第152話 現実とゲームと⑤
そんな話をしていた時、念話が入った。
フレンド登録の念話で、サンちゃん(自衛隊のサンバ)だった。
『カオさーん、ちわっす。今平気ですか?』
『おう、サンちゃん久しぶりだな? 元気か? そっち大変って聞いたぞ?』
『ええ、まぁ、大変っす。色んな意味でマジ大変です』
『そうなの? 聞いた方がいいか? 話したい? 話したらダメなやつ?』
『口外禁止って言われてるけど、もう、どうでもいいかな、話そうかな』
『いや、それ聞いたら俺、命狙われたりしないか?』
『大丈夫……たぶん、大丈夫?』
『や、やめて。多分とか、話さないで』
『ああ、じゃあ、話しても大丈夫なやつと個人的なのを話す、から、聞いてぇ』
サンバがまず語ったのは地下シェルターの自衛隊の現在であった。
富士山噴火でヘリや飛行機が飛べなくなった。日本の西側へ救助に飛んでいた隊員も戻れず、現在は通信も途絶えている。
シェルター内に残っている隊員は、ゲームが繋がっているのでひたすらレベル上げをしているらしい。
『そっちから貰ったエントの情報は凄く助かりましたっすよ』
サンバは自衛隊として国民に対する言葉使いと、俺と言う歳上に対する敬語と、ゲーム仲間にありがちなラフな言葉が入り混じって、変な日本語になっているが、通じれば何でもいい。
『エントに襲われないのと、魔物植物の弱点とか、おかげで徒歩での移動が可能になったですっす』
『そうか、じゃあ今は
『いやぁ、
『足で? いや、俺地理が苦手だけど
『ういっす。富士山の向こうへ行くみたいです。ハマヤんが広島なんですよ、今』
『え、ハマヤん、今あっちなの? 広島って広島県の事だよね?京都よりあっち……の?』
『そうっす。ハマヤんが部隊に付いてあっちに行ってたんですけど、富士山がドカンときて戻れなくなりましたっす。あ、ハマヤんだけならテレポートリングがあるから戻れた、はずなんですけど、上官がハマヤんのリング借りて戻ってきました、んですよ』
『いや、その話、俺が聞いていいやつ?』
『……あ。』
『何、その
『大丈夫大丈夫ぅ……っす。上官の名前とか言ってないし、うん』
『名前聞いてもわからんからどっちでもいいけどさ、リング借りパクされたんか』
『まぁ悪い人じゃないっす。部隊を作って広島へ向かうって』
『富士山越えて? そう言えば富士山って噴火止まったん?』
『それが、今は情報も入らない状態で。どうなんかなー』
『噴火中だったら越えて行けないんじゃないか?』
『いえ、真っ直ぐ陸を横断するわけじゃないっす、ええと
うーん、わからん。地理が苦手な俺には難しいぞ?まぁいいか、俺が行くわけでなし。
『それで、今は
『いえ、俺もテレポリングあるので、色々物資を取りに
『サンちゃん、船持ってるん? 無いならやろうか?』
『いや大丈夫っす。潜水艦を幾つか預かってます。アイテムボックスってマジ便利ですよねぇ。潜水艦持ってますなんて、ポケットに入れてる様な気軽さですよ、ははは』
『確かにな、ははは』
『今、物資の準備待ちなんですけど、もう、あっち行けこっち行け、ソレ持てアレ持て、こうしろあーしろってうっさくてー。しかも上部が一枚岩でなくなってて、真逆の指示もされるしさー』
『あぁ、なるほど、それで疲れて愚痴りたくなったんか』
『ふぅ、はい。すみませんっす。俺、あんなに帰りたかった地球に戻ってこれたのに、この程度で愚痴るなんて、って解ってるんす。だから周りの仲間には言わないけど、カオさんには……カオさん聞いてくれそうで、つい』
『うんうん、聞くくらいなら何でも聞くぞ? 俺も似た感じだ。自分で決めて戻ってきたのに失敗ばかりだな。でも、良い事もある』
『うん、そうっすね』
『…………あのさ、本当は他にも話したい事あるんじゃないか?サンちゃんが愚痴だけ念話とか、ないかなーって』
『う……はい。実は、フジさんが北海道から戻れなくなって。念話が通じるんで生きてますが、フジさんもリング取られちゃって。フジさんから飛ぶ時以外はリングはアイテムボックスへしまえって言われた』
酷いな、3人別々にされたのか。そんでテレポートリングを没収?
ハマヤんが広島、フジが北海道……え?北海道?
『サンちゃん、俺今、北海道だけど、フジって北海道のどこに居るかわかる? 俺は、何だっけ、どこだった?あー、チトセだ、チトセ』
『カオさん、今、
『で、フジが戻れないって何で?どうやって行ったか知らんけど行けたんだからリング無くても戻ってこれるんじゃないか?』
『それが、フジさんも潜水艦で移動したんですけど、乗せて行った隊員を
『もしもしー。カオさん久しぶりです』
『おう、久しぶり、フジ。今北海道なんだって? 俺もだよ』
『ええっ、カオさんも? タイムリーだなぁ』
『フジさん、今カオさんに
『ちゃうちゃう、サンバ、その言い方だと誤解される。置き去りじゃないんですよ。俺らを下ろした後に去ったんですが、潜水艦が多分何かに襲われたようで……』
何だよ、まさか、クラーケンとかリバイアサンに襲われたとか言わないよな?
