呼び出し ※アルフレッド王子視点

 ある日、父である国王に呼び出された。大事な話があるらしい。何の話だろうか。見当もつかない。


 だが、ちょうどいい。婚約破棄について話し合っておきたいと思っていた。新しい婚約相手も早く探さないといけない。次期王としての大事な責務だからな。


「父上、お呼びでしょうか」

「入れ」

「は、はい」


 父の部屋に入ると、そこには厳しい表情をした父の姿があった。空気が張り詰めている。予想していた雰囲気ではない。そこまで重大な話なのだろうか?


 座っている父の前に立つ。厳しい父の視線が、俺を捉える。居心地が悪い。


「アルフレッド、どうして呼び出されたのか、わかっているか?」

「えっ、と」


 父に問いかけられた。なんと答えるべきだろう。数秒悩んだが、答えは出ない。何となく、そうじゃないかという理由はある。それを言うしかない。


「つい先日の、パーティーについて、でしょうか?」

「……はぁ」


 顔色を伺いながら、俺は答えた。すると、父はため息を吐く。


「そうだ。お前が勝手に婚約破棄を宣言したことについてだ」


 なんだ。合っていたらしい。そのことで呼び出されたのか。ならば、俺からも言っておきたいことがある。


「あ、やはりそのことですか。簡単な報告はしたはずですが」

「簡単な報告だと? お前は自分が何をしたのかわかっているのか?」


 父の怒気を感じる。なんで、そんなに怒っているのか。ちゃんと説明したほうが良さそうだな。


 婚約相手だったアデーレと弟のブレットについて。2人が不純な関係だったことが判明したこと。ダンジョンで、そういう行為をしていた可能性が高いこと。将来の妃として相応しくないこと。


「貴族たちの前で、そんな事を言ったのか?」

「はい! そうしないと、あの女は認めようとはしなかったでしょう。言い訳して逃げたりしないように、事実を公表したんです」

「……」


 すべてを説明した。話を聞いてもらえた。どちらが悪いのか。父は、きっと正しく判断して、納得してくれるはず。だから、婚約の破棄を告げたんだと。


「俺は、アデーレに婚約破棄を告げました。父も認めてください」

「本気なのか?」

「もちろん、本気ですよ」

「……」


 冗談で言うわけがない。すると、難しそうな表情を浮かべる父。もしかして、婚約破棄は認めないつもりか。俺が勝手に破棄を告げたことを怒るだろうか。そうなると面倒だが。


 将来のために、あんな女は早く切り捨てるべき。そんな俺の判断は正しいはずだ。理解してもらわないと困る。


「……わかった。婚約破棄は認めよう」


 苦虫を噛み潰したような表情で言う父。だが、認めてくれた。


「ありがとうございます!」


 よかった。父にも認めてもらえたのなら、あとは手続きを進めるだけ。話は終わりかな?


「待て。まだ話すことがある」


 部屋から出ようと立ち上がる直前に、止められた。まだ何かあるのか? 他に話すことなんて無いと思うが。


「お前の王位継承権を剥奪する」

「は?」


 突然の言葉だった。突然過ぎて、意味がわからなくて、俺の口から声が漏れた。

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