【魔界無双】~非モテの俺が神と仏と悪魔に病気の姉が治るようお願いしたら、美少女悪魔の押しかけ女房とヴァンパイアの義妹に魔族にされて魔界へ拉致られました。

桃木譚

第1話 プロローグ 悪魔が来たりて嫁になる

「それでは父上、行って参るのじゃ」

「うむ。頼むぞ」


 悪魔ルシファーの一人娘フランシウム・フェリシアノ・ルシフェラは、父から契約した一人の人間の魂を刈り取るように託けられる。

 悪魔は契約にはうるさい。

 契約の時には必ず契約書にサインをさせる。

 廊下を歩きながら彼女は父から渡された契約書に目を通し始める。


 ふむ、大八洲おおやしま皇国とやらに住む25歳の男か。

 契約書の顔写真を見るが、どうもぱっとしない男だ。

 久方ぶりの人間界、最後に魂を刈り取ったのはいつのことだろう。


 が、私は人間が嫌いだ。

 本当に人間と言う生き物は自分勝手な生き物だ。

 自らの欲望のままに生き、欲望の果てに私たち悪魔と契約を交わす。

 勿論、人間との契約を遂行した際の代価が契約者の魂だ。

 魂を刈り取る時に人間共が見せる絶望と恐怖と後悔に満ちた表情、命乞いをする声、そして散々喚き散らした後の断末魔の悲鳴、これらを私は存分に堪能しながら私は魂を刈り取る。

 人間から出てくる恐怖と絶望の感情は私にとっての馳走だ。

 勿論、私が手に入れる魂はどれもが汚れている。

 もっとも悪魔に願掛けをする者の魂が澄んでいることがそもそもおかしいのだろうが。

 早く終わらせて魔界に帰ってこよう。


 彼女は人間共の愚かな所業を思い出しながら、ため息をつき自分の部屋に戻ると身支度を始める。

 悪魔とは言っても女性である。

 男相手なら最後の夢を見させてやるためだ。もっとも悪夢と言う名の夢だが。

 彼女は魔法で自分の身を瞬時に整える。


 姿見には、ふさふさとした緑色の髪の毛、頭の横から生えた二本の黒光りする角、切れ長の金と銀のヘテロクロミアの眼、ルージュの唇、豊満なバスト、スカートの後ろから頭を出した金色の毒蛇の尻尾が映る。

 ピンク色のニーハイブーツに脚を通し準備を整えると、魔界から人間界へ転移するための魔法陣を床に展開させる。


「準備完了じゃの。では参るとするか」


 紫色の光を放つ漆黒の魔法陣の中心へ入ると、そのまま魔法陣が足元から頭の上へと移動し、転移を始める。


 これが彼女の運命を変える転移になるとは誰も思わなかっただろう。


 いつもは転移先の地面に足が付くのだが、転移先の出口の設定を間違えたのかそのまま落下する。

 予期せぬ事態に、彼女は足をつけられず尻が何かに思いきりぶつかる。


「きゃーぁああ」


 どんがらがっちゃーん! くわぁああん! ぶちゃっ!  


 相手の体の上に乗ったことまでは覚えているが、派手な音と、「ブベッ!」という男の声が聞こえると同時に、そのまま床に顔を打ち付け意識が朦朧となる。


(しまった。やらかしたのじゃ)


「な……なんにゃ?」


 俺は紀伊きい正宗まさむね25歳。

 某役所の技術系公務員、いわゆる技官でSEとプログラム開発や機器の調整をやっている。

 就職して実家を出てから一人暮らし、陰キャ&オタクの俺に女性は全く縁のない存在だ。

 もちろん、この部屋に入った女性は母親だけというのも鉄板だ。

 台所の片づけをしていると、上から悲鳴が聞こえると同時に顔に「柔らかい何か」が顔にぶつかって来た。

 そのまま後ろに倒れ込み後頭部を床にしたたかに打ち付ける。

 持っていた金属製のボウルやらフライ返しやらが大きな音を立てて転がり床に散らかっていくのを見ながら意識が遠のいていく。


「ん?」


 気が付くと青と白のストライプの布が目に映る。

 布が当たった鼻先からは甘美な香りと柔らかい感覚が伝わってくる。


(こ……これは、まさかパンティ? いや、部屋には俺しかいないし……)


「いてて・・・・・・」


 起き上がろうとして頭を持ち上げると、鼻の頭がパンティの中の柔らかい部分に更に喰いこんでいく。


「ああん!」


 女性の声が聞こえると同時に、「ぶぅうううう」っと音が聞こえる。

 もちろんパンティに食い込んだ鼻の先でおならをされたものだからむせ返りゴホゴホと咳き込みながら体を何とか起こした。


「何をするのじゃ! この痴れ者が!」


 目の前には顔を真っ赤にした女の子がいる。


「え? 何事?」


 目の前には、16歳ぐらいの女の子、緑色の髪の毛をして、頭の横から二本の黒光りしている角が生えていて……え? 角? きれいな黒だ。

 スタイリッシュなボディとスラっとした脚、スカートの後ろからは黒い尻尾、いや蛇の頭が出て、背中からは黒い翼が生えているし、おまけに美形! めちゃかわいい! 萌え死ぬほどかわいいじゃねえか! 赤いプリッとした唇に切れ長の金色と銀色のヘテロクロミアの眼に長い睫毛、アニメの主人公にすぐなれるじゃん! えええええ? 何この展開? 


