3.0

YouやKの付く夜


五月です。

小さな銀蠅が、自転車に乗っていると顔に絡みついてなりません。

嫌らしい緑黄色が視界を埋める割合が増えるたびに、肌が湿り気を帯びていて、短い前髪が少しばかり上向くのを感じます。


この所、ワタシの気持ちとしては、どこか定量的な闘いというものにうんざりしていると言いますか。


「まがいものばかり」


「まがいものばかり」


闘いというものは、肌の湿り気を感じることや、ボウフラの作ったボイドに自ら突っ込んでユスリカを食らうことや、沢山の人が死んだ土地へ足を向けて寝ることとか、そういうことと何が違うのでしょうか。多分違います。かなり違います。


闘いというものは、もしそれに恋焦がれているなら、少しはちぐはぐじゃなくてはいけません。


どういうことかと言いますと、闘うために地獄に行く必要は無いということです。目の下に隈を作ることが闘うことではないことを、ワタシは知っています。


「まがいものばかり」


「まがいものばかり」


何かワタシの頭に翻訳機を通してください。

何かワタシの声にノイズゲートをかけてください。

何かワタシの節にねじを通してください。


何かワタシのタバコに火を点けてください

何かワタシの眼の血管の色をなくしてください

何かワタシの何かを掬い上げてください


YouやKさえつかない夜に入る

夕焼け小焼けに日が暮れて

今日もおうちに帰るために

ペダルを漕ぎます!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る