作り過ぎちゃうんですよ」


たしかにここに用意されている料理の量は、明らかに2人分には多いなと感じる。


スプーン、フォークに皿と洋風の並びの支度がされていた。

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ハダカの殺人者 一の八 @hanbag

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