後編-13-
「は?」
心臓が強く鳴った。今度は気のせいじゃない。このダイレクトメールが何を意味しているかなんて、考える必要なんてなかった。
唯一、判断に迷うことがあるとすれば、これは夢カタルが失踪から見つかったのかを問い合わせているのか、それとも、死体なのか――いや、都合の良い考えはもう止めろ。
それよりも、
「え? 何でだ? 何故なんだ? え? 何で知ってる?」
頭の中に埋め尽くす疑問を口に出すことで、少しでも混乱を落ち着かせようとしていた。だけど、吐き出せど吐き出せど不安と恐怖は湧いて出てくる。眠気なんてものは消え失せていた。
「見られた? 何処で? いや、待てよ……俺は誰にも話してないし、連絡もしていない。ということは――」
俺は立ち上がるとまずは寝室を見渡し、置いている物をひっくり返すように散らかしていった。『それらしい物』が見つからないとなると、次はリビングへ。同じように見渡し、物をひっくり返し、見つからなかったら趣味部屋へ。
俺は監視カメラや盗聴器の存在を疑った。そうでないと説明がつかない。理解もできないし、納得もできない。
「はぁ、はぁ、どこだよ……なぁ、聞いてんだろ? それとも見てるのか? なぁ! なぁ! ふざけんなよ! 卑怯だぞ!」
俺は叫びながら、散らかった物を蹴散らし、壁を殴る。
「ふぅー! ふぅー!」
唸り、頭をかきむしり、また暴れるように周囲を引っかき回す。一時間ほど同じ動きと暴言を吐き出すと、ぜぇぜぇと息を切らし趣味部屋のところで仰向けに倒れた。
「どこだよ、出てこいよ……ふざけんなよ、卑怯だって……」
辛くて、苦しくて、涙が自然と流れた。
「何で、俺がこんな目に……なぁ、聞いてんだろ! 見てるんだろ! だったら、教えてくれよ、俺は、俺は――夢カタルを殺したのか?」
泣きじゃくりながら呟いた言葉に、誰も答えをくれることはなかった。
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