第115話 植物の活発化⑤

 解析スクロールを2枚取り出し使った。



【マジックヘルム】被っている間は魔力の有無に関わらず体力の自動回復が行われる。ただしその速度はかなり遅い。被って寝ると首を寝違える事故がたまに起こる。


【マジッククローク】羽織ってる間は魔力の有無に関わらず体力の自動回復が行われる。ただし踏んづけるなどの衝撃や負担を与えると回復はストップする。羽織ったまま眠るのはお勧めしない。



 微妙な顔になるのを止められなかった。………ゲームと、違う。



「どうしました? カオるん」



 タウさんが目敏く気がついて聞いてきたので、解析結果を紙に書き出して渡した。



「これ……は、ゲームとは若干じゃっかん異なりますね」



 若干と言うかかなり異なるよな?タウさんの言葉にキングジムが反応した。



「ゲームと違う? どう違うんだ? 見せてくれ」



 キングジムと高橋がタウさんの手元、俺が渡したメモを覗き込む。



「どっちも同じ効果なのか、体力回復」


「ジムさん、そこよりほら。踏んづけたらダメだとか、寝違えるとか、ゲームじゃそんな解説は無かったですよ」


「うむ、凄いな。流石さすがは……流石さすがはリアルファンタジー?」



 困ったな。これが使い物にならないともう他はないぞ?アイアンやオーク系は子供には重すぎる。ましてやウィズは非力だからな。



「どうするか……」



 俺が頭を抱えているとマルクが俺の前に立ち、俺に目を合わせてくる。あぁっ!これはおねだりかっ!



「父さん、僕大丈夫だよ? 踏んだりしないし、寝る時はちゃんとヘルムを取るよ? だからお願い、これ使ってもいいでしょう?」


「えっ、あぁ、お前がこれでいいのなら良いぞ?」


「一度他のアイテムも解析すべきですね」


「でもスクロールが足りないんじゃないか? タウさん」


「そこはまぁ大丈夫です。カオるんより大量に預かっています」



 皆が俺に注目していたのに気が付かなかった。俺はアイテムボックスの中を探っていたのだ。

 良かった、あっちの世界に置いてきたと思ったが、ボックスの中に入っていた。


 ほねセット、ボーンヘルムとボーンアーマーとボーンシールドの3点セットだ。ほねセットは3点を同時に使用してこその防御力アップだ。魔物が居ないこちらの世界でシールドは使わないし、2点のみなら役に立たないと思ってた。


 しかし今回、ボックリを投げてくる松にシールドは必須だ。

 俺は出したほね3点セットを憲鷹けんように渡した。



「!!!!」



 憲鷹けんようは声を出さずに大絶叫(?)していた。それからアイテムボックスに入れて今度は声を出した。



「装備!装備!装備!」



 一瞬で憲鷹は、ボーンアーマーとボーンヘルムを身につけて左手にはボーンシールドを持っていた。

 骨で作られたそれは少しだけ世紀末せいきまつっぽさがあったが、まぁコスプレと言われればこれこそコスプレという感じだった。



 骨セットを身につけた憲鷹けんよう、エルブンセットの翔太しょうた、ウィズのコットンローブにマジセットのマルク。

 思いっきり高揚した子供達3人を見て、ほんの少し寂しそうに俺を見るキヨカ……。


 スマン……、流石にナイト装備なんて持ってないぞ?


