うすぐや密室殺人事件

最悪な贈り物

うすぐや密室殺人事件 日常編

ピンポーン

「109」と書かれている表札のマンションの中にチャイムの音が轟く。

それに気づいたのか、廊下を駆けるような音を鳴らしながら誰かが扉の前へと立つ。

そして、鍵の開く音がした後に、扉が開いた。

開いた扉から出てきたのは昔からの友人の、リュウイチだった。

「よお。」

「あ、よおキリヤ。久しぶりだな」

「なんだよ…そのボサボサの髪は…」


俺はリュウイチの家の中へと踏み入れた。

そして、俺はリュウイチのマンションへ踏み入れたことを後悔する。

「き、汚ねえ…」

俺が案内されたリュウイチの家のリビング。壁は木造で、薄そうなのが、正直な感想。

そして、そんな部屋の中には出そうとしたであろう、ゴミのまとめられた袋、飲みかけの炭酸飲料、そこらじゅうにあふれたポテトチップの袋のゴミとそのカス。

これらを統合して言うならいわば「汚部屋」と言うところだろうか…

足場をいちいち確認しながら俺は、リュウイチの家で、一番荒らされていない、ベットに腰掛けた。

「お前なあ…全部片付けとけよ…」

「すまんすまん。ゴミ出しが面倒でさ…」

なぜだろうか…いつの間にか俺は鼻を摘み、激臭による感覚の喪失を防いでいた。

「今日って確か、燃えるゴミの日だよな?俺ちょっと出してくるわ!!!」

俺は部屋の大部分を占めているまとめられたゴミ袋を全て掴み持ち、俺はリュウイチの部屋からでて行った。

「あ、おい!キリヤ」というリュウイチの声も聞かずに。


「って。俺はこんなことをしに来たんじゃねーっつうの!!」

「いやーすまんすまん!なんかだいぶ綺麗になったわwありがと。」

リュウイチのさっきまで広がっていた「汚部屋」をレベル100にして例えるならば、俺はレベル20までは下げられたであろう。

それくらいゴミ袋の占める面積は大きかったのか…

「だいぶ綺麗になったって言うけどなあ…まだまだ汚ねえからな?キッチンもどうなってんだよ…」

皿が洗われてなかったじゃないか…

「あの量を5分で片付けるなんてな。やっぱすげーわ。日常から掃除機回してるやつはちげーなぁ」

「まあ、俺は極度な几帳面だからな!!」

「はは。それってめんどくせー奴って言い方もあるんじゃないか?」

「うるせえぞ。」

俺はスマホを出す。時刻は11時00分を指していた。

「ちょうどいい時間だな。」

「どこがだよ!そんな格好じゃ遅れるぞ!!早くしてくれ!!」

「おっと、すまんすまん」

リュウイチは自身が座っていた床から立ち上がると、パジャマをそこら辺に脱ぎ捨てて、床にぐちゃぐちゃにしてあった緑色のパーカーを着る。

「う、うぐぐぐぐぐ…」

