演技派キス魔の百合

暴走天使アリス

主人公side


私の幼馴染はキス魔だ。


常にキス魔って訳じゃなくてお酒を飲むとキス魔になる典型的なパターン。


私達は誕生日が近いこともあって初めてのお酒を一緒に飲んだ。そこで判明したのが幼馴染はめっちゃお酒に弱いことと、酔うとキス魔になってしまうこと。

お酒を飲む時はだいたい家飲みなんだけど首とか頬とか色んなところにキスをして、酷い時にはキスマークをつけてくる。


たまに会社とかでキスマークを見られることがあったんだけど…曖昧に誤魔化したら、恋人がいるんだって認識されてサシで飲みに誘ってくる男性社員がパタリと居なくなった。


これに関しては正直ありがたいので否定せずにそのままにしてある。まあ、今年で23歳。彼氏とか作った方が良いのかなぁ…なんて考えたりもしてるけど、生まれてこの方恋をしたことがない。いや、マジで。厨二病的思考とかじゃなくてホントのホント。

見た目だけはいいって自覚はあるけど、どうも好きになれそうな男性が居ない。悲しきかな。


そんな訳で恋愛してみたいけど恋愛出来てない悲しさを紛らわすという名目で例の幼馴染と家飲みである。本日のお酒様は白ワイン。

うまうまのうまでありうまうまだからうまいのだ。


何言ってんだ私。怖。


「はぁぁぁぁー恋人欲しぃー。いい感じの彼氏作りたいわ〜」


願望が漏れでる…これがお酒様のお力!すでに酔っているのか私!思考に異常性…無し!いつも通り!結論酔ってない!


まあ、謎にお酒様に対する免疫があるみたいであまり酔わない。もちろんガブ飲みした時は意識が何処か遠い場所に家出したこともあったけど。


「ん〜?彼氏ほしーのー?だめだよぉー!私というおんながいるでしょぉ!」


……この酔っぱらいは非常に良くない酔い方をする。絡み酒?ってやつだと思う。まあ、可愛いから許す。


それはそれとして、酔った時に本性が出るなんて言葉を何処かで聞いた事があって、それが正しいとするならばこの幼馴染は私のことが大好きな百合っ子ちゃんになるということでして。

……嬉しくないと言えば嘘になるだろう。だって可愛いし。性格も良いし。正直貶す所がない完璧美女である。そんな彼女はと言うと


「んへへ〜彼氏できないようにしてやふ!

んっ、あはっ!ついたぁ!」


ご覧の有様。私にキスマ付けて喜んでいらっしゃる。手鏡を出して首元を見てみると……うわ、これしばらく消えないやつ。


「もー!こんなに濃くつけて…私の未来の彼氏に見られたらどうするの?」

「その未来の彼氏にとられにゃいようにするためなのー!」


いや、可愛い。言ってることは私としては良くないことなんだけどマジで可愛い。本当に同い年?呂律が回ってないのも、顔がアルコールで赤くなってるのも、私にしなだれかかってきてるのも全部最高に可愛い。


こうして、めちゃめちゃ可愛い幼馴染との家飲みは終了していった。ちなみに合計3つのキスマをつけられた。無念。でも唇には1度もされたことがない。なけなしの理性が働いてるのか?真相は闇の中。


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


そんなこんなで今月末ー。いつもの友達と飲みに行くことになった。今回は用事があるとか例の幼馴染は欠席。……そういえばサシ以外で飲んだことないかも。みんなでワイワイ飲むの嫌いなのかな。


今回のメンバーは、いつメン!高校の時からずっと仲の良い私と幼馴染を含めた5人組。社会人になった今でもこうして時々飲みに行くくらいには交流が続いてる。


「てか聞いてよー!この前付き合ってた彼氏がさ……」

「えーマジ?それはやばい……」

「いいな〜。ウチも彼氏ほし〜!」

「分かる!私も彼氏欲しいわぁ」


こんな生産性のない雑談が最高に楽しく気の合う友達なので非常に長続きしてると思う。


「あんた顔はいいのに全然男作んないよね」

「いやーいい人がいなくてさ〜」

「ふーん?……は?あんたそれキスマ?」

「えー?わ、ほんとだ!ここキスマ付いてるじゃん!」

「え?……あー、これは彼氏とかじゃないよ。最近幼馴染と飲んだ時に付けられたやつだから」


何気に初めて見られたなぁ。まあ、連続して飲みに行く事があんまりなかったからなぁ。あとはめっちゃ見えやすい位置だしね。全くあの子は。


「え?あの子と付き合ってんの?」

「いやいや、酔うとキス魔になるみたいでさ〜、毎回キスマ付けたりしてくんのよ」


「「「え?」」」


「え?……いやいや、何?みんなも一緒に飲んだことあるでしょ?すぐ酔うしキス魔になるの知ってるでしょ?」

「いや……」













「あの子が酔ってる所見た事ないよ?何杯飲んでも酔う所か、顔が赤くなったりした所すら見た事ないよ」



「……え?」


いやいやいや……え?そんな事ある?だって飲み始めて15分で酔ってるあの子だよ?強いの?お酒様耐性メチャ強なの?顔すぐに赤くしてベタベタしてくるあの酔っぱらいが?