 ……ん?いやいやいや、あった。ほぼ存在を忘れていた俺のサードキャラ、ドラゴンナイトの初期装備があった。

 もちろん強化は一切していなかったが、防御力はそれなりだと思う。



 俺は悲しそうなキヨカの前に立ちトレード画面を開いた。そして、ドラゴンアーマー、ドラゴンヘルム、ドラゴンブーツ、ドラゴンマント、ドラゴングローブの5点セットをキヨカの画面へとスライドした。


 キヨカの目が大きく開かれる。



「ありがとうございます。カオさん。……装備!」



 キヨカはとても嬉しそうに装備を身につけた。いや、忘れてたくらいの余り物なんだよ、逆にそんな物で申し訳ない。



「ちょっ!何それ、清姉きよねえ!」


「それってまさかDKNですか!」


「未強化の初期装備だけど皮セットよりはいいだろ」


「勿論そうだろうよ、DKNだぞ?皮よりずっと防御力高いぞ」


「派手すぎる!清姉、私より目立つー! それズルい」


「ねぇねぇ、マントの背中のところがまるで翼みたい。飛べるの?」



 芽依めいさんに聞かれて困ったキヨカが俺を見た。



「飛べないぞ、単なるデザイン……だよな?」



 実は俺もよく知らない。思わずLAFのキングジムを見た。ゲーム会社の社員なんだから知ってるだろう?



「いやぁ、凄いなぁ。リアルで見ると凄いですね。えっ?DKNの装備の効果ですか? う〜ん、DKNもあまり人気が無くてシステムも放置気味だったんですよ。しかも初期も初期……5年くらい前の出始めの装備かぁ」


「タウさん、解析スク使った方が早いだろ?」



 タウさんが解析スクを使った結果、アーマー、ヘルム、マントは防御力に長けていた。グローブとブーツは攻撃力のアップだった。

 ブーツが攻撃力?殴る蹴る……のか?



「カオさん、ありがとうございます」



 キヨカは少し頬を染めていたが、嬉しそうであった。……もしやコスプレ趣味が?


 それにしてもアネといいキヨカといい、ゴージャス姉妹だな。ご両親も自慢げな顔で見ている。隼人さんが若干引いた目だな。隼人さんもイケメンだし派手装備が着たいのだろうか?


 他にあったかと、アイテムボックスをさぐる。あぁでも隼人さんはウィズだったよな。あまり重たい装備は無理だろう。

 そうすっと余ったコットンローブ、プラス6のやつを取り出して隼人さんへ渡した。


 隼人さんが固まった。



「あ……、はい。えっ、これを俺に?」


「良かったねぇ、ハヤ兄、私とキヨ姉だけ装備があってハヤ兄にも何かあげたかったけど私持ってなくってぇ。流石カオるん!持ってるねぇw」



 そして、アイテムボックスの中から、オークマント、オークヘルム、オークシールドを出した。

 少し涙目(嬉しかったのか?)の隼人さんはアネに急かされそれらを身につけた。

 真っ黒いそれらは、ある意味隼人さんのイケメン度を150%に上げた。……くっそぅ。



「私たちは、レザーセットで充分です! レザー、良いですね! 妻共々、凄く気に入ってますよ!」



 アネのご両親が慌てた感じで俺に向かって言った。

 美咲もプルプルと顔を振りながらレザーアーマーを振り翳した。



「私も、この皮のやつ、気に入ってるから!他のは絶対要らないわ!」


「私も嫌だからね!コスプレするくらいなら、救助行かない!洞窟で待ってる!絶対着ない!着ないったら着ない!」



 うぅむ。女の子は難しいな。真琴まことは思春期か?



「わかったわかった。タウさん、真琴はまだ10歳だし今回の活動から外していいか?」


「そうですね。そうしてください、ミレさん。真琴まことさん、洞窟での作業をお願いしてもよろしいですか?」


「うん!ここで出来る事をやる」



 良かった。真琴の機嫌が治ったようだ。

 本当に女の子は難しい。マルクが男でよかった。俺に娘の子育ては無理だな。


 と、俺の元にキングジムと高橋と芽依めいさんがやってきた。



「カオさん、まだありますよね? 持ってますよね?」


「そうだぞ?持ってるのはわかってるんだ、大人しく出してもらおうか」


「俺たちは皮では満足出来ない身体なんだ!」



 えっ?えっ?

