保健室の先生に召使にされた僕は気づけば学校中の女子たちと仲良くなっていた

結城 刹那

プロローグ

第1話:祝入学。早々に保健室。

 今日から新しい学校生活が始まった。

 

 高校の入学式。

 大事な式にも関わらず、僕は目眩を起こし、泣く泣く保健室に行くことにした。


 今までの経験上、あのまま式を続けていれば倒れることは間違いない。倒れて目立つよりも保健室に行って目立つほうが印象は悪くないと思った。


「あれ……誰もいない……」


 保健室に来たものの部屋には誰もいなかった。

 ベッドで少し横になれば回復するだろう。わざわざ先生を呼んで診てもらうものでもない。


 ベッドは全部で三つ。それぞれがピンク色の布で仕切られている。

 僕は一番奥のベッドまで足を運ぶと、スリッパを脱いで倒れるように寝転んだ。


 目を瞑って眠りにつこうとする。

 だが、意識は朧げなままをキープし続けていた。僕の持つ睡眠障害の厄介なところだ。眠いにも関わらず、一向に寝付けない。


 ガラッ。

 ようやく寝付けそうだと思った時、不意に部屋の扉が開く。

 それによって意識が半分覚醒してしまった。


「はぁ……暇だな……入学式早々に保健室に来る奴なんていないだろ」


 聞こえてきたのは女性の声だった。

 大人の女性特有の色気のある声音。保健室の先生が帰ってきたようだ。


 声をかけようと思ったが、半入眠状態の今は体を動かすのが辛かった。

 このまま寝ていればいずれ気がつくだろう。楽観的に考え、再び睡眠に注力する。何も考えず、呼吸のみに意識を集中させた。


「暇だからゲームの続きでもやりますか。昨日は良いところで終わっちゃったんだよな」


 女性がそう言うと、こちらに向かってくる足音が聞こえる。

 その音は途中で止まり、次には椅子を引く音が聞こえる。自分の記憶を辿ると部屋の真ん中に作業机があったように思える。


「あれ……イヤホンがねえな……職員室に置いてきたか。まあいっか、どうせ誰も来ねえだろうし、来たら切ればいいしな」


 話がまとまったようで物を置く音が聞こえる。

 電源の入る音からパソコンを起動したのだと分かる。それからマウスのクリック音がパチパチと聞こえる。


『流されたのはエロ漫画の設定にありそうな島だった件』


 可愛らしい女の子のボイスが部屋に小さく響き渡る。女性は「音量デカすぎたか」と焦る様子もなくボリュームを下げていった。


 なんていうタイトルのゲームをやろうとしてるんだ。

 僕は顔も知らない女性に思わず呆れた。それが良かったのか僕は意識を奪われようやく入眠することができた。

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