パニック映画から、ホラー映画経由で、ファンタジー映画???クラーケンってファンタジーか?
『カオさん、誤解してそうだな、リヴァイアサンとかクラーケンなんて出てきてないですから。攻撃はどうも魚雷……っぽいです。どこの国かは不明です……』
『フジさん、それ言わなかったじゃないですかぁ!』
『上から口止めされていたからな。あの時は隊員の混乱を避けるために潜水艦は帰還したと言っていた、が、解る者にはわかってしまったんだ』
『そうだったんだ……。こっちじゃ口減らしで隊員を
『ひでぇなぁ。俺ら捨てられたんか』
口出しをするのが憚られたから黙っていたが、それでもひと言、言いたい。
『でもさ、3人を別々にするのって何か悪意を感じるな』
『それなんですがね、実は自衛隊内部でもかなり揉めました。上が一枚岩どころか三枚にも五枚にも割れてしまって、
『俺達の取り合いみたいのもあったな』
うわぁ、こんな時だからこそ、お互いが助け合っていかなければならないのに、何やってるんだよ!
それにもう一つ、重大な疑問がある。
『それとさ、リング取られて帰還出来ないってさ、誰にいつ取られたん? まさか取ったやつ潜水艦に乗ってたとか言わないよな?』
『…………いや、そのまさか、です。俺のリングを持った上官は潜水艦と一緒に海の底です』
『うわぁ、それってもう……』
『はい。俺のテレポートリングよ、永遠にさらば。くっそぉぉぉ』
『フジ……ご愁傷様、としか言えん。で、俺今チトセなんよ。
『いや、知ってますよ、
『カオさん、
『うーん、どうだろ。直ぐには無理かも知れん。急ぐか?』
『いや急ぎません。無事かどうか確かめたいだけです』
『そうか、今は北広島駅に向かってるんだ。あ、そっちのワッカナイは無事なのか?ワッカナイのどこにいるか分からんが』
『
『食糧とか水は?』
『何とかなってます。サンバがまだリングありますから』
『フジさん、リングはあってもブックマークがありませんよ』
『あの、俺、ワッカナイのブックマークあるぞ?ワッカナイの何処と聞かれると解らないが、そこにサンバを運んでやろうか?そんでサンバがブックマークすれば行き来が出来るだろ?』
『お願いします!カオさん!』
サンバが大声、念話でも大声と言うのか解らんが、デカイ念話で答えた。
『サンちゃん、今3分ほど大丈夫か? LAFのドア前に飛んで来れるか?』
『行けます!』
『あ、待て、こっちも仲間に説明するから5分後にLAF前に飛んで来て』
そこで俺は今の念話をざっとキヨカ達に話した。カイホAに車を止めて貰い、その場所をブックマークした。
マルクとキヨカだけでなくアネも付いてくると言うので、エリアテレポートで4人でLAF前へ飛んだ。
アネは剣に手をやっていた。万が一だそうだ。キヨカも剣と盾を出していた。
LAFの扉前にはサンバが立っていた。やってきた俺見て涙目になった。
サンバを連れて5人でエリアテレポートでワッカナイへ飛んだ。
さすがにそこにフジが居る事は無かったが、すぐにマップで確認をしたようだ。
サンバがそこをブックマークしたのを見て、俺たちは別れた。俺たちは北広島駅手前のキャンピングカーへと戻った。
サンバとフジから念話でお礼を言われた。
俺たちはブックマークの旅に戻った。
内陸部は街があり栄えている場所もあったが閑散と家がある地域も多い。
俺らは寄り道をせず、とにかくブックマークを済ませて行く。
移動中にタウさんから詳細を求められたので、サンバやフジから聞いた話をした。
少ししてから、タウさんから念話が来た。
『カオるん達のブックマークはどのくらいで完了しそうですか?』
『北海道の三分の一が寄れなくなったので、予定より早く終了します』
『そのあと救助に周ろうと思ってるんだ。予定の2週間を使って出来るだけ周りたい』
『すみません……』
タウさんに謝られたので、救助に周るのを反対されたのかと思ったが違った。
『すみませんが、予定のブックマークが終わったら、道内の自衛隊駐屯地のブックマークに廻ってもらえませんか』
『自衛隊の?』
『はい、やはり北海道は広すぎます。地元の力が必要です。自衛隊が一枚岩で動いているのならば、こちらは自分達だけの拠点造りをする予定でした。しかし、どうもフジさん達の話ですと自衛隊も上部と現地では全く別の動きをしていそうですね。我らの拠点造りのためにも現地の情報は必要です』
『すみません、駐屯地の情報を持ってないのですが……』
『こちらで作り次第お知らせします』
『はい、では、その時に取りに伺います』
『カオるん、申し訳ありませんが、もう少し、ブックマークの旅を続けていただいてよろしいですか? エリアテレポートがあるカオるんに頼ってばかりで申し訳ないです』
『いや、全然大丈夫だ』
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます