第二章:配信活動、開始
第15話 配信開始
『先日、突如として【アルカイア】の配信に現れた謎の仮面男の正体は未だ掴めておらず──』
今日、やってきたのは秋葉原駅。
駅前のビルの巨大ディスプレイでは仮面男の映像が繰り返し流れている。
「んー、仮面君、もうすっかり有名人だね」
「嬉しくないですね、あまり」
「そうだろうねぇ。でもこれで配信始めれば絶対に伸びるよ」
「そうなんですけど……」
「妹の医療費、稼がないといけないんでしょ?」
天宮さんに言われ、俺は言葉が澱む。
複雑な気持ちだ。
医療費を稼げるのは文句ないんだが、さらに有名になっていく自分を想像して胃が痛む。
なにせ俺は未成年でダンジョンに潜ってる身。
れっきとした犯罪者だ。
それを隠し通しながら有名にならなきゃいけないとか、普通にストレスで死ねる。
「……割り切るしかないんですかね」
「そうだろうねぇ。それに襲ってきた人間もどうにかしないといけないし」
確かに。
あのトラックを運転していた人物。
それが誰だったのかまだ分かっていない。
死体の損傷が激しいのだ。
まあトラックが爆発したのに巻き込まれたのだ。
当たり前だろう。
一応検察にDNA鑑定のようなものをしてもらっているが、まだ分からないらしい。
もうあれから一週間以上も経っているんだけどな。
「とにかく。早く配信機材を買いに行くよ!」
「はぁい」
天宮さんに手を取られ、引きずられるように電気屋に向かう。
どうやら配信機材の購入費は天宮さんが出してくれるらしく、また返さなきゃいけない恩が増えるのだった。
+++
「き、緊張する……」
俺は一人ダンジョンに潜り、仮面を被り、カメラ付きのドローンを前にしていた。
今日は天宮さんは来ていない。
最初は一人がいいだろうと二人で話し合って結論づけた。
天宮さんとの繋がりがバレると面倒なのと、一人ならどんな階層にでも行けるからという理由からだ。
ドローンの上にはディスプレイが設置されており、そこには自分の姿とまだ書き込まれてないコメント欄が見える。
ちなみに天宮さんに格安のスマホも買ってもらい、そのネットワーク回線から配信している感じだ。
人生初スマホ!
流石に手に入れた時はテンションが上がったね。
しかしまた天宮さんに恩が増えてしまい、胃が痛くなるばかりだ。
「よっ、よし! やるぞ!」
俺は震える人差し指を伸ばし、ディスプレイに近づける。
どうやらタッチパネルになっているらしく、赤いボタンを押せば配信開始らしい。
「……ううっ、やっぱり緊張する。やめようかな」
緊張で吐きそう。
そこでふと、病院のベッドで寝ている結衣の姿が思い浮かんだ。
足首の骨折だから歩くのでも精一杯な状態だ。
愛しのマイシスターがそんな状況になっているのを思い出し、俺は意を決して配信を開始した。
視聴人数──0人
まあ、最初はこんなもんだろう。
俺はドローンを追尾モードにして淡々と魔物を狩っていくことにした。
今来ているのは597層。
現状での俺の最高到達階層だ。
しばらく歩き回っていると、最初の敵【スケルトン・ドラゴン】と出会う。
ここは墓地階層だからな。
不死系の魔物が多く出るのだ。
「グガァアアアアアアアアアアアアアアアアァア!」
骨なのになんで声を出せるんだと不思議に思いながらも、俺はサバイバルナイフを手に取る。
……って、これは解説とかした方がいいのかな?
そもそも今、視聴者いるのか?
チラリとドローンの方を見ると
視聴人数──198人
……ん?
んんん?
なんか多くない?
まだ始めたばかりだぞ?
しかも新人だ。
こんなに来るものなのか、普通?
198人って言ったら、俺の通っていた中学校の全校生徒と同じくらいの人数だ。
──これ、本物?
──魔物クソ強そうじゃない?
──俺、この階層見たことない。
──初出の階層なら配信義務を破ってることになるが。
──↑あれは義務ではあるけど、裏道なんていくらでもあるからな。
──おっ、こっち気が付いたか?
なんかたくさんコメントきてる。
俺は恐々としながらコメントに返答する。
「本物って、仮面男の本物だとすれば、本物だな」
俺がコメントに返事をすると、さらに加速していく。
──マジかよ。
──あれだけ正体不明だったのに。
──ホントか?
──やっぱり声、結構若そうだよな。
──おい、後ろヤバくないか?
後ろ?
俺は首を傾げて振り返る。
すると【スケルトン・ドラゴン】が【超級竜魔法スキル:
あー、いきなりこれか。
俺は早速面倒だなと思いながら、【神級付与スキル:
このスキルは相手の攻撃スキルに合わせて特定のタイミングで武器を振るうと、その攻撃を相手に反射することができるスキルである。
ゴウッ! と放たれる熱線。
辺りは一瞬にして熱気に包まれ、ブワリと俺の髪や服が持ち上がる。
それに合わせて俺はサバイバルナイフを振るった。
ギンッという鈍いととともに熱線とナイフがぶつかり、凌ぎ合う。
しかし一瞬の拮抗ののち、その熱線は【スケルトン・ドラゴン】に向かって弾かれ、その身を焼き尽くすのだった。
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