第101話 マルク、謎の危機

 新血盟の立ち上げ後に早速、血盟合同会議に突入した。今後の活動についてだそうだ。



「まずは血盟内でお互いの職についてしっかり把握してください」



「カオるん、アネの姉はねぇ、方向感覚が鋭いからカオるんの助けになるよ? もう迷子にならなくなるよ」


「おぅ、それは心強いな」


「僕がいるからもう迷子にならないもん!」


「うん? そうだな。頼りにしてるぞ?マルク」


「任せて!ふふ、僕、父さんを助けるね」



 何故か皆が温かい目で見つめる。ミレさんは温かいを通り越してニヤついているようにみえる。

 いいだろ、うちは仲良し親子なんだよ!



「一応書き出しておきます」


 タウさんがそう言うと、有希恵さんがホワイトボードに各血盟を書き出してくれた。


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【地球の砂漠】盟主:タウロ(火ELF)

 有希恵(DE)、美咲(KN)、美穂(火ELF)、キングジム(DE)、剣王子(KN)、したはか(火ELF)、ジョーゲン(DE)、北海太郎(水ELF)


【筑波の砂漠】盟主:カンタ(土ELF)

 翔太(水ELF)、憲鷹(KN)


【埼玉の砂漠】盟主:ミレイユ(DE)

 芽依(火ELF)、真琴(水ELF)


【王家の砂漠】盟主:アネッサ(KN)

 柊一郎(土ELF)、希和(土EIF)、隼人(WIZ)


【ハケンの砂漠】盟主:カオ(WIZ)

 マルク(WIZ)、清華(KN)


【北の砂漠】盟主:ゆうご(DE)

 北野大地(WIZ)、他48名


【陸自の砂漠】盟主:ハマヤ 血盟員不明

【海自の砂漠】盟主:フジ  血盟員不明

【空自の砂漠】盟主:サンバ 血盟員不明


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「現在把握している血盟はこんなところでしょうか」


「タウさん、ゴンちゃんとこは?」


「ゴンザレスさんには一応こちらの情報はスマホのメールで送ってあるのですが、通信の状態があまり良くないみたいですね。その後の返信はありません」


「ゴンザレスさんは確か『猫のまり』でしたよね?」


「あれ?猫のまり…じゃなかったか?」


「いえ、猫の止まり木です。ゲーム内で見かけたら…いえ、ゲームにログイン出来るくらいならスマホでメールを返信してくださるはずです。まぁ、彼に関しては向こうからのアプローチを待ちましょう」



 ゴンちゃん、岡山おかやまかぁ。無事だといいな。



「うちはDE、KN、火ELFと、見事に前衛が集まってしまいましたね。唯一、函館の北海ほっかいくんが水エルフですね」



 ホワイトボード見ながらタウさんが眉間みけんしわを寄せた。



北海ほっかいくんは北海道との連絡係とし血盟に居るだけですので、別物としてカウントしましょう」



「うちは親子だけだと土と水だから後衛専門なってしまいますが、憲鷹けんようくんがナイトなので助かりますね」



 カンさんが憲鷹けんようを見て微笑ほほえむと憲鷹けんようも照れたように笑った。



「俺んとこはDE、火ELF、水ELFで前衛プラス後衛か、バランスいいんじゃないか?」


「そうですね、いい感じにまとまっていますね」



「うちはねー、私がガチ前衛でぇ、父と母が土ELFでガッツリ守ってくれて兄貴がWIZだからもうバッチリだね。私、あばれ放題!」



 アネ……、それはどうなの?

 だが、ご家族はにこやかにアネを見守っている。もしやリアルでもそんな感じだったのだろうか。

 ちょっとだけ隼人はやとさんの額にしたたり落ちる汗が見えた気がした。



「うちは……ウィズ2にナイト1だから後ろから清華きよかさんをふたりでバックアップする感じか? うぅむ、しかし女性ひとりを前に出すのもあれだから、うちは全員後衛って事にしよう」


「いや、カオるん。ナイトの後衛って無いからwww ナイトはウィズと違って元から防御力もそれなりにあるし、攻撃力はハンパないからな。守ってもらえw」


「ウィズと違ってって、ひどっ!」



 確かにそれは否めない。ゲームでは、あくまでゲームではだが、清華きよかさんに前に出てもらうか。



「あ、そうだ。清華きよかさん」


「呼び捨てでいいですよ。キヨカで」


「あ、じゃあ、キヨカ?(←何故か疑問系。女慣れしてないカオ) ええと、俺とマルクには魔法のテレポートがあるから、このリング使ってくれ」


「テレポートリング?」



 俺が出したリングをマルクがジッと見つめた。マルクも欲しかったのか?