「キリヤ、お前はどうせ汚ねえとか言うんだろ?そんな顔してるよ。」

「よくわかったな…」

「まあ、旅行はこれで行くって前から決めてたんだ。譲りはしねえよ?」

リュウイチは薄く笑いながら言った。

「わかったよ…とても気にはなるけどな…」

「顔が認めてねぇぜ?」

そう…俺たちは、これから中学の時の友人と、一緒に小さな旅行へと行く。

久しぶりにあいつらに遭うなぁ…

そのことを考えると俺の胸踊り始める。

「さあてと…出発しますか…」

「そんじゃ、車に乗ってくれまずは旅館に行くぞ」

俺はリュウイチの荷物を車の後ろへ積むと、運転席に座った。

この時の俺は、まさかあんな恐ろしいことになるとはなるとも知らずにアクセルを踏んだ。




*これはあくまでフィクションです




俺はブレーキを踏み、駐車場へと車を入れる。

そして俺は、車を降り旅館の駐車場へと足を踏み込む。

俺たちは駐車場から少し歩き、「うすぐや」という看板を掲げた木造の建物を見つける。

「ついたー」

「風情のある綺麗な旅館だな。」

俺たちは旅館の正門から入ると、すぐ前には木造の大きな建物があり、玄関の横には何かの木が植えられている。

そして、その木の横には脚立が立てられてあった。

「庭師でもいるのかな?俺も庭欲しいな。」

「リュウイチはマンション住みだろ。」

「憧れてるだけさ。」

俺たちは「うすぐや」の看板の下を潜ると、俺たちは2枚の戸を開き、旅館の中へと入った。

「お邪魔しまーす」

「旅館にお邪魔しますは辺じゃね?」

「いいんだよ」

俺たちがそんなことを話していると、奥の方から女将さんのような人が出てきた。

「本日はようこそいらっしゃいました。」

「えーと、予約していたリュウイチです」

「リュウイチ様ですね。少々お待ちください。」

俺たちはその内に靴を脱ぎ、旅館へと上がった。

「外の木って何ですか?」

「あの木は桜の木で、創業当時からありまして、樹齢は80年もあると言われております。」

「庭師が手入りされているんですか?」

「ええ。よくお気づきで。」

「外に脚立があったので、それで。」

「脚立?そんなものありましたかね?」

「?」

女将さんは、自分のいたカウンターから鍵を一つ取り出すと「こちらがお部屋の鍵となります。ごゆっくりどうぞ。」と言った後に、カウンターの奥の方へと消えていってしまった。

「ま、あいつら来るまで時間あるし、とりあえず部屋に行ってみるか。」


「205」と書かれた鍵の通りに205号室に行くと、そこには大きな窓、二つとその横に換気用なのか、小さな窓が付けられ、光が部屋中に充満している綺麗で、小さな和室が広がっていた。

