星屑の降る夜

徒文

星屑の降る夜

 星屑が降ってきた。

 きらきらとまばゆい光を放ちながら、ころころ回りながら、ゆっくり宙を舞っておりてくる。


 それは冷たい雪のような、甘い金平糖のような。


 ほとんどの星はかたくて当たると痛いのだけど、ときどき、光をこの身にうけられる、恵みのような星がある。


 それを探して、懸命につかまえようとする。

 忘れてしまわないように。

 苦しくならないように。

 いつまでも好きでいられるように。


 痛みばかりに目を向ける人間にならず、物事の良い側面を見られる人間でいられるように。


 そうしているうちにも体は星に打たれ、あちこち引き裂かれたように痛むけれど、それでも、あきらめずに手を伸ばし続けなければいけない。


 なんのために?


 やがて星屑はやんだ。

 身体中がズキズキ痛む。

 星の恵みはたくさん得られたのだけれど、やっぱり、終わってみると痛みのほうが尾を引く。


 これでよかったのだろうか。

 わたしはただ苦しんだだけで、結局、なにも得られなかったんじゃないだろうか。


 長い夜があける。


 この先にあるのが明るい朝なのか、二度目の夜なのかは、まだわからない。

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星屑の降る夜 徒文 @adahumi

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