第3話 四天王のワナに弄ばれたホ!
キリカの住む今北市にはいくつかのパワースポットがある。当然そのエリアも帝国に狙われていた。今朝はそのひとつ『神の腰掛け』と言う巨石付近に、バエンナーが現れる。
「ミラクルスタークラーッシュ!」
キリカはステッキを振りかざしてバエンナーを攻撃。翼の生えたカピバラのようなその侵略生物兵器は、キリカの攻撃によって無へと還る。
バエンナー撃退後、他に敵がいないのを確認してトリは結界を解いた。
「キリカ、お疲れ様ホ」
「うーん」
「どうしたホ?」
「最近、バエンナーが変に弱い気がする。おかしくない?」
彼女は最近の戦闘に違和感を覚え始めていた。一時期は一筋縄でいかない戦闘が多かったのに、突然敵が弱くなったのだ。しかも、今まで現れる事のなかったパワースポットでの出現率も高くなっている。
話を振られたトリは、いつもと変わらない表情を相棒に向ける。
「まだ何も分からない内は迂闊な事は言えないホ。今はいつも通りにしていた方がいいと思うホ」
「そうかな……?」
「どうしたホ? 何かあったのかホ?」
「私の第六感がね。いや、考えすぎかも」
キリカは頭を振って不安な気持ちを払拭。休み時間に学校を抜け出していたので、すぐにアイテムを使って教室に戻った。トリもまたキリカの家に戻る。
翌日もまたバエンナーが出現。今度は昼休みの時間帯だ。トリから報告を受けた彼女はすぐに現場に直行し、魔法少女に変身。すぐに結界を開いてバエンナーと対峙した。
「毎日毎日、いい加減にしてよ!」
「バエンナーッ!」
「まぁ、あんたに言っても無理か」
今回出現したバエンナーは大型サメタイプ、そしてなぜか空中に浮遊していた。どうやら水陸空万能タイプらしい。出現場所が海だからサメタイプなのだろうか。
この場所もパワースポットで、沖にある島に妖怪退治の伝説がある。
今度のバエンナーはキリカの攻撃をことごとく回避。段々出現する敵の強さが上がっている事を彼女は痛感する。
攻撃が当たらない事が分かったので、キリカは戦法を変える。ステッキを構えて魔力を充電し始めたのだ。動きが止まったのもあって、バエンナーはまっすぐ彼女に向かって突進してくる。
「バエンナー!」
「そこだ! ビッグレインボウセブンアロー!」
射程距離に入ったところで、キリカは攻撃魔法をバエンナーに向かって撃ち込む。七色の矢と化した魔法のビームがバエンナーに直撃。直後に大爆発を起こし、今回も彼女が勝利した。
「ふう……」
「無茶は禁物ホ。タイミングを間違ったら……」
「そうだね。段々敵が強くなってる。やっぱりこれはおかしいよ」
キリカは心配するトリに向かって疑問を投げかける。その真剣な眼差しに、彼もまた真剣に向き合った。
「キリカはこれが敵の作戦だと思っているホね?」
「連日バエンナーが出てくるようになったのって、あのギャールオってのを倒してからだよ。ねぇ、四天王って他にどう言うのがいるの?」
「確かに、アレ以降他の幹部が出てこないのは変かも知れないホね……」
キリカは四天王の1人、ギャールオを倒している。普通に考えれば他の幹部が直接襲ってきてもおかしくない。それがまだと言うのは不気味ですらあった。
トリは一呼吸置くと、ゆっくりと語り始める。
「飽くまでも、ボクが知っている限りの範囲ホ」
「それでいいから話して」
彼女は真剣な顔で相棒の言葉を待つ。そこでトリは四天王について話し始めた。
「四天王はギャールオ、パリピーナ、ガングロン、ヨーキャの4人で構成されているホ……」
トリいわく、ギャールオはナンパでナルシストなイケメンで詰めが甘く、パリピーナはギャルで頭脳派タイプ、ガングロンは無口で何を考えているのか分からない、最後のヨーキャは何も考えていないパワータイプ――らしい。
「トリは今回のバエンナー襲撃の裏に誰かが絡んでいると思う?」
「多分、パリピーナかガングロンホね……」
「そうだよね。私もその2人が怪しいと思う。どっちだろう?」
