<改良版>能力者たちのデスゲーム

虹空天音

プロローグ

 薄暗い部屋の中。

 何かの機械が動く音と、たまに光が点滅している。


「アハハ、意外とゲート突破するの簡単だったんじゃない~?」


 顔がよく見えない中、ツインテールのような髪型をした人物が、大きな声で笑っていた。


「ちょっと、声が大きいと思いますけど……」


 外にはねた髪と、首にかけたリング。リングにつけられているネクタイのような布。

 そして、一番の特徴は、右目に黒色の眼帯をつけていること。


「えぇ? 別にいいでしょ。ここには『裏』しかいないんだからさー」

朱裏あかりさんはそういうところが緩いんですよ…」


 ボソッと端でつぶやいたのは、「声が大きい」と注意した男子によく似た別の男子だ。


 違うところがあるとすれば、ネクタイのような布がついた場所が足、眼帯が左目、少しだけ目つきがきついこと。


「もー、何か言った⁉ みんな神経質なんだからー。緊張するから少しくらいしゃべってたっていいじゃん!」


 はーっと息を吐き出して、朱裏あかりと呼ばれた女性はドスンと腰を乱暴に下ろした。


朱裏あかりさんもすねないでください。確かに緊張はしますが、きっとうまくいきますよ」


 優しく語り掛けるように話したのは、奥に一人で立っている女性。

 足元がさらに暗く、何故か全く足が見えない。


 銀色の長髪も、闇から現れては消えている。


 朱裏あかりは警戒したようにその女性を見て、プイッと視線を再び外した。

 それを見てクスッと笑う声が聞こえる。


歌梨菜かりな、やっぱりあっちはごたごたしてるね」

「いつものことでしょ、わざわざ笑わない方がいいよ、真梨菜まりなお姉ちゃん」


 適当に「それもそうだねー」と笑いながら返事を返したのは、姉の真梨菜まりな

 肩をすくめ、目元に真っ黒な仮面をつけているのが妹の歌梨菜かりなのようだ。


「はぁ、どいつもこいつもうるせぇな……」


 ため息をつく荒っぽい男性もいる。

 その横で、パーカーのフードを深くかぶった女性は、ボーッと空中を見つめていた。


 そんな時。

 ザザッという音の後、モニターに光が灯る。――黒い人影が映っている。


 一斉にその場の全員が黙った。

 荒っぽい男性も立ち上がり、姿勢を正す。


 何かの機械音と共に、バサッと紙の落ちる音。


「部屋に指示を出した。各々部屋から自身の役割を果たせ」


 紙の内容を全員が確認する。

 そして、音もなく皆部屋へと直行した。


 全員、同じ思いで。


 ――準備はできた。

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