作業用小説 聖騎士カッスオドルとボエボエウスの旅

ズルロウ

第1話 竜王を討つ旅の始まり

聖騎士カッスオドルは数多の骸を越えし勇者、ボエボエウスは数多の屍を作りし闘士である。

二人は王より命令を賜り竜王を討つ旅に出た。カッスオドル(以下、カス)は武器を欲しがったがボエボエウス(以下、ボエ)は防具を欲しがり二人は決別した。あれだけの夜を誓い合った仲は一瞬の内に瓦解した。


「我、カッスオドル。今こそこの剣の輝きを一閃の中に瞬かん!」


カスは鍛えてこなかったのでレベルが足りなく、街の周辺にいるモンスターの赤子に手を捻られた。イテテテテテ!


「我、ボエボエウス、この盾を以て日の光を集約し彼の者を焼きサン!」


Sunの輝きが盾から放たれる。水が凝固し練り固まった神秘的なモンスターに命中し、蒸発していく。


旅の始まりはこうだ…… カスは傷を治癒する薬草が欲しかった。長年受けてきた誹謗中傷による顔面の打撲は薬草で治るものではなかった。しかし彼の心に安らぎを与えるには十分だった。必要なものは、愛である。


「ボエ、大丈夫か!?やはり俺のように武器を買った方が有用だったようだな。」


「悪いな…既に足に矢を受けて血の気が引いている。見ろ、もう真っ白だ、この石膏は高く売れる。」


苦し紛れに矢を放つボエ。速すぎたそれはどうやら時を越えて自らの足に撃たれたようである。


「許されない!!!こんな事は認められない、あってはならぬ!俺は激怒した。もはや奴は既に人ではない!!この苦しみを見ろ!ボエはもう歌うことも泣くこともできない!泣かしていたのは俺だが。この7分の1でも、奴に彼の苦しみを与える事を石に誓わん!!」

カスは石を蹴り飛ばした。これで誓いはなくなった。カスは自由を手にしたのだ。


だが石は予想外の方向に飛ぶしかなかった。何の因果か、カニのモンスターに当たってしまったのだ。二人は旅立ったばかり、海のモンスターは四つ程先のストーリーで出会すものだ。


「これまずいな」「ああ」

カニのハサミはカスとボエの装備を容易に砕いた。せっかく王から貰ったなけなしの金はカニの餌になったのだ。最も、直に餌になるのは彼ら二人だが。

「全力逃走!散!」「盾はお前な!」


逃げるカスを掴み、カニに放り投げるボエ。あれだけ誓いに誓い合った仲はカニの前ではなす術がなかった。


カスの身体がハサミに捉えられる。血が吹き出し味噌が涌き出てくるみが割れる。カスは後悔した。なんでこんなやつと組んだのだろう、もう少しいい相手はいなかったのか?道端の路傍の方がまだましである。叶うなら、ボエと出会ったあの日に戻りたい──



『──その願い、叶えよう』


神だ。神の啓示である。勝った、これは勝ちフラグ。

『神は言っている、ここで死ぬ定めではないと。汝、力が欲しいか──?それとも、金の鯉か、銀の鯉か?────』


─────全てが欲しい。



カスは全てを手にした。この力があれば竜王を討つ事ができる。とりあえず指パッチンで弾いた自身の味噌で竜王を城ごと破壊した。


本懐はここからである。吸収した時間の中から未来の武器を編み出す。二丁の拳銃がカスの手に現れる。


「弾丸!!フルスロットル!!!!!」


右の銃から凶弾が放たれる。左からは旗が出た。ボエは未だにカニに襲われる時空に生きている。躱す術は無いはずだった。


「うぅぅぁぁあああああぁ!!!」


ボエの心臓の一点を弾丸が貫く。空いた穴を二、三発がそのまま通り抜ける。なので幸い一発のダメージで済んだ。


「十分!」ニヤッ


ボエは倒れた。死因は…ショック死か失血死。悲願は達成された。カスは末代まで栄光の道を辿る事になる。


『──代価』


えっ?


『──代価、力の代価である。お前の目的は果たされた。代価を払う時だ。』


──何を──言ってるか──僕分かんない─────


『代価は…………お前の死。』


カスの墓が建った。



──全滅。DEAD END


ボエ「お前のせいだろ?金が半分になったんだが?」

カス「申し訳ない…つ、次こそは……」

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