 いや、キングジムは洞窟で作業だろ?装備いるか?ああでも芽依さんと高橋は防御力あった方がいいよな。


 アイテムボックス内を見てふと気がついた。プラス10コットンローブ、これ余ってるな。

 俺は今『いにしえシリーズのローブだ。古系プラス6までしか強化していないがコットン10とどっこいだったよな?



「マルク、悪いがこっちのと変えてくれ」



 そう言ってローブを渡すと、手元にプラス7コットンが戻ってきた。



「それ、余ってるんすか、俺に貸してください!」

「俺も着たいぞ?」

「私も着たいわ!カオさん、お願い!」



 3人が俺にしがみつく。すかさずマルクが間に入る。



「いやさ、無理じゃないかな? 芽依めいさん確かエルフだったろ? ええと高橋さんとキングジムさんもエルフかDEじゃなかったか?」


「ああ、そうか。ウィズのローブは他の職には着れないよな?」



 ミレさんが思い出したように言い、キングジム達も直ぐに思い出し悔しそうな顔になった。



「あ、でも試しに着てみるか?」



 ローブを手渡したが、やはり3人とも着れなかったようだ。



「それ以外だと……、オークリングメイルとアイアンメイルがある。メイル系は着用出来るのってナイトだけだったか?」


「いや、特に指定は無かっただろ?ただ異様に重たいのでウィズには無理だけどな」


「ああ、そうだった。ただ店売りで高値で買い取って貰えるので倉庫に貯めてた」



 アイテムボックスから出してガシャリと床に置いた。

 芽依めいさんは火エルフだが、まだレベルは高くない。重くて装備しても動くのに苦労していた。


 キングジムはダークエルフで、しかもレベルマックスのGMでもある。STR値もCON値も高いのでオークリングメイルは問題なく着る事が出来た。

 それを見た高橋もオークリングメイルを着たが、重そうであった。



「くっそう、俺のキュリサバのキャラならレベルマックスなのに!マスサバは火エルフでレベル上げを頑張ってるけど、やっと55なんだよ!」



 えっ、はや!もう55なのか。俺のエルフって53、4だったよな?もう抜かれた。

 あっ。セカンドのエルフ。………の装備あった。


 アイテムボックスで『エルブンセット』で検索をかけた。



芽依めいさん、ちょっと」



 芽依さんに声をかけてトレード画面を開いた。そこにエルブンヘルム、エルブンアーマー、エルブンブーツエルブンマント、エルブングローブの5点セットを置いた。全てプラス7まで強化済みだ。



「えっ……」


「俺のセカンドキャラの装備。これ着てみて。ゲームの男性用だけど、あ、そっか美穂みほさんと同じ感じかな。あっちより強化は低いけどな」


「いいんですか?……ありがとうございます!」


「カオるん、いいんか?」


「良いって、俺もウィズとエルフ両方は着れないからな」


「すまんな。有り難く使わせてもらう。借りパクは絶対しないからなw」


「おうw」


「あ、バナナバナナ。確かカオさんとのトレードにはバナナが必要と聞いてます」



 いや、誰?そんなデマを流したやつ。

 すると何故か、マルクと憲鷹けんよう隼人はやとさんが慌ててバナナを持ってやってきた。


 だから、何で!



 タウさんの指示で、洞窟作業として高橋が残る事になり、キングジムがミレさんのチームへはいった。


 ミレさんの埼玉の砂漠は、ミレさん、芽依めいさん、キングジムの3人だ。

 うちハケンの砂漠は、俺カオ、マルク、キヨカ、翔太しょうた憲鷹けんようの5人。

 アネの王家の砂漠は、アネ、両親、隼人はやとさん、美穂みほさんの5人。美咲さんも洞窟での作業になった。うん、無理は禁物だからな。



 あの?芽依めいさん?……何かメチャクチャはしゃいでいませんか?ミレさんに注意をされていた。


 それにしても、これで洞窟の廊下を歩きたくないな。絶対イベントと間違われるよな。コスプレのパレードだと思われる。

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