旅行編(後)
船内を少し走って部屋の前に行くときなこちゃんと美玖ちゃんが座って待っていた。
「ごめーん。寝てた。」
「寝てたの?時間ギリギリだよ。」
「うん。荷物部屋に置いてくる。」
カードキーをドアに当てて解錠して持っていた手荷物から財布とスマホだけ持って部屋から出る。
「お待たせ。」
部屋の外で待たせてしまったきなこちゃんたちにそう声をかけて夕食会場へと出発する。今日の夕食は正装で来るようにと先生から連絡が来ていて船内で服が借りられるらしいので夕食会場の近くにある貸し出しのところに向かう。
貸し出しと書かれた看板の前にスタッフが立っていたので声をかけてみる。
「こんにちは。服の貸し出しをお願いしたいのですが。」
「いらっしゃいませ。中にどうぞ。」
スタッフがドアを開けてくれたので中に入ると様々な服がかけられていた。ドレスやタキシード、スーツなどが置かれている。
「ようこそいらっしゃいませ。」
部屋の中にいた別のスタッフが声をかけてきた。スタッフは気に入った服があれば声をかけてほしいとだけ言って下がっていった。
「どれにしようかな。」
「私に似合いそうなのないよ。」
ドレスコードがあるところなんて私は行ったことが無いのでどんな服を選べばいいかわからないでいるとどこかへ行ったはずのスタッフが話しかけてきた。
「お悩みですか?」
「はい。あまり経験がないので。」
「左様ですか。ではこちらへ。」
スタッフさんに連れられて部屋の奥の方に行くと明るめの紫色のドレスがかかっていた。
「こちらはどうでしょうか。」
「かわいいです。」
「よろしければご試着なさってください。」
スタッフさんに手伝ってもらいながらドレスを着た。かがみんで自分の姿を見るとドレスに切られている感じはするもののドレスはとてもきれいだった。
「せっかくなので髪のセットもしてもよろしいでしょうか。」
「お願いします。」
「ではこちらの椅子に座ってお待ちください。」
鏡の前ある椅子に腰かけて少し待つとお昼のスパで会った菫さんがやってきた。
「お久しぶりです。瀬名様。御髪を整えさせていただきます。」
菫さんは私の髪をぬらしたり乾かしたりしながら髪をまとめていき編み込んでくれた。鏡を見ると髪が複雑にまとまっていてどうやったかは何一つわからなかった。
「いかがでしょうか。」
「すっごいかわいいです!」
「よかったです。ぜひ楽しんで行ってらっしゃいませ。」
菫さんにお礼を言ってからみんなのところに戻った。
「ただいまー。」
みんなのところに戻るとみんな服を決めていて髪もセットしてもらったのかすこし大人っぽく見える。
「唯ちゃん髪かわいい。」
「ありがと。」
「シニヨンハーフアップね。」
「そんな名前なんだ。」
「私と同じだもの。」
そう言って後ろを向いた紗雪ちゃんの髪も私と同じように後ろでまとめられていた。紗雪ちゃんのドレスは落ち着いた黒系統のドレスで似合っている。
「ドレスかわいいね。」
「ありがと。唯も似合ってるわ。」
「二人ともそろそろ行こ。」
美玖ちゃんに声をかけられて夕食会場へと向かう。指定された場所に向かうとタキシードを着たスタッフがドアの前で待っていあ。
「お待ちしておりました。どうぞお入りください。」
大きなドアが開かれて入ると様々な料理が並べられていた。先生の姿が見えたので先生のところに行く。
「こんばんは。」
「こんばんは。楽しんでるか?」
「はい。」
「ビュッフェスタイルだから好きなものを取って食べると良い。夜は花火が上がるからそれまでに食べきっておけ。」
「わかりました。」
先生はそれだけ言うとテーブルに置かれたワインを飲んだ。
みんなのところに戻って伝えてから料理を取る。どれも一人分ずつ元からお皿に取られているので取りやすい。お肉とサラダを取って席に戻って食べる。
