ソーヤの大冒険~無人島でサバイバル?!~

風雅ありす@『宝石獣』カクコン参加中💎

【第一章】問題児三人組

第一話 ソーヤという少年は

 つくし野第二小学校の五年三組の教室では、ちょうど五時間目の授業じゅぎょうが始まったところだった。


富瀬とみせ 奏也そうやくん! まぁた宿題をわすれて来たの? これで何回目かしら?」


 担任たんにん河合かわい先生が、かたをいからせながら言った。

 その顔を見て奏也は、ヤバい、と思った。

 河合先生は、ショートカットがよく合う、明るくてやさしい先生だ。そのため、男女ともに人気がある。

 でも、おこる時は、顔がモンスターみたいにコワくなるのだ。


「バツとして、トイレそうじ、よろしくねっ!」


 がーん!!


 トイレそうじは、みんながキライな仕事だ。だから、先生は、この仕事をいつもバツとして生徒にあたえる。

 そので、奏也は、トイレそうじが得意とくいになった。


 授業が終わり、クラスメイトたちが楽しそうに帰りの準備じゅんびをしているのを見て、奏也は、ため息をついた。トイレそうじを終わらせなければ帰れない。


「よぉーし、さっさと終わらせるから、あとで公園に集合なぁ~!」


 奏也は、帰ろうとしていた男友おとこともだちに、大きな声でびかけた。そのまま、ひとりで教室をとび出し、トイレへ向かって走る。


 急いでとびこんだ先に、なぜかたちがいた。


「きゃーっ! 奏也くんっ、ここ……女子トイレよぉー!」

「えっちー!」

「やだ、男子トイレは、となりよー!」


 三人の女子たちが、奏也を見て、さけび声をあげた。

 どうやら奏也は、あわてていたせいで、女子トイレと男子トイレをまちがえてしまったようだ。


「あっ、いっけね。まちがえちった」


 へへっと笑いながらあやまる奏也に、女子たちもつられて笑ってしまう。


「もー、奏也くんってば、また先生にしかられて、トイレそうじをやらされてるのね。今度は、何をして、しかられたの?」


 ポニーテールをした、一番身長の高い女子が言った。五年一組の桂木かつらぎ 加奈子かなこだ。奏也とは、四年生の時に同じクラスだった。


「へへっ、宿題わすれたんだ。これで二回め……いや、三回?

 あれ? 四回だったかなぁ?」


 しんけんに首をひねる奏也を見て、女子たちがくすくす笑う。


「もー、しっかりしなさいよね。もう五年生になったのに」

「言ってくれたら、宿題見せてあげたのに〜」

「そうね。今度は、先生にしかられる前に、私たちに言いにきなさいよ」

「おっ、サンキュー♪

 でも、宿題は、ちゃんと自分でやらないと意味がないから、いいや」


 宿題をやってこないのだから、そもそも意味はない。

 だが、変なところで真面目まじめな奏也であった。


 奏也は、気を取り直して、女子トイレをとび出した。今度は、ちゃんと男子トイレへかけこむ。


「早くしないと、遊ぶ時間がへっちゃうからな。さっさとそうじ、終わらせよっ」


 そう言って奏也は、うでまくりをし、そうじ用具入れからホウキを取り出した。

 まずは、ゆかに落ちているゴミをほうきではく。さすがに何度もやっているだけあって、ちゃっちゃと進んでゆく。


 その間、奏也は、ホウキを使ってぶりの練習がしたくなる気持ちをぐっとがまんした。前にトイレでそれをやって、鏡をわってしまったことがあるのだ。

 もちろん、こっぴどくしかられたが、その時ばかりは、バツとしてトイレそうじをしろとは言われなかった。そもそも、バツそうじをしている最中さいちゅうの出来事だったのだ。

 そんなことを思い出しているうちに、ホウキそうじが終わった。


「よし、あとは個室こしつだな。どれどれ、だれも入っていませんよねー?」


 奏也は、手前から一つずつドアを開けていった。

 個室は、全部で四つあり、二つ目までは、何もない。

 三つ目に、う〇こがあった。


「くっせぇ~! だれだ、ちゃんとう〇こ流さねぇやつは?!

 ……って、う〇こがデカすぎて、つまってんじゃねぇーか!」


 奏也は、そうじ用具入れからスッポンを取り出すと、トイレのつまりを直した。まるでトイレそうじのプロだな、と奏也は、自分で自分に感心した。


「よし、ここで最後だな。

 ……ん? カギがかかってるな。だれか入ってますかー?」


 トントン、と奏也は、四つ目のドアをノックした。

 そもそも、ここは男子トイレ。個室に入っているということは……


「おい、う〇こはちゃんと流せよ~!」


 奏也は、個室の中に向かって声をかけた。

 すると、中から弱々よわよわしい声が返ってくる。


「は、ますぅ~……」

「え? る?」


 奏也が聞き返した。


「いえ、ます……おえぇ~」

「ああ、ゲロってるってことかぁ。そんなら、しかたないな。あとでちゃんと保健室ほけんしつに行けよ」


 それだけ言うと、奏也は、ホウキを片付かたづけて、ホースでゆかに水を流し、ブラシでゆかをこすった。

 そうじを全て終わらせても、四番目の個室からは、まだ「おぇおぇ」聞こえている。


「こまったなぁ~。オレ、このあと、約束があるから、早く終わらせたいんだよ。

 おい、お前、まだ出ないのか?」


 奏也がイライラした口調くちょうで話しかけると、中から苦しそうな声が返ってくる。


「……はぃ~……おぇっ…………す、すみません~……」


 奏也は、しかたなく、四つ目の個室のそうじをあきらめた。


「じゃあ、オレ、これで帰るけど……お前、トイレよごすなよなっ!」


 それだけ言うと、奏也は、返事も待たずにトイレをとび出した。

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