ふうせん

徒文

ふうせん

 青い空に、ふうせんが浮かんでいました。

 赤色のふうせん、オレンジ色のふうせん、紫色のふうせん、それに、ピンク色のふうせんです。


 ずうっとふよふよ浮かび続けています。

 なにをするでもなく、ただ、そこに浮いているだけです。


 突然、一番高いところにあったピンク色のふうせんが割れてしまいました。


 ぱんっ。


 私たち人間の耳には届かない遥か上空で、大きな音を立てて割れました。


 次に、一番低いところにあったオレンジ色のふうせんも割れてしまいました。


 ぱんっ。


 ふうせんとは、最後にはけっきょく割れるかしぼんでしまうものなのですが、それでもいきなり割れてしまうなんて悲しいですよね。


 しかし、連鎖は止まりません。

 次に、赤色のふうせんも割れてしまいました。


 ぱんっ。


 ああ、もったいない。

 空を飛ぶ小鳥や雲たちも、ふうせんが割れていくのを残念そうに眺めています。


 暖色のふうせんは、青い空に映えるのになあ。

 せっかくかわいかったのになあ。

 シャボン玉なんかを飛ばすと、それはそれは魅力的な景色になるんだけどなあ。


 そんな声が聞こえてくるようです。


 けれども連鎖は止まらずに、とうとう、最後の紫色の風船までもが割れてしまいました。


 ぱんっ。


 あー。

 落胆の声を残して、周りにいた小鳥や雲たちはみんな去っていきました。


 実は、高い空には他にもたくさんのふうせんが浮かんでいるので、この場所のふうせんにこだわる必要はなかったのです。


 青色のふうせん、緑色のふうせん、黄色のふうせん、黒色のふうせん、白色のふうせん、金色や銀色のふうせんまで。


 小鳥たちも、雲たちも、その日のうちに次のふうせんを見つけていました。


 ただなんとなく眺めている者。

 割れるのをわくわく待つ者。

 あわれみながら頑なに目を逸らさない者。

 自らつつく者までいます。


 雄大な青空は、ある意味で、地上よりも残酷な場所なのかもしれませんね。

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ふうせん 徒文 @adahumi

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