魔力? いいえ呪(祝)力です!

しょうわな人

第1話 転生は突然に

『はーい、皆さんお揃いですね? 居ない人は居ませんか? クラス委員長の早乙女竜也くん?』


 とってもキレイだけど男性なのか女性なのかハッキリしない人が僕たちに向かってそう声をかけてきた。

 っていうかココは何処なんだろう? 僕たちは修学旅行中でバスに乗っていたはずだけど……


 僕の名前は観寺空かんでらそら。中学3年生だ。


『はい、どうやら揃っているようなので今から説明をしますね〜。落ち着いて聞いて下さいね、皆さんはバスの事故によりお亡くなりになりました。今の皆さんは魂だけの存在です。それだと不安になるでしょうから私の神力を使って生前のお姿に見えるようにしております。で、私から皆さんにお願いがあります。皆さん、私の創造した星に転生して下さいませんか? あ、何かをしろとかいう使命はありませんのでご安心を。皆さんが私の星に転生して下さると星の寿命が伸びるんです。今のところ私の星はあと1000年ほどは大丈夫なのですが、皆さんが転生して下さると32人居られるので32000年ほど星の寿命がプラスになるんです。あ、ちゃんと地球の神様には許可をとってありますよ。じゃないと上司にお説教を50000年ほど喰らいますので。で、無理強いはしないので希望される方は右に移動して下さいね。希望されない方はそのままそこに残って下さい。希望されない方はまた地球の輪廻転生の輪に戻ってもらいますから』


 そう聞いてクラスメートの全員が右に移動した。勿論だけど僕も移動したよ。でもどうやら僕には神様も気がついてないみたい……

 僕をいれると33人居るんだけどなぁ……


 それに早乙女くんも僕を忘れてるよね……


 良いんだけどね。


 で、神様の話は続く。


『おお、素晴らしい。皆さん全員が転生希望なんですね。それじゃ私もちょっと張り切っちゃいましょう! 皆さんがご希望の職業になる様に転生させていただきますね。今から1人1人の希望を聞きながら転生して貰います。あ、それと残念ですが記憶については私にはどうする事も出来ないので、地球で生活された記憶を持って転生出来るかどうかは運になりますのでご了承くださいね。と、その前に私の星についてご説明しましょう!』


 で、星についての説明が体感だけど2時間ほど続いたんだ。


 簡潔に言えば、この神様の創造した星は


 文明的には地球の中世ヨーロッパより少し進んでるかなという感じ。

 電気は無いけど魔力による魔道具が家電の代わりにあるらしい。

 動物も居るけど魔物も居る。勿論だけど竜も居る。

 人種、妖精種、獣人種など多岐にわたる種族が居る。転生時に職業と共に選ばせてくれるらしい。

 人種の王国は3つ。妖精種の国は2つ。獣人種の国は1つ。魔人種の国が2つあるらしい。

 魔人といっても他の種族よりも魔力を多く持ち魔法に長けた種族だという。

 自分の能力はステータス画面として目視出来るらしい。



 長い説明だったけど得られた情報は要点をまとめるとこんな感じだったよ。


 で、今は早乙女くんが神様の前に居る。


「俺は勇者になりたいです! 種族は人でお願いします!」


『オーケー、私に任せなさーい!』

 

 ノリノリの神様によって早乙女くんが僕たちの前から消えた。


『はーい、次のひとー』


 で次々とみんなが希望を神様に伝えて転生させられていく。いよいよ僕以外は残り1人となった。


『はい、貴女で最後ですね〜。松寺空まつでらくうさん。貴女はどんな職業を望みますか?』


 神様にそう聞かれたしくも僕と同じ名前だけど読みが違う松寺さんは言いにくそうに神様に言った。


「あ、あの私で最後じゃないです……」


 僕の事を言ってくれてるよ。でもその声は小さくて神様にも拾えなかったみたいだ。


『おおーっ! 分かりました、松寺さん! 貴女はラスボス最後になりたいのですね! ようし、最後の貴女にはサービスしちゃいますよーっ! 体力、魔力は限界値突破! レベルも普通の魔人だと99までしか上がりませんが、貴女は999まで上がります! それでは私の星で好きなように生きて下さいねーっ!』


「えっ!? あ、あの、ち、違いま、す……」


 その声も小さすぎて神様に聞こえてないよ、松寺さん……


 そうして松寺さんも転生していき、いよいよ僕の番となったんだけど、神様はテーブルとイスを取り出して優雅にお茶を飲み始めたんだ。

 僕しか残ってないけど神様にまで気づかれないって……

 僕は勇気を振り絞って神様に声をかけたんだ。


「あの、神様。最後に僕が残ってるんですけど……」


 僕の声は神様にちゃんと届いたみたいだ。

 でも何故か目の前に居るのにキョロキョロしてる神様。


『空耳かな? 最近は過労気味だったからなぁ…… ホントにあのクソ上司の所為で今回も押し付けられちゃったし……』


 いや、目の前に居るでしょっ!? ってか神様にも上司、部下の関係ってあるんだね。神は人を自らに似せてお創りになったって言うから人に上司、部下の関係があるのは当たり前なのかな? 


 ってそんな場合じゃないや!?


「あの、神様。僕、観寺空が最後になりますっ!!」


 やっと神様と目が合ったよ。って神様が固まってるよ?


『きっ、君は誰だいっ!?』


 アレ? さっきから言ってるのに分かってくれてないのかな?


「僕はさっきの32名のクラスメートです」 


 僕の言葉を聞いて神様が慌て出す。


『えっ? 居た? 居なかったよね? で、ホントに? あちゃー、ホントなんだ。不味い、時間が無いよ!! えーっと、ゴメンね。時間が無いから君は付与士って事で。大変だろうけど頑張って生きて!! っと、でもそれだけじゃダメだから【魔力】量は多めにしておくよ、それと言語理解に不思議箱もオマケにつけておくよ。コレで何とかして生きてね』


 クラスメートたちの時には気づかなかったけど、神様が自分の目の前にあるボードに僕の職業なんかを打ち込んでいってる。凄いタイピングスピードだ。


 って、アレ? 【魔力】って言ってたのに【呪(祝)しゅ力】を押したよ、神様? 


 まっいいか。どっちでも同じなんだろうしね。


『と、とにかく時間が無いから君はコレで転生してもらうから。ゴメンよ、気づいてあげられなくて。それじゃ良い人生をーっ!!』


 っていう神様の声を最後に僕の意識は途切れたんだ。 


 最後のソラが転生した後に慌てていた神はやっと落ち着けるという風にイスに座り直し茶を入れ替えて飲み始めた。


『いや〜、まさか私が気づかないなんて…… そんな人が居るとは思わなかったよ。さてさて時間が無くてつい付与士にしてしまったけど可哀相な事をしてしまったなぁ…… まあ魔力量を多めにして上げたからゴリ押しすればバフもデバフもかかるようになる…… かも知れない…… うん、ここはもう考えるのを止めよう。観寺空くんに幸あらんことを……』


 そう祈ると神もまたその場から消えた……

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