灼熱のアギルナ(後編のみ百合要素)

夢月みつき

前編「炎と少女とアンデッド」


 登場人物紹介

 主人公・魔闘家まとうかアギルナ

 炎を操る魔闘家の少女

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 ヨルズ大陸に存在する、ヒョルナの街に一部の人々に“灼熱のアギルナ”と呼ばれる旅の魔闘家の少女がいた。


 年齢は、17歳。炎を思わすような、赤いロングヘアーと赤の瞳を持ち、黒きマントを纏っている。そして、遠り名どおりの炎の技の使い手だった。



 ヒョルナの街には、夜には出歩いてはならないと言う決まりがあった。

 それは、夜になると街の近くにある墓場に巣くっているアンデッド達がさまようからだ。

 アギルナは街の町長から依頼を受けている冒険者ギルドで、その存在を知った。




 アンデッド達を操っているのは、親玉のスベスベマンジュウゾンビだ。

 彼女は、夜になるのを待って、墓場の方へと歩みを進める。



「――そろそろ、出て来る頃ね」

 アギルナは全身に闘気をみなぎらせる。


 ズズズ……ズズズズ


 不気味な音を立てて、何体ものアンデッド、スケルトン達が地の底から這い出て来た。

『コカカ、カカカカカッ』

 


 スケルトンは、むき出しの朽ち掛けている歯をカチカチと鳴らしながら、アギルナに襲い掛かって来た。


「ふっ、あんた達じゃ、役不足よッ!」

「ファイア・アーマー装着!」


 彼女がそう、告げると首のチョーカーに付いている赤の宝玉から、まばゆい光が生まれ一瞬にして、アギルナを包み込んだ。紅蓮の炎が集約され体に形作られる。



 そして、次の瞬間には、炎の化身のような真っ赤な煌めくビキニアーマーが、彼女に装着されたのだ。



 それは、アギルナのたわわな果実のような胸と、ビキニの部分を覆い隠すのみの特別製のセクシーなアーマーだった。

 そして、利き腕の右手には炎を模したナックルの武器が装備されている。



「行くわよッ!アンデッドども、ファイア・ナックル!」

 アギルナは疾風のごとく素早く駆け抜けると、燃え盛る炎を纏った拳の連撃と回し蹴りで攻撃し、スケルトン達を冥府へと送り返して行く。


 アギルナ・AIイラスト

 https://kakuyomu.jp/users/ca8000k/news/16818093076560026871


 街灯と月明りが照らす、この闇夜の街に赤赤と燃える炎の鮮烈な熱気と色がゆらゆらと揺らめく。

 アンデッドを一匹残らず、地に返したアギルナは、冒険者ギルドから依頼された墓場のスベスベマンジュウゾンビと対峙した。



 そいつは、まるで肉の塊のような醜悪な姿をしていた。

 しかも、それが腐敗して何とも、言えないような嫌な強い死臭を漂わせているのだ。

 アギルナは、あまりの臭いと不気味さに吐き気を覚えた。



 しかし、油断はしてはならない。戦場での油断は死に直結する。

 あまり、時間も掛けていられない。

 

 その瞬間、ゾンビは口から緑色の唾を彼女に吐きかけた。

 それをすんでの所でかわす、地面に落ちた唾は何と、地面を大きくえぐるように溶かされていた。



「これは、酸ッ!」


 当っていたら彼女自身も溶けていた。

 アギルナは、冷や汗を流して相手を見据える。

 次々と吐きかけられる酸の唾、避けながら攻撃のチャンスを伺う。



「くっ……なかなか、厄介かもね!でも、動きは鈍い、この唾さえ気を付ければ」

『がああっ――!』



 業を煮やしたゾンビが、脂肪のたっぷり付いた巨体を震わせ、デカい拳でアギルナを攻撃する。

 

 とっさに両腕を交差クロスさせ、守りの闘気を纏い衝撃にそなえる。

 しかし、避ける間もなくアギルナは吹っ飛ばされ、墓石に直撃した。



 墓石は崩れ、彼女の柔肌は傷ついてあちこちから、血が流れている。

「くううっ……いたっ、油断した!」



 闘気が集まって出来ている、赤いビキニアーマーが消えかかって、瑞々みずみずしいたわわな果実があらわになる。魔闘家アギルナは頬を染め、乙女の恥じらいを見せながら



 ゆっくりと立ち上がると、ふたたび体に闘気を纏わせ、ファイア・アーマーを纏いなおした。


「今度は油断しない!いくわよ」


 彼女は、素早く走り抜けるとゾンビの後ろを取り、ナックルを叩き込む。


 しかし、その刹那、スベスベマンジュウゾンビは後ろにいるアギルナを首を180度回して白く濁った目で見ながら、にたりと、笑った。

 


 背筋がゾッとして、体制を整えるために飛びのこうとする。

 しかし、彼女の右腕は腐敗したぶよぶよの体に取り込まれて、動かない。


 にたにたと不気味に笑うゾンビに足も使って、必死に腕を抜こうとする。

「くっ、抜けない!このおっ」



 そのうち右腕は緑色の煙を上げ始めた。

「うっ、私の右腕が溶け始めている!?」

「あああ~!!!」


 激痛に脂汗を流し、顔をゆがめて、悲鳴を上げるアギルナ、にやにや笑うゾンビ。

 ゾンビは、かぱあ……とでかい口を開け、アギルナを食おうとしてきた。



「な~んてね。私を食べられると思ったら、大間違いよ!おマヌケさんっ」

 ゾンビの顔が醜く歪む。

 

 ゴウッ!


 アギルナの体が、灼熱の炎に包まれる。

 炎が、めり込んだ右腕からも発せられ、ゾンビ体内が高温となって苦痛に顔をゆがませ、巨体を揺らして振りほどこうとする。



「このアーマーには、私の炎を増幅させる魔力がこもってるの。あんたに勝ち目はないわ!」


「はああああっっっ!!!!」

 

 ――ファイア・クロー《灼熱の鋭利な爪》――

 

 ザヴッ!

『ギャッ!!!』



 彼女の体から、炎の爪が伸びてゾンビに突き刺さり、身動きを取れないようにする。

 アギルナは、燃え盛る爪をスベスベマンジュウゾンビに一気に叩き込んだ。

 ゾンビは、その衝撃で吹き飛びそのまま、燃え尽きて消し炭となった。



「ふうっ、今回はちょっと、ヒヤッとしたけど。結果オーライねっ!」

「さっ、明日の朝、ギルドから懸賞金をもらって、また旅をつづけるわよ」

 


 アギルナは、少女らしい無邪気な笑顔を浮かべると、宿泊している宿屋へと戻って行った。


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 後編に続きます。

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