夜のイト

シキウタヨシ

糸は意図にからまり程なくかたく締め上げる



誰にも気持ちを受け止めて貰えないまま

侵入をされないため四方をかたく閉め切った

ここは風も吹かない人工の牢砦だ


自ら閉じ籠ったぼくが

辛抱強くぶつぶつとものを書いている


尺を盗られたので

背中は掻けず

掻痒感に時折背筋が跳ね上がる


静かな中で自らの内に沈んでゆく感覚だけがあり

それは決して

よい兆候でも哲学的な手続きでもない


煙草だけが現実にぼくを引きずり戻す


そうやって危うい浮き沈みを繰り返すぼくは

生来の咽喉のつくりのため

たびたび吐き戻しそうになる


意味のない行為のつらなり


無価値さの増産


だれかぼくを厳しく叱ってくれればいい

この役立たずと

激しく罵ってくれればいい


その通りなのだから


それもまた甘えのうちだろうと打ち消す

繰り返しの功罪

輪環のなかにぼくはいる


そしてゆっくり沈んでいく



/了

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

夜のイト シキウタヨシ @skutys

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る