就寝前は、ベランダで。

朝田さやか

1.記念日

 ――知ってる? あの星、見つけた人が奥さんの名前を付けたんだって。


 付き合って三年目の記念日の夜。寝る前に二人でベランダに出て、いつものように肩を寄せ合って星を眺めているとき、徐に北斗が空を指さしてそう口にした。


 まだ寒さが僅かに残る春の夜の中で、その声だけは熱を帯びていた。耳たぶを掠めた音はさらに熱を増して、私の中に入って声になる。


 続いた声が私を包み込む。横に視線を移せば、空に浮かぶどの星々よりも輝く笑顔が、私だけに向いていた。

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