第17話 00Hz mocha
静かな、静かな。
穏やかな草原に吹く風みたいな
そんな世界を夢見ていた。
この星を創ったノワも
その星に辿り着く僕らも。
きっと、ショコラも。
ショコラが消えてしまった星も
ショコラがやってくる前の星と同じ
静かで穏やかで。
でも
穏やかなわけない。
静かなわけない。
心が
これじゃない。
と、そう叫んで耳が破けてしまいそう。
みんな、そうわかっているから、
だから、
僕らはあれからずっと
お茶会を開きっぱなしで
ショコラに繋がる世界を
探し続けている。
ノワは無限にある時空のページを
1ページずつめくって、
白檀の香りを探している。
クレムは渡り鳥たちを集めて、
ショコラの体ごと
迎えに行ける準備をしている。
ラテは僕らが倒れないように
心身をケアしてくれる。
僕は何ができる。
ずっと探している。
調律することしかできない僕に何ができる。
僕は自分のできることを
見つけられないまま
みんなが見回れなくなった星のあちこちを
かわりに見守りに歩いている。
どこもかしこも、
ほんの少ししかいられなかったはずの
ショコラの不在を
嘆いている。
ここへ戻ってこいと
ショコラを呼び続けるオレンジ草原、
どこだどこだと探している言の葉の森、
僕と同じ、
何もできなかったと自分を責める月影の海、
そして、嘆き塞ぎ込んでいる鏡の泉。
オレンジ草原と一緒に
『ここだよ!もどっておいで!』
と叫んでみた。
言の葉の森と一緒に、
やってきた時と同じように
森のどこかに落ちてこないか探し回ってみた。
月影の海と一緒に
何もできなかった、
何もできない自分を責めたり、
慰め合ってみた。
そして
鏡の泉、お話の上手なノワやラテでなく、
僕でごめんね。
でも君の嘆きを聴こうと思っているんだ。
僕はみんなと違って話すのが下手だけれど、
精一杯、鏡の泉の声に耳を傾けてみた。
『寂しくて、泣いているんだね。
ショコラがいないから?
ノワやラテが来れないから?
…違うの…』
どうして嘆いて寂しいと
塞ぎ込んでいるんだろう…
『誰も君を責めていないよ?』
そう、行ってしまうショコラの涙も
一瞬見えた微笑みも、
泉を責めてなんていなかった。
この星のみんなも誰1人、
鏡の泉を咎めてなんかない。
『触れてもいい…?
君の声がもう少しよく聴こえるように…』
指先を近づけると、
泉もそっとこちらに手を伸ばした。
すると、
頭の中に奇妙な光景が浮かんだ。
『白い…森…??これは、どこだ…』
そして泉の声が聴こえた。
(ショコラを
こんなところに眠らせておくなんて
さみしい。
ショコラの帰る場所が
こんなところなんて嫌だ。)
『泉、これは、
ショコラの瞳を通してみた場所なんだね?!』
『泉、お願い。
ショコラが目を閉じて
別の世界に行ってしまっても、
この白い森の景色を忘れないで!
ノワを呼ぶから、
ショコラの眠るこの白い森を
君の綺麗な鏡に映しておいて…!!』
モカと泉は約束を結び、
モカはみんなのところへ走ったのでした。
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