「そうだ。複数持ってればマルクにも渡せるんだがひとつしかない。俺らは魔法があるからな」



 そう言って手の平を清華きよかに向けて差し出すと、清華きよかはそこに自分の左手を乗せた。


 あれ?中指と小指には既にオシャレなリングがはまっている。

 空いているのは親指と人差し指と薬指だ。


 流石に、親指と人差し指に指輪はないよなぁ。

 親指や人差し指に指輪をしている人種ですぐに浮かんだのがマフィアだ。映画で観た事がある。ゴッツい指輪を親指とか人差し指にしてるんだよな。


 あと、どこかの田舎の大金持ちの爺さんが人差し指に実印付きの金の指輪をしてるのも見た事があるぞ。


 当然、残った指は薬指である。俺は迷いもせずに薬指にテレポートリングを嵌め込んだ。


何故か一瞬、周りがどよめいた。



「……こそ…薬指に嵌めたぞ」

「……ヒソヒソ…え?結婚指輪?」

「コソ……婚約指輪か」

「マジか……カオるん……」



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 うっかり左手を差し出した清華も清華だが、女性慣れしていない(彼女歴ゼロの)カオが引き起こした大事件であった。

 あと、マルクにはわかってない。


 後に真琴から聞いて驚くマルクであった。

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-------------(マルク視点)-------------


「え?父さん結婚するの? じゃあ清華きよかさんは僕のお母さん?」



 どうしよう……お母さんって初めてだ。どう接したらいいんだ。


 ずっと父さんの事を母さんだと思ってたし、キヨカさんじゃなくてカアさんと呼ぶべきだろうか?


 え?弟か妹が生まれる?

 俺だけの父さんじゃなくなるの?


 ええ……………



-------------(タウロ視点)-------------


 会議は一旦解散にした。しかし直ぐに念話で『ハケン』意外を別室へ呼び出した。



「別案件の緊急会議を開きます」


「あれだな。カオるんの件」


「そうです。カオるんの婚活についてです」


「カオるんって今いくつだっけか? 確かあっちに飛んだ時が49で、10歳若返って39歳から10年あっちで過ごして49になって、こっちに戻るのに10年若返ったから、結局39歳か」


「アネの姉は39歳だから同い年! お似合いじゃない? 姉ってば全然結婚しないと思ったらカオるんみたいなぼやっとしたおじさんが好みだったんだぁ」


「しかし、カオるんは、その……理解しているのでしょうか?」


「えっ」

「え…」

「してないかも?」


「けどねぇ?あなた。結婚しない宣言をしていた清華きよかが結婚する気になったのだから、ここは是非ともカオさんにうちの清華をもらってほしいわ」


「えっ? キヨ姉って未婚宣言してたの? あんなにモテてたのに?」


「まぁそれが原因で嫌気がさしてると言ってたぞ?」



「あの、清華さんはともかく、カオるんは周りで押されると引いてしまうと思うんです。そっと見守った方が良いと思います」



 カンさんの言う事ももっともだ。カオるんはかなりシャイなところがあるからな。それと自己肯定感が何故かかなり低い。自分を卑下して壁を作るところがある。


 だが、このチャンスは逃すべきではないと思う。



「そうですね。カオるんはこれを逃すともう後が無いでしょう。皆で見守りましょう。道を誤りそうな時はこっそりと修正をしてあげるのが良いですね」



「大人って大変ね」

「そうだな、僕は早めに自分で頑張ろう」


 真琴と翔太にこの大人会議は早かっただろうか。いや、カオるんをお手本に頑張ってほしい。

 もちろん、良いお手本としてだ。

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