葉っぱ
狸人族の長をじっと見ても笑顔のままだった。
この金塊が葉っぱ?
実際に手に取ってみると金塊の割りに軽いようにも思える。
というか本当に軽い。
まるで葉っぱのように軽い。
「これが金塊じゃなくて葉っぱだって事か!」
「最初から葉っぱだと言ってましたよ?」
「確かにそうだな……」
しかしこのそっくり具合、あまりにも似ているために何かしらに使えそうだな、と考える。
もちろん詐欺的な何かではなくもっと有効活用を……。
「相手を騙したらダメだからな」
「我々は騙してなんていないですよ? 最初からちゃんと葉っぱって言ってますし。勝手に勘違いされてますね」
確かに一切嘘は言っていない。
しかしこの見た目だと……な。
「実は重さも合わせることができるのですが、そこまでしてしまうと相手に本物と思われてしまいますから」
「確かにな。この軽さで誤解する奴は早々いないだろうし……」
「でも、これも弱い我らが生き残るための手段でもあったのです。今後は領主様にこの力を有効活用していただけたら、と」
「わかった。使い道を思いついたらそのときは声をかけさせてもらうな」
「ところで、ポゥの言っていた禍々しい気配って何のことだ?」
「えっと、気配は気配ですよ?」
ポゥが代わりに答えてくれるが、さっぱり訳がわからなかった。
「詳しくは私が説明させていただきます。我々狸人族は変化をするときに周囲の魔力を借りるのですが、その際になるべく禍根の残った魔力だと強い力を発揮すると言われているのですよ。ここはそういった負の魔力が強いので魔法を使うにはうってつけなんです」
負の魔力……か。
魔王がここでたくさんの人を吹き飛ばしたもんな。
そんな気配が残っていてもおかしくないだろうな。
「なんかとってもとっても禍々しいですよ。でもあっちのほうがもっとすごいです」
ポゥが指差したのはコリンたち狐人族が住む方の山である。
どちらもおなじように魔法を放った、というかあの強大な魔法に差異があるとは思えないのだけど、でも負の魔力が残留しやすい場所、とかがあったのかもしれない。
「そういえばコリンも集落を見に来て欲しいって言ってたな」
せっかくだからもらった
◇◇◇◇◇◇
簡易的な住居だった狸人族とは違い、コリンたち狐人族の住居は圧巻だった。
見た目は巨大な神社である。
俺が付与魔法を使った木材を大量に使ったからだろうが、それにしても建築の速度が速い。
もしかしたら狐人族はこういった方面に強いのかも知れない。
それなら領地の建築も任せても良いかもしれない。
「領主様、良く来てくれたでありんす」
「これだけの建築を良く短期間に作れたな」
「領主様の木材のおかげでありんす。すごく良いものとは聞いていたでありんすが、あそこまで使いやすいとは思わなかったでありんす」
「いやいや、あれは確かに軽くはなるけどそれだけだぞ?」
「簡単に持ち運べたら好きな建物を作れるのは当然でありんす、これも領主様のおかげでありんす」
なぜか俺のおかげと言うことになる。
「とにかくだ。ここまで出来るなら領地の建築も手伝って欲しいのだが、どうだろうか?」
「それってわっちを妾としてみとめてくれたってことでありんすか!?」
「いや、それはないが、建築の腕は認めたってことだな」
「領主様が中々認めてくれないでありんす。ここはやっぱり既成事実で……」
「ちなみに夜忍び込んできたら追い出すからな?」
「な、な、なんのことでありんすか!? どこぞの狸と違ってそんな下品なことはしないでありんすよ?」
慌てて目を泳がせるコリン。
どうやら考えていたようだ。先に釘を刺せて良かった。
「それで建築を任せることはどうだ?」
「まかせてほしいでありんす。いつか領主様の寵愛をいただくためにやれることは全部やるでありんす」
「その褒美だけは諦めてくれw」
「ど、どうしてでありんすか!?」
「どうしても何も俺には既に婚約者がいるからな」
「妾でいいでありんす!」
「まだそこまでは考えられないぞ」
「今はそれでかまわないでありんす」
コリンが笑みを見せてくれる。
狐人族に頼んだ結果、更に領内の建築速度が加速するのだった。
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【新作を始めました!】
タイトル
『転生勇者は破滅回避のために黒幕として君臨する』
URL
『https://kakuyomu.jp/works/16818093079155755838』
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