「……あー、なるほどねー。あの子、なかなかの策士だね。うんうん、なるほど」

「え?え?策士?どういう事?」

「いや、なんでもないよ?まあ、気になるなら本人に問い詰めなよ」



この日。困惑が強すぎてずっと呆然としていた。



━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


あの日飲み会で言われた言葉が何度も頭の中で再生される。


……でも、初めてお酒様を飲んだ時に一緒だったよね。その時から酔うし、キス魔になる。

最初から嘘をついてたの?なんでそんなことするの?本当に今までのは演技なの?演技だったとして……なんでキスしてくるの……?

わかんない。わかんないよ……


うじうじ悩んでても仕方ない。やっぱり本人に聞いてみよう。家に呼んだ方が早いよね。




「……あ、ちょっとさ、今から家来ない?ちょっと話したいことがあるからさー、来てくれる?」

『今から?まあ、暇だったし良いよ』

「ありがと〜。待ってるわ」


よし、30分位したら来るはず。……なんかドキドキしてきた。緊張するぅ……!なんか踏み込んじゃいけない領域だったらどうしよ……でも気になってしょうがないし!



ガチャッ



あ、来た。なんか早い……


「やっほー、来たよー?」

「ありがと、さ、ここ座って?」


ふぅ、よし!ここはまどろっこしい事はせずに単刀直入に聞こう。


「あのさ、いつも、お酒飲んだら酔ってるけどさ……あれ嘘だよね…?」

「……え?そ、そんなこと…無いけど?」

「ほら!絶対うそじゃん!動揺してるじゃん!」


「うぅぅぅぅ……そうだよ…嘘だよ、演技だよ!何!失望しでもしたの!?」

「え?いやそうじゃなくて……なんでそんなことするのかなぁって思って」



「……キスしたいから…………シラフだと恥ずかしいし、好きだってバレるのが怖くてお酒に酔った勢いって体にしてキスしてた……ベタベタしてたのも密着してたかったから……どう?気持ち悪いでしょ?」

「そんな事な」

「わかってる!でもしょうがないじゃん!もう貴方が居なきゃ私は生きていけないの、ハグしたり、キスしたりして、ずっと一緒に居ないと生きてる意味がわかんなくなるの……きもい上に重いとか笑っちゃうよね。でも、もう無理なんだもん……ごめんね?」


そう心の内をさらけ出した幼馴染はジリジリとこちらへにじり寄って来る。


なんか目が据わってない?今なら本当に何でもしそうな雰囲気してるよ?ていうか私の事好きなの?

色々ありすぎて頭が痛い……とりあえず整理したいのに、この状況がゆっくり考える時間をくれない。そうこうしてるうちに幼馴染も目の前まで……目の前!?


「ごめんね……こうするしかないから」


なんて謝りながらも、明らかに欲情した顔で私を押し倒してくる。あれ?これはまずくないかなぁ?


まあまあ、抵抗すればいい話ですよ。てことで失礼して……んん?あれ、ビクともしないなぁ?

なにこれ、岩かな?全力で押し返してるけど……もう感覚的には岩だねこれ。


え!ヤバいって!こんなに力強いなんて知らなかったんだけど!馬乗りになってて足は抑えられてるし。どれだけ押してもビクともしないし。詰み?これ詰みですか?


「ごめんね……頂きます」


いや、何、頂きますって!?ナニを頂くつもりなのかなぁ!?

そして、幼馴染の顔が近づいてきて……初めて、唇にキスをされた。

……え、なんか舌入れてくるんだけど!?しかも、なんか、上手い……めっちゃ気持ちいいかも。


私の記憶は……鮮明に覚えているのはここまでだ。その後は朧気にしか覚えていないけど……やばかった。



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カーテンの隙間から差し込んでくる光で目が覚める。隣には……一糸まとわぬ姿の幼馴染。

下を向けば……これまた一糸まとわぬ姿の私。更には身体中にキスマークのオプション付き。



これが噂の朝チュン……

可愛らしい小鳥たちの鳴き声は聞こえてこないけど朝チュンである。思考が明瞭になる程に蘇るあんなことやこんなことの記憶たち。


めっちゃ上手かったけど……手加減って言葉を知らないのかな?現に私は動けないでいる。何故って?

体が痛くて動かせないからだYO!!★


まあ、手加減はしてくれないし、変態だし、あとは……変態だし。でも、私のことを本気で好きでいてくれる幼馴染。この子と一緒にこれからの人生、歩んでいくのも……ありだなぁ。


「これから、よろしくね?」



寝ている幼馴染にキスをひとつ落とす。寝ているはずの幼馴染は何故か、顔が赤くなっていたとさ。

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