そして、その美しさに俺は「うおー」と感嘆の声を思わずあげた。

「なんか旅館って感じするな。」

床には畳が敷かれており、大きな窓の近くには二つの椅子と一つの机。

どうやらそこから、庭にある桜の木が立っている。今は夏なので、桜の木は緑の葉っぱをつけている。

「いい眺めだな」

「俺こっちー!」

リュウイチはそう言いながら、右の椅子へと座った。

「じゃあ俺はこっちに」

そして俺はリュウイチの反対側の左側の椅子に座る。

「いいな。夏の桜の木も」

「確かに」

俺は少しだけ、揺れる桜の木を眺めると、しばらくして、椅子を立った。

「他に何かないかな?」

俺はそう言いながら、テレビの横に置いてある棚を開けた。

「ここに服とかしまえそうだな」

「棚とか久しぶりに見たわ」

「お前もこん中に服入れろよ?」

「わーかってるって」

俺は玄関に置いてきたキャリーケースを持ってこようと玄関に向かった。

玄関の横にはトイレがあり、俺はトイレの扉に目を向けたが、直ぐにキャリケースを持ち上げて、部屋の中に入れる。

「トイレは外にあるんだな。」

俺がそういった時、リュウイチは大きな窓の横にある小さな小窓から外を眺めていた。

「キリヤ!これ覗いてみろ!!」

「ん?」

俺はリュウイチの指示通り、大きな窓の横に取り付けられている体も入らないような小さな小窓を覗き込む。

「うおお。」

小さな小窓からは、絵画のような外の風景が広がっていた。

「これさ、見えにくいけど見えにくいから絵見たいな感じに見えね?」

「た、確かに…」

俺はその小窓から吹き込んでくる風と、外の木々の匂いで落ち着いているた。

「そういえば、なんでここにこんな小窓があるんだ?」

「え?多分、この大きな窓さ、ベランダとかないじゃん?」

確かに言われてみればそうだ。この大きな二つの窓。外に出てしまったら、ベランダがないから直ぐに落ちてしまうな。

「ベランダがないと落ちちゃううから、開けるわけにもいかないし、でも、空気は取り込みたいから小窓を横に作ったとかなんじゃないかな?」

「そういうことか」

プルルルル プルルルル

リュウイチはポケットにしまってあった、震えているスマホを見る。

「あ、あいつらからだ。」

リュウイチは「ユウタ」と書かれているスマホの画面をタップし、電話に出る。

「お?着いた?オッケーそれじゃあ、ロビーで」

リュウイチはスマホの画面をタップし、電話を切ると、俺に向き直って、「来たってよ」と言った。

「お、じゃあ、行くか!!」


俺はロビーに向かうと、4人の人の影があった。

「よお。リョウ、シオン、ショウ、ユウタ」

「久しぶりだな」

俺たちが、その4人に挨拶をした。

「久しぶり!元気にしてた?」

シオンが靴を脱ぎながら言った。

「久しぶりっすねえ〜元気にしてた?」

ショウがシオンの言葉を反復する。

「言葉丸パクリやん」

リョウがそこを突っ込む。

「何この変な流れ」

ユウタがそれらを一掃した。

「とりあえず、全員集合ってわけね。」

「ほんと大変だったよ…リョウがさあ…」

「いやあれは!不可抗力なんですよ!!!」

俺はとりあえず、なんとなくのことを察し、各々の部屋の鍵を女将さんからもらうと、4人をそれぞれの部屋へと行かせた。

また、あの時の賑やかさが戻ってきたな。


そして、しばらくして…

「そんじゃ、何のゲームする?」

「エペしようぜ!エペ!」

「それ俺やってない」

「あれ?リョウさんやってなかったけ?」

「キリヤもやってるし、できるかと思ったわ。」

「そんじゃ、RPGツクールでもしますか…」


「それじゃあ、起動します!!」

俺たちは205号室のテレビでRPGツクールをすることになった。

時計の指す時間は5時半。

今は夏だからか、日が落ちるのは短いようだ。

「あ、コントローラー忘れてた。ちょ取ってくるわ。」

「おいおい。リョウさん!!しかりしてよ〜」

「ちょ、行ってきまーす!」

そういうと、リョウは部屋から出ていった。

「え、ちょっとリョウ城から出て2秒で殺そうぜ!!!」

「あ、いいね!」


「なんか、懐かしいなこの感覚。」

「え?」

リュウイチが小さな声で囁いてきた。

「いや、中学とかの時もさ、こうやってみんなでよく集まったじゃんかその時のことを思い出してさ」

「あー、確かにな。」

確かに、こんなにガヤガヤしているのは懐かしいな。

まだ始まったばっかだから、こんなことは思うことじゃないだろうけど、またみんなで集まりたいな。


ゴーンゴーンゴーン。