「こういう雰囲気落ち着かないよ。」
「ドレス着る機会もなかなかないしね。」
きなこちゃんも笑って言う。
「記念の意味もあるでしょうけどね。」
「確かに。」
ドレスを何があっても汚さないように細心の注意を払いながら食べて夕食会場を出た。
「なんかどっと疲れたよ。」
「ね。」
「そうだ。ドレス返す前に写真撮らない?」
「いいね!スタッフさんにお願いしよ。」
スタッフを捕まえて写真を撮ってもらったあとドレスを返しに行った。私は部屋の奥のこのドレスがあったところに行くと菫さんがいた。
「おかえりなさい。どうでした?」
「美味しかったですけど緊張で記憶がないですよー。」
「ふふ。ではドレスを脱がれた後御髪を直させていただきます。」
ドレスを返して元の服に戻ってから椅子に座ると菫さんが髪をほどいていく。今度は複雑じゃないようにポニーテールにしてくれた。
「ありがとうございます。」
「この後もお楽しみください。」
みんなのとこに戻ると紗雪ちゃんだけが残っていた。
「きなこちゃんたちは?」
「二人で見てきていいかって聞かれたから送り出したわ。」
「そうなんだ。じゃあ私たちも行く?」
「ええ。」
「どこで見よっか。」
「屋上でいいんじゃない?」
「そうだね。」
部屋をでて屋上に向かった。岸の方に建物の光がかすかに見えた。あそこから花火が打ちあがるらしい。しばらく椅子に座っていると空に花火が上がり出した。「ドン」という花火の炸裂音が体に響いてくる。青や黄色、いろいろな色が混ざった花火が打ち上げられている。柳や普通の形の花火に加え時々ハート型などの丸くない形の花火も上がる。徐々に花火の勢いが高まっていき大きな花火が空中を埋め尽くすほどの量の花火が打ちあがってぴたりと花火が打ちあがらなくなった。
「終わりかな。」
「そう。」
紗雪ちゃんは少し残念そうにしていた。
「どうだった?打ち上げ花火は見るの初めてでしょ?」
「すごかったわ。次はもっと近くで見てみたいわね。」
「今年はもう花火大会はないから来年行こうね。」
「楽しみにしてる。」
「じゃあそろそろ戻ろっか。」
「そうね。」
屋上から出て部屋に向かう。
「あっ。」
部屋に向かう通路の途中で紗雪ちゃんが小さく声を上げた。
「どした?」
「花火の写真を撮るのを忘れたわ。」
「何枚か撮ったから後で送ってあげる。」
「ありがと。」
部屋に戻ってくると一気に疲れが押し寄せてきた。
「疲れたー。」
「そうね。」
「あ、写真見る?」
スマホのパスワードを解除して紗雪ちゃんに見せる。私は花火を見てる紗雪ちゃんの写真を見せた。
「貴方何枚とったの?」
「わかんない。」
「花火だけの写真はないの?」
「探してみる。」
私の撮った写真はほとんど紗雪ちゃんが映っている。30枚くらいスクロールしてやっと花火だけの写真を見つけた。
「これ貰ってもいい?」
「うん。」
メッセージのアプリに写真を送る。ついでに2,3枚紗雪ちゃんが映っている写真も送っておく。しばらく写真を見ているとカメラに背中を向けて花火を見ている2ショットの写真があった。
「ねえ。見てこれ。」
「ん?いいじゃない。それももらっていい?」
「いいよー。」
こんな写真は取るつもりがなかったけどタイマーで撮れたのかな。2ショットの写真撮るの忘れてたから嬉しい。
「さ、お風呂入って寝ようか。」
「そうね。明日にはもうついてるだろうから。」
お風呂は遠かったので部屋のお風呂に入った。お風呂からは海が見えるらしいが暗くて特に見えなかった。明日は早めに入ろうという話を紗雪ちゃんとしてベッドに入って寝た。
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