「どっちだとしても、警戒した方が良さそうホ」
この日はここで解散。2人はすぐに本来の持ち場に戻った。連日の襲撃が続くなら翌日もまた襲ってくるだろうと、お互いに警戒心を強める。
翌日、その想定通りにまたバエンナーは現れた。今回出現したのは、またしても地元のパワースポット『奇跡の湧き水』の前だった。それは山の湧水で、飲むと万病に効くと言う話がある。
バエンナーの気配を察知したトリが、キリカにテレパシーで遠隔連絡。彼女はすぐに駆けつけた。
「バエンナー! あなたの好きには……」
このエリアに現れたバエンナーは一体だけじゃなかった。数多くの同一個体が群れをなして空を覆うように飛んでいる。
群体タイプには初めて遭遇したので、キリカは若干動揺する。
「か、数が多いくらい問題じゃないわ。どうせ一体一体は雑魚なんでしょ!」
彼女はステッキをかざして攻撃魔法を連発する。その予想が当たったのか、群体バエンナーは一撃で呆気なく消滅。それを確認したキリカは、次々に魔法を連発するのだった。
「私が一掃してあげるわっ!」
攻撃魔法が当たって次々に消滅していくバエンナー。しかし、一向にその数が減っているようには見えない。
戦況を冷静に観察していたトリは、そのカラクリに気付く。
「キリカ、こいつら倒す度に増えてるホ!」
「嘘? じゃあどうすればいいの?」
「どこかにいるコア持ちの個体を倒す必要があるホ!」
流石はずっとバエンナーと戦っていたトリだけあって、すぐにこの群体タイプの弱点を導き出した。
ただ、倒し方が分かってもそれで簡単に倒せると言うものでもなく、キリカは高速で空中を泳ぎ回る無数のバエンナーに目を回す。
「そんなのどこにいるのよ~」
「ごめん、分からないホ……」
トリは肝心なところで役に立たなかった。攻撃の手を緩めていると、群体バエンナーは次々とビームを放って彼女を狙ってくる。キリカはその攻撃を紙一重でかわしつつ、反撃方法を模索する。
彼女は攻撃を止め、この群体バエンナーを改めてよく観察。そこで動きの法則性に気付いて、ピタリと動きを止めた。
「どうしたホ? そのままだと集中攻撃を受けてしまうホ!」
「マジカルブースト!」
マジカルブーストとは、頭の回転を一時的に高速化する魔法だ。キリカは魔法によって第六感を研ぎ澄ませ、群体バエンナーのコア持ち個体を選別する。しかし、動きを止めるのは諸刃の剣。少しでも攻撃が遅れれば、トリの言う通り集中攻撃を受けて大ダメージは必至だ。
刹那の判断力が要求される中、魔法によってゾーンに突入した彼女の目がキラリと光る。
「そこだー!」
群体バエンナーが一斉攻撃を始めようとしたそのタイミングで、キリカはコアバエンナーを特定。速攻で攻撃に転じた。
「スターダストレーザー!」
ステッキの先から放たれた超高速の光の針が目標を貫通。次の瞬間、群体バエンナーは一気に消滅した。
魔法によって集中力を過剰に高めていた彼女は、作戦成功を確認して片膝をつく。
「何とか、倒せた……」
「キリカ、大丈夫ホー!」
「うん、でもしんどい。今日はもう戦えないよ」
「へ~。やるじゃん」
いつもならバエンナーを倒したところでバトルは終了する。けれど、今日に限ってはその続きがあった。空中から誰かが姿を現したのだ。ギャルっぽい姿をしていると言う事は、ジドリーナ帝国四天王の1人、パリピーナなのだろう。
この突然の大物の出現に、キリカは肩で息をしながらにらみつける。
「あなたがこの作戦を実行していたのね?」
「あーし、雑魚には魅力を感じないからさ~」
「私を試したって事?」
「そ。あんた合格。今度は本気で行くから。またね~」
彼女はそう言うと、手を振りながらまた異空間の中に帰っていく。どうやら宣戦布告をされたようだ。かつてない強敵の出現に、キリカは戦慄を覚えたのだった。
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