「おい、お主は妾のことを何ジロジロ見ているのじゃ?」

 

彼女は両手を腰に当てて仁王立ちになり、ジト目でこっちを睨んできている。


「いやちょっと待て。君、どこからでてきたの?」

「魔界じゃ。妾は父上から言われてここにきてやったのじゃ。お主、紀伊正宗じゃな?」


 彼女は冷たく妖艶に光るヘテロクロミアの眼で手に持った書類と俺を交互に見る。


「そうだけど」

「お主は、妾の父上と契約を交わしたであろう。昨夜、父上がここに来たらしいが、急用で戻って来たらしく、妾が父上の代わりにお主の魂を持ち帰るようにことづけられたのじゃ」

「ああ、そうだ……。つって、いきなり頭の上から現れて、ヒップアタックかました挙句に、顔の前でおならをするってどういうことだよ!」


 俺の反論に彼女は顔を真っ赤にして抗議する。


「出口の設定をミスったのじゃ。それよりもお主は、あまつさえ乙女の大事なところにあんなことをしてさらに恥をかかせおって、どう責任を取ってくれるのじゃ? 」

「知らねーよ! そっちが勝手に落ちてきたんだろう……ん? これ何だ?」


 口の中に感じた「それ」を指でつまみ出して目を凝らして見てみる。


「こ、これわぁあ! あたりも当たり! ジャックポットだぁああ! 冥土の土産だ! お守りだぁああ! ヒャッハー!」


 それは彼女の下敷きになったときにパンティから口に入った数本の緑色の「毛」であった。

 瞬間、顔を真っ赤にした彼女はバッと両手でスカートの前をガードする。


「バカバカバカ! そんなもの口に入れるでない! あああああ! もう……何なのじゃあ……お主はぁ。大事なところに鼻先を入れられるわ、恥ずかしいところ全て見られてしまうわ。……もう妾はけがされてしまったのじゃぁああ!」


 彼女はその場に崩れ落ち女の子座りをして大泣きをし始める。


「ちょっと落ち着けよ……」


 なだめようとしたが、彼女は顔を真っ赤にして涙目で迫ってくる。


「やかましい! 妾は今までひたすら純潔を保ってきたのに、何と言う事をしてくれたのじゃ! この責任をとれ! 妾を嫁にもらえ! よいか!」

「はへ? っちょ、おま、あの……あ……は……はい……あの不束者ふつつかものですが……」


 嵐のような勢いに飲まれ、不覚にも返事をしてしまった。


「よし、契約完了じゃ。今から妾はお主の嫁じゃ。よいな」

「え? あ……あの、すいません……」

「何じゃ。今更嫌とは言わせんぞ」


 彼女はジト目で睨みつけてくる。


「そうじゃなくて、まず名前ぐらい教えてよ」

「そうじゃそうじゃ、まだ名前を言うておらぬかったな。失敬。改めて、妾の名はフランシウム・フェリシアノ・ルシフェラじゃ。」

「フランシウムさんだね。それで、御父上とのお約束はどうなるのかと……」

「お主、義理堅い奴じゃな。わかった。しばし待て」


 すると何もない空間に黒いひずみが発生し、彼女はその中から携帯電話のようなものを取り出し、どこかに電話をかけ始める。


「父上。今言われたところに来ておるが、ちょっと事情が変わっての、しばらくここにいることにした」


 しばらく話していた彼女は「大丈夫じゃて。心配するでない」と言うや否や話を切り上げ電話を切りこちらを向く。


「父上の了解は取れた。じゃがやはり約束は約束じゃ。もらうものはもらうぞ。父上からの命令じゃからの」

「まあ、それならそれでいいんだけど。あと、御父上怒っていなかった?」


 男の部屋にお使いで出した娘がしばらくいると言われれば、そりゃ父親は心配するだろうよ。


「ヤイノヤイノ言うてきたが、途中で切った」


 何事もなかったように平然と答える彼女にこっちが焦る。


「うぉをおい! ちょーおっと待てぇい! それ全開で了解取れていないじゃん! 大丈夫なの? ここに殴り込んでこないか?」

「まあ心配するな。何れにせよ、お主の魂はもらうのであるから、妾でも父上でも変わらんのじゃ」


 まあ結果論的にはそうだけど、なんか違う。


「お主、随分と物分かりが良いのう。お主ら人間はいざとなると、泣くわわめくわ、そりゃぁ見苦しいものじゃがの」

「いや、お陰様で姉貴を助けて頂いたからね。本当に御父上には感謝しているよ。重ね重ねよろしくと」

「そうそうか。って違ーう! 何故、貴様のような奴が我々悪魔と契約するのじゃ? 普通は仕返しやら自らの欲望のためだけに契約するのじゃろうが!」

「いや、神様にお願いしてもね……」


 俺は彼女に一連の経緯いきさつを話し始める。


 〜〜〜あとがき〜〜〜

 この度は沢山の作品の中から拙作をお読み下さりありがとうございました。

 初めて書いた小説です。もしよろしければフォロー、レビューをよろしくお願いします。



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