第142話 函館上陸③
「どうしました? 他に何か気がかりでも?」
「あの……あの、気…がかりとかじゃないんですけど、相談……と言うかお願いがあります! 俺、ゲームのキャラの名前、変えたいんです、なんか勢いで
えぇー……。今更シバタなにがしとか言われても、もう俺の中じゃ
タウさんも少し困り顔でミレさんを見た。ミレさんはボリボリと頭を掻きながら上を向く。
「んー……、ステータスの名前ってつまりゲームのキャラ名だろ? 普通は変更不可だよな。ステータスが消える覚悟で、キャラ消して作り直すとかならありだけど……」
「そこを何とか、お願いしやっす!」
「いや、俺に言われても……、あっ、そうだ。LAFのツルちゃん辺りに相談してみろ。アイツらなら何とかなるかもな」
LAFのつるちゃん……。
「そうですね。
「おう…」
「
流石タウさん、動きが速い。右手と左手のチートを使ったな。(←そんなチートはない)
俺は残った人とカイホさんらも一緒に病院拠点へ、そして戻ったら
もしも名前が変わったらフレンド一覧はどうなるのだろう?自動的にシバタ何ちゃらに変わるのか?それとも
タウさん、カンさん、ミレさん、アネさん、マルクとキヨカだ。
「ゆうごとどうやって連絡を取るんだ?」
「それは大丈夫です。ゆうご君と
そうか、今までは北海道チームと面と向かって会った事がなかったからフレンド登録が出来なかった。
しかし
つまり彼らに連絡の中継点を頼むのか。
「すでに彼ら経由で、私達が
中継点から得た情報で、現在のゆうご一行は
ゆうごの婆ちゃんの薬を探して、薬局を回っているが中々見つからず、現在は人の居ない建物で婆ちゃんを休ませているそうだ。
婆ちゃんは早く病院拠点へ連れて行った方がいい気がする。
ふと、思いついた。
「なぁ、タウさん。ゆうごはテレポートリング持ってるよな? そんで婆ちゃんもリアルステータス出てたんだよな? 婆ちゃんってさ、ここ展望台のブックマークあるかな」
俺の言いたい話の半分くらいでタウさんは理解をしたようだ。
「なるほど! 今すぐ中継点経由で確認してみます」
タウさんがしばし無言になった。そして、俺に向かいニッコリと笑う。
「カオるん、お手柄です。連絡が取れました
「何だ?どう言うこった?」
ミレさんや他のみんなも不思議そうな顔でタウさんと俺を見る。
「ブックマークがあるそうです。展望台の入口ホールに来ます」
そう言って歩き出したので皆もゾロゾロとついていく。
展望台の入口ホールに、ひとりのお婆さんが立っていた。
「ゆうご、いえ、
タウさんがそう聞くと、お婆さんは青い顔をしながら小さい声で返事をした。
そう、ゆうごの婆ちゃんがここをブックマークしているのなら、ゆうごのリングを使ってここまで戻って来れるはずだ。
そして婆ちゃんをまず茨城の病院拠点へと送り、入院させる。
そしてその後にゆうごと合流すれば良いと、考えたのだ。そこまで話さなくてもタウさんは理解したようで、あっという間に中継点やら、病院やらにも連絡を入れていた。このチート野郎め。
俺が婆ちゃんを送って戻る間に、ゆうご達との合流地点の連絡等も終わっていた。
「わかりやすい場所と言う事で
「
「そうですね、
俺らはテレポートした
だが、少し進んでから馬車での移動に変更した。
というのも、火山灰が巻き上がりキツい。しかも後ろを走ると前の馬があげた灰で前方が見えづらいのだ。
それで馬車の中に入っての移動になった。
馬車は俺のサモンの地龍に引いてもらう。馬車の屋根あたりに俺の精霊を出して、馬車には風の膜のようなものを張ってもらった。
言ってみるもんだ。まさか出来るとは思ってなかった。
地図を見るタウさんから方向の指示が来るのでサモンへと伝える。
馬車は結構な速さで進む。広大な北の大地を。
俺はぼんやりと外を眺めながら誰に言うでもなくポロっと呟く。
「俺、世界がこんなふうになる前に北海道を旅してみたかった」
そんな俺の言葉にミレさんが反応した。
「そうだなぁ。俺もだ。いつでも行けると思ってたけど、もうあの頃の日本は無いんだよなぁ」
「そうですね。私も後悔していますよ。もっと早くに時間を作って家族を東京デスティニーランドに連れて行けばよかった。結局ひとつもアトラクションに乗っていないですから。今は海の底かぁ」
そうか、タウさんは家族旅行の最中にあの災害が始まったんだった。
「ワイ浜さ、結局、水は引かないままだったな。デスティニーランドの地下に逃げ込んだ人はどうなったんだろうな……」
「そうですね。換気システムはあっても海中に沈む設計はしていないでしょうね」
「……あのさ、ゆうごのところが何とか目処がついたら、俺ちょっとワイ浜行ってみていいか?」
「……どうするんです?」
「うん。あそこに飛んで、マップ見る。もし、まだ、黄色の点があったら何とか助けられないかな、地下に逃げ込んだ人」
「けどこのマップって、自分がいるフロアの地図だよな? 地下は見れないんじゃないか?」
「あ、そっか……。水中の建物に生き残ってる人が居たらって思ったけど、無理かぁ」
俺の脳裏に焼きついている風景、沢山の遺体が浮いていたワイ浜。少しでも救えたらあの風景を上書き出来るのでは、と思ったりしたんだ……。
「まぁ今はゆうごからの救助要請が先だ。俺達は勇者でも神さまでもない。全部の人間を助ける事は出来ない」
「わかってるんだ……うん、わかってる」
「そうですね、自分の足元をひとつずつ、片付けていくしかないです」
「見て見て、カオるーん、
アネの見ていた側の窓から顔を出した。
ちっさ!
あっという間に通りすぎた。
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