第2話:的外れな言い分
「全部お姉様達のせいよ。お姉様達が悪いんですもの」
キャロルは言い放った。
「シェリルお姉様もセシリーお義姉様も大嫌い。二人がいるからあたしは軽く見られるってわかっている?」
シェリルとセシリーにしてみたら、言いがかりもいいところだ。
「昔からずっと比べられてきたあたしの気持ちがわかる?シェリルは勉強ができた。マナーは完璧だ。そう言われて比べられてきたのよ。あたしは遠く及ばないって」
遠く及ばないのは努力を嫌う性質のせいではないか。家族一同がそう思う。
「セシリーお義姉様が嫁いできたら、また比べられたわ。優しくて完璧だって。キャロルは見習いなさいって」
ツンと顔を上げて言った。
「あたしの婚約先は子爵家よ。やってられないわ」
この上もない可愛らしい笑顔で続けたものだ。
「でも安心して。ブランドンは婚約を解消しないわ。自分が悪いってわかっているんですもの」
「どういうことになっているんだ?」
呆気に取られていた一同の沈黙を破って、父親が尋ねる。
「だから!」
イライラした調子でキャロルは言い募る。
「あたしがブランドン以上の人を見つけて結婚しても、文句は言わない約束になっているのよ。この年で婚約者がいないなんて恥でしょう?あたしが彼以上の人と結婚が決まるまで、婚約は解消しない約束なの!」
「なんてことを言うの!キャロル!」
母が叱りつけるように言う。
「あなたはもう恥ですよ。だいたいリプセット子爵家との婚約が、どうして成立したと思っているの!?あなたが姉の婚約者のエルネストを公共の場で誘惑したから、セイリン伯爵家との縁談が破談になったからだということを忘れたの?」
「だからいいじゃないのよ!!」
キャロルは半ば金切り声で言った。
「あたしがギャレットに嫁いで、お姉様がセイリンに嫁いでも!!」
「そんな無茶苦茶な」
兄のコンラッドが割って入る。
「何が不満なんだ。あの時はシェリルとの結婚が間近だったじゃないか」
「いいじゃない!あたしが先に結婚しても。そのくらい譲ってくれてもいいじゃない!あたしはアラン・セイリンよりもエルネスト・ギャレットの方が好きだったのよ!」
「話にならない。一体どうしてそうなったのだ」
父が頭を振る。他の者は困惑顔だ。特にセシリーは蒼白な顔で手を揉み絞っていた。
「待って。落ち着いてまずはキャロルの言い分を聞きましょう」
シェリルが宥めた。
「さすがいい子のお姉様ね。そんないい子のお姉様に、あたしがどんなに苦しめられたか教えてあげるわ」
キャロルの言い分は続く。
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