第7話 装備を整えて
雑貨店の店内にはリュックやポーチのほか、火打石や松明などが売られている。
「うわぁ……」
俺が知る雑貨とは明らかに違っていて、俺はきょろきょろと視線を巡らせた。
大きな窓があって、外から光が差し込んでいて店内は意外と明るい。
「とりあえず、リュックと、巾着と……ウェストポーチはあると便利だけどどうする?」
背後からアレクシアさんの声がかかり、俺はあわてて振り返る。
「リュックはわかるけど、巾着って何を入れるの? ウェストポーチは?」
「巾着はリュックの中の荷物を仕分けるのに使うのよ。ウェストポーチは貴重品の持ち運びに便利よね。両手が空くし、肌身離さず持っていられるから」
「へぇ、そうなんだ」
そういえば着替えとかって必要だよな。そういう話題なかったけど、洗濯ってどうしてるんだろ……?
風呂ってあるのかなぁ。
「あと水筒でしょ? とりあえず、次の町に行くのに野宿することはないだろうし、私がもっているから松明とか火打石は大丈夫でしょう」
と言い、アレクシアは必要なものを手に取っていく。
リュックに巾着を三つ、ウェストポーチに水筒を二つ。それに革鎧を買い、合計で四百七十三デューカになった。金貨一枚に銀貨三枚、銅貨三枚を支払い、俺たちは雑貨屋を出た。
次に服屋に寄って下着やシャツなどの着替えを購入し、次に鍛冶屋へと向かった。
にしても雑貨屋で全部揃いそうなものだけどそうじゃないんだなあ。
服屋に鍛冶屋、ガラス職人もいるらしい。
細分化されてるんだなあ。
鍛冶屋に行くと、青年が店番をしていて包丁を研いでいた。
店内の多くは包丁や金属の食器のようだった。
剣や斧もあるけれど、そんなに数はなさそうだった。
なんていうか……ゲームの最初の村って感じだ。
「ああ、アレクシアさん、いらっしゃい!」
青年が顔を上げてにこっと笑う。
「トーマスさんこんにちはー! ショートソードと、弓矢と矢筒が欲しいんですけど」
フレンドリーな様子でアレクシアが言うと、鍛冶屋の青年は立ち上がって言った。
「人間を連れていらっしゃるなんて珍しいですね。もしかして以前から言っていた旅に出ることになったんですか?」
「そうなの! それで彼と知り合って、一緒に行くことにしたの。だから装備を整えたくて」
「そうなんですね。ひとり旅もよいですけど誰かと一緒の方が心強いですね」
「そうなのよ、私じゃあ人の常識がわからないことあるから」
青年、トーマスは話をしながらショートソードと弓矢を用意していく。
「弓ですけど、ロングボウとショートボウどちらがよろしいですか? 主な利用目的で変わりますが」
「そうねえ、ユーキ、どちらがいいと思う?」
トーマスさんが用意してくれたショートボウとロングボウ。全然大きさが違う。
和弓に近いのはロングボウの方だ。和弓は二メートル以上あったと思うけど、ロングボウはそれよりもけっこう小さい。
ショートボウはそれよりも小さい、一メートルくらいだから扱いやすいだろうけれど威力は劣るだろうなぁ。
「じゃあ、ロングボウのほうで」
するとトーマスさんは、
「わかりました」
と言って用意してくれた。
「えーと、二百七十デューカです。ご安全に」
と言って、トーマスさんは祈るようなしぐさをした。
いっぱい買い物したなぁ……
ほくほく顔で俺たちは宿屋に戻ると、宿のカウンターにたくさんチラシが置いてある事に気が付いた。
よくある観光案内みたいなやつだろうか。
俺は荷物を抱えたままそのチラシを見た。
川に丘、牛などが描かれているそのチラシを手に取ると、絵が浮かび上がり立体になった。
鳥が飛び、牛が草を食み、川の水が流れていくのがわかる。
「え?」
なんだこれ。チラシ……だよな?
すげぇ……チラシの絵が浮かび上がるってどうなってるんだ? 魔法なのかな。
「ユーキどうしたの、チラシなんて見つめて」
背後からアレクシアに声をかけられて俺は、チラシから目を離さずに言った。
「いや、こんなチラシ初めて見たからすごいなー、って思って」
「そうなの? 観光のチラシはみんなそういう感じよ。特殊なインクで描かれていて、各町で趣向をこらして作っているからコレクターもいるんですって」
そりゃコレクターも出てくるだろう。だって、不思議だし綺麗だから。
「あれ」
よく見ると、川で石を拾っている人がいる。川に何かあるんだろうか。
「ユーキ、荷物おいてきたら食事にしましょう」
「あ、うん、わかった」
俺はチラシを持ったまま、荷物を抱えて部屋に向かった。
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