烈女(作業中)

ニセ

A-1

序 追放

越後の国、二面村の烈は山で遭難した村の猟師を助けるため、掟を破り山に入る。見事、猟師を村に連れ帰ることに成功した彼女だったが、掟に従い村から追放される。追放された先は、佐堂島。突如として色街が栄えた謎多き島。島良きの船の中で烈は、「しづ子」という別の遊郭で働いていた女性と出会う。烈はしづ子に、女が一人で身を立てるにはこの仕事しかないこと。そして、佐堂島は今一番儲稼げるらしいこと。しかし、あの島から生きて帰った女はいない。という話を聞かされる。しづ子と一緒に場末の妓楼に拾われることになった烈は、源氏名として「リハ」という名前をもらい、遊女としての仕事を半ば受け入れていたが、訛りがひど過ぎるせいで禿の「なぎ」と一緒に謡を習うことになる。、悪戦苦闘するリハだったが、稽古の最中で見た島一番の遊女「ソーニャ」の舞に見惚れ真摯に取り組む決意を固める。しかし、場末の妓楼には年増のリハを養い続ける余裕も義理もなく、一カ月後の試験で合格しなければ、妓楼を追われる旨を知らされる。リハは狩りで鍛えた体幹を武器に華麗な舞を習得し、さらには舞ながらなら訛りが出ないことを発見する。無事に試験を合格したリハは、そのまま能の修行を仰せつかり、客をとることを免除されたが、それは同時になぎが身を堕とすことも意味した。なぎは己の運命を呪い、一度は逃げ出すが、男たちに敢え無く捕まってしまう。なぎが客と闇に消えていく中、リハは葛城を舞い、顔と心に仮面を付ける。


破 変身

三か月後、リハは島の当主様の前で舞を披露するまでに成長していたが、いまだ訛りが抜けきらず、人前に出ることは少なかった。そのミステリアスな雰囲気が話題を呼び、ソーニャとの舞勝負を望む声もあがっていた。そんな声を知ってか知らずか、リハはソーニャたっての希望で付き人に指名される。ソーニャの才能に打ちのめされる日々。さらにはなぎを蹴落とした罪悪感がリハを追い詰めていた。ある日の夜、リハが海岸を散歩していると、水平線を望むソーニャと出会う。そこでソーニャは自身の身の上を話し始める。かつて本土で暮らしていたソーニャには、リハと同じくらいの年の妹がいたという。武家の家ということもあり、なに不自由することなく二人は育ったが、先の戦によって家は潰れ、一家は散り散りに。姉妹はこの島に売られることになる。可哀そうなのは妹で、好いた相手との婚約をしたばかりであった。妹はその殿方に操を誓い、殿方も一年に一回、姉妹が島に渡った日には、島から見えるように本土で明かりをつけると約束する。そして、今日がその約束の日だとソーニャは言うのだった。ソーニャが話し終わると、丁度本土で小さな明かりが灯るのが見えた。リハは肝心の妹はどこにいるのか疑問に思い、ソーニャに聞く。ソーニャはそのことには答えず、舞台に立つものには純潔が求められ、舞台に立ち続ける限り清い身のままでいられることをリハに告げる。ソーニャはそれだけ言い残すと、その場を去るのだった。


ソーニャの願いは清いまま本土へ帰ることだった。しかし、一向に年季が明ける様子がない。そこでソーニャは何年もかけて脱獄の計画を立てていた。その計画を成功させるためには、リハの協力が不可欠。


ついに実現したソーニャとリハの舞勝負の日、ソーニャはリハの協力を得て計画を実行に移す。隠し持っていた船で島を後にするソーニャだったが、本土が見えた瞬間、巨大な不安に襲われ引き返し始める。急な方向転換で船は波に煽られ、転覆。ソーニャは島まで泳いで帰る。ソーニャに協力したことで折檻を受けていたリハは、檻の中でソーニャが戻ったことを知る。計画が失敗したのかとリハは心配するが、どうやら自分の意志で戻ってきたらしいこと、ひどく衰弱して長くは持たないかもしれないことを聞かされ、複雑な思いで満たされる。ようやく懲罰が終わり外に出られたリハはソーニャに会いに行くが、共犯関係にあった二人が会うことは許されない。落胆するリハだったが、数日後ソーニャを見張っていた男(ソーニャの大ファン)が彼女の命が本当に消えかけていること、彼女に何度もリハに会わせてほしいと懇願されたこと、それを拒み続けるのがどんなに辛いかを打ち明けられ、こっそり会うことが許される。リハがソーニャになぜ戻って来たのかを尋ねると、リハはソーニャの言葉に憤りを覚えたが、それを表に出すことはしなかった。そしてソーニャは最後に島の秘密を伝え、息を引き取る。


Q 脱獄

ソーニャがいなくなったことで、リハは新たに祭り上げられる。それに比例して、リハの言動も、ずっと女性らしく、それでいて力強いものになっていった。ある日、リハは島を訪れた田舎者が大金を積み、烈に会わせてほしいと訴える現場に遭遇する。その男いわく、自分は烈に命を救われた者で、そのせいで彼女がこの島にながされたことに罪悪感を禁じ得ず、身請けして救い出したいと言うのだった。しかし、男の持っていた金は遊女を一日だってどうこうできるものでなく、門前払いをくらう。倒れ伏す男を支えにいくリハ。同郷のしかも縁のある人物に会えたことで純粋に喜ぶ彼女だったが、リハの正体が烈であることに男は気づかなかった。ショックを受けるリハは、口数少なくその場を去る。






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