異世界で俺だけがプログラマー; else //エルス~魔力増加能力を吸い取られ捨てられた。浮浪児のエクストラハードスタートも、なんのその。幸せに生きているうちにいつの間にかざまぁしてた~

喰寝丸太

第1部 子供編

第1章 異世界転生

第1話 転生

Side:名無し

 あー、異世界転生した。

 しかも気づいたら浮浪児だった。

 言葉が分かるのが何よりだ。

 それだけが生きていくすべ。

 しかも推定4歳児。


 エクストラハードスタート。


 転生はこんなで始まった。

 体が痒いので井戸を借りて水を被る。

 そして、雑草でゴシゴシ洗った。

 青臭くなったが、糞尿臭いよりまし。

 ボロボロの一張羅も洗濯する。

 子供だから裸でいても恥ずかしくないと言い聞かせながら。

 今日は晴天だ。

 2時間ほどで衣服は乾いた。

 まだ臭いが、ましになった気がする。

 痒いのもいくらかましになった。

 虫刺されはしょうがない。


 腹が減り過ぎてどうにかなりそうだ。

 露店を見ると盗もうかという考えが浮かぶ。

 だが、今の俺は推定4歳児。

 きっと、大人にボコボコにされるんだろうな。


 働きたいが、どうにもならない。

 露店の値札とか見ると読めない

 そうだろうな。

 予測してたよ。

 エクストラハードだからな。


 数字らしき文字が違うということは異世界かな。

 値札にアラビア数字を使わない地域が地球にあるとは考えにくい。

 なんにしろ生きていかねばなるまい。


 仕事、食、寝床、このみっつをどうにかせねば。

 職安みたいな施設を探す。

 中世だって口入屋はあった。

 きっとここにもあるはずだ。


 ただ、辿り着いても仕事を貰えるかは分からない。

 だが、行かないと。

 踏み出さない限りなにごとも進まない。


 口入屋の施設はすぐに分かった。

 冒険者ギルドと俺は名付けた。

 ただ、中に子供はひとりもいない。

 入るべきか。

 ボコボコにされたらどうしようと躊躇する。


 良く観察するんだ。

 冒険者ギルドの中は掲示板、受付カウンター、酒場がある。

 2階に行く階段もある。

 地下に行く階段も。

 ただ階段に入っていく人はいない。


 きっとそこは普段は使われない施設だな。


「俺様の方が強い」

「じゃあ、修練場で勝負だ。負けた方が飯を奢る」

「いいぜ」


 そう大声で言って、冒険者と思われしき人が地下に降りていく。

 これから勝負が始まるらしい。

 見物に行くのかぞろぞろと冒険者達が後を追う。

 中の冒険者の数はぐんと減った。

 受付カウンターに近寄って、受付嬢に話をするべきか。

 それとも地下の戦いを見に行くべきか、

 どうする?


 この2択が生死を分けるような気がする。

 ぐずぐずしていると戦いが終わって、また元通りだ。

 戦いを見たい。

 好奇心が勝った。

 階段を降りると修練場の観客席に出た。

 すり鉢状に座席があるので、4歳児の体でも良く見える。


 冒険者は賭けをしているようだ。

 胴元役の冒険者が金を集めながらメモを取っている。


「もう始めていいぞ」


 胴元役が声を掛ける。


「じゃあ俺からだ」


 冒険者が的に向かった。


「【マナ10を用いて、火球を作れ、火球よ飛べ、一直線に】」


 呪文が唱えられ、火球が的に向かって飛んだ。

 火球は的に当たらず背後の土塁に当たって消えた。

 魔法がある世界なのか。

 ちょっとワクワクした。

 俺にも出来るかな。

 呪文を覚えるのは骨だ。

 メモ帳と筆記用具が欲しい。


「くそっ、外した」

「今度は俺の番だ」


 またしてもさっきと同じ呪文が唱えられ、火球が飛ぶ。

 今度も外れた。

 ずいぶん命中率が悪いな。

 投げてもなかなかボールは当たらないが、それと同じぐらいか。

 的が小さいってのもあるんだろうけど。


 何度か火球を撃ち、そして見事当たった。

 勝負が終わった。


 俺には冒険者は目もくれなかった。

 殴られるということはないみたいだな。


 そして、俺は階段を上がり、また外に出て中を覗いた。

 6歳ぐらいの子供が入って行った。

 カウンターに近寄って何か話している。

 目つきの悪い冒険者がきて子供の胸倉を掴んで持ち上げ落とした。

 冒険者は笑っている。

 反対に子供は泣きながら出て来た。


 やはり、子供では駄目か。

 修練場の見学は良いのだな。

 よし覚えた。


 食い扶持を稼がねば。

 すきっ腹を抱えて街をうろつく。

 竹林があった。

 ちょっと葉っぱの模様と幹が違うが、まあ良いだろう。

 管理はされているだろうが、1本盗ったところで何にも言われない気がする。


 工作道具は何もなし。

 じゃああれだな。

 俺は竹の葉っぱで笹船を作った。


 それを持って井戸端に行く。

 笹船で童心に帰って遊ぶ。


「あれほしい」


 俺と同じぐらいの子供が欲しがった。


「ひとつお金1枚、いまならもうひとつオマケするよ」

「ママぁ」

「はい銅貨1枚ね」


 一番下の硬貨は銅貨らしい。

 でもやった、金が貰えた。


 露店に行く。

 たぶんパンが一番安いだろうと検討付をけた。


「パンをひとつ」

「お前、浮浪児だろう。金はあるのか」

「これで買える?」


 銅貨を見せた。


「拾ったのか。拾った金じゃ駄目だ」

「稼いだんだよ。物を作って売って」

「嘘だな」


「店主、売ってやったらどうだ」


 助け船を出してくれた人がいる。

 本を持って、モノクルを掛けてたから、学者みたいだなと感じた。


「拾った金は縁起が悪い」

「ほう、自分で金を落としても拾わないのか」

「そりゃ、拾うけどよ」


「道端に金貨が落ちていても拾わないのか」

「いや、参ったね」

「浮浪児にとって銅貨1枚は金貨の価値があるそう思わないか」

「仕方ないな。ほら、銅貨1枚のパンだ」


 パンを手に入れられた。


「お兄さん、ありがと」

「人は論理的に生きなければならない。私の信条だ。礼には及ばない」


 硬そうで不味そうなパンだ。

 井戸水で、パンをふやかして食べる。

 腹が減ってたので極上の味だ。

 少し酸っぱいのも良い。


「マナ10を用いて、火球を作れ。ここまでは覚えているけど、全部唱えないと駄目か」


 全部、覚えるには、また冒険者が勝負をやるまで、笹船で食い繋ぐしかない。

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