205号室の時計が鐘の音を鳴らす。

「あれ?もしかしてもう7時?」

「早いな。もう7時か。」

「7時って夕食の時間じゃね?」

「あ、そうか!じゃあ、行こうぜ!いざ出陣じゃああ!!!」

俺たちはテレビからゲーム機を外し、部屋から出た。

「あ、俺とショウトイレしてから行くわ。」

そう言ってリョウは俺たちにそのことだけを言って、トイレに入ろうとしたが、ギリギリの所で、ショウに越された。

「あ!!!!漏れそオオオオオ!!!」

「はは…頑張れよ…」

そう言いながら俺たちは夕食へと向かった…

 ・

 ・

 ・

「いやー、夕食美味かったな!お風呂も最高だったしよ!!まさかあそこでショウがあんなことをするとはなー」

「喜んでもらえて、よかったよ。」

時刻は10時。俺たちは風呂を入り、そろそろ床に付こうかという所だった。

「そんじゃあ、そろそろ寝るか?明日なんか行くんだよな?俺、旅館は予約しておいたけど、それ以外のプランはシオンに任せてあるからわからないんだよな。」

「そうなんか?俺もシオンに一任してあるからわからんのよね。」

「あ、そうなのね。お前、俺らの外交担当っぽい立ち位置だったから」

「ふーん。ま、とりあえず寝ようぜ。俺はトイレ行ってくるよ。」

「いってらー」

俺はトイレに向かい、トイレで要を足すと、手を洗った。

「あれ?手洗い石鹸が切れてる…あいつ…」

リュウイチめ…あいつちゃんと気づいたら入れとけよな…

俺は棚の中を調べると、キレイキレイの詰め替えが一つ置いてあったので、俺はそれをとり、手洗い石鹸を詰め替える。

俺の前にはリュウイチが使っていたはずだから、あいつ要するに手洗ってないよな?

俺はそんなことを思いながら、手洗い石鹸を詰め替えていた時だった。

バンバンバンバンバンバンバンバンバン!!!!!!!!!!

何かが爆発したような音が九発もした。

「な、なんだ!?」

俺は激しい音に気を引かれ、石鹸をこぼしてしまった。

「あ、まずい…」

俺はとりあえず、それを拭き取ると、直ぐにトイレから外に出た。

そして、俺がトイレから出ると、広がっていたのは…

「お、おい?リュウイチ…?」

そこに広がっていたのは、赤く、ワインの色よりも濃い血を流し、地面にうつ伏せになって倒れているリュウイチの姿だった。

床には赤いペンキをこぼしたかのように大きな血の水溜りができている。

「お、お前!?」

呼びかけても反応がない。

俺はリュウイチの顔を覗き込んだ。

「こ、これって…」

俺は胸に耳を当て、心臓の音を確認する。

「呼吸もない…目の瞳孔が拡大している…呼吸もない…間違いない…死んでいる!!!!」

「おい?リュウイチ?キリヤ?どうした?」

外からあいつらの声が聞こえた。

「お、おい!!!リュウイチが!!!!」

俺がそういうと、ドアを叩きながらシオンが「せ、せめて開けてくれ!!鍵がかかっているんだ!!」

「あ、ああ!!!」

俺は玄関の扉の鍵を開け、あいつらを部屋に入れる。

「え!?わ、リュウイチ!?!?!?」

「と、とりあえず、け、警察…」

「わ、わかった!!!俺、警察呼んでくる!!!!」

そういうと、リョウは玄関へと駆け込んで行った。

「じゃ、じゃあ俺は女将さんに報告してくる!!」

シオンもリョウに続いて外に向かった。

「あ、ありがとう!!!2人とも!!!」

「おい!!これ…どうなってるんだよ…!!!!」

その言葉を言ったのはユウタだった。

そして、ユウタは片手に黒く光るいわゆる拳銃を持っていた。

「そ、それどこにあった!?」

「この棚の中だよ…こんなこと、言いたくないけどさあ…お前、リュウイチを殺したんじゃないか!?」

「な、なんでそうなるんだよ!!」

ショウも俺を怪しんでいるように、少し距離を置いている。

「だ、だってよぉ…ここの扉は閉まっていて、誰も出入りができないんだぞ?そんな部屋の中で拳銃が見つかって…その部屋には、銃を撃たれた奴と他の奴がいるんだぜ?こんなに条件が揃っちまえばよお…完全な密室の中でリュウイチに銃を撃てる人なんて…お前しかいないじゃないか…」

「そ、それは…!!!」

「どうなの!!!」

ユウタに加え、さらにショウが畳み掛けてくる。

「お、俺はやってない…」

その時の俺はそれしか言うことができなかった…


外では桜の木が揺れ、外の冷たい空気が部屋の中に舞い込んでくる。

「い、嫌な予感だ…」

俺はこの時、とてつもない寒気を感じた…

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