第8話 過去の遺産

夜が更けると、三人は囲んだ火を中心に座り、明日の計画を詳しく練り上げた。誠一郎は、「明日、私たちはこの建造物の最も神聖な部屋である星の間に行き、そこで古代の儀式を試みます。星の間は、この建造物の中でも特に重要な場所で、古代文献によれば、時間を操る力が最も強いとされています。」



カムイはその計画に頷き、「その場所は、長い間、私たちの一族によって守られてきました。しかし、今こそ、その秘密を解き明かす時が来たのです。」と力強く言い切った。



アヤは二人の男性に心強い支援を提供しながら、「私も何かお手伝いできることがあればします。私たちの先祖が残した知識を、誠一郎さんのために使えるといいですね。」と笑顔で話した。



次の朝、彼らは建造物の深部にある「星の間」へと向かい、そこで時を超える鍵となる禁断の知識を解き明かすための儀式を行うことになる。



朝日が古代の建造物の隙間から漏れ込む中、誠一郎、アヤ、そしてカムイは「星の間」へと続く薄暗い通路を進んでいた。壁には年月を感じさせる彫刻が施され、その神秘的な模様が彼らの足元を照らしていた。



この通路は、何世紀にもわたって多くの秘密を守り続けてきたかのように、静かで荘厳な雰囲気を放っていた。




誠一郎は手に持った古文書の地図を確認しながら先を急ぎ、カムイがその肩越しに指示を出していた。



「もう少しで「星の間」に到着します。この部屋は、天体の位置が地上のエネルギーと完全に一致する場所に建てられており、古代の人々はここで時間を操る力を利用していました。」



アヤは彼らの背後で静かに松明たいまつを持ち、その光が通路を照らす中で考え事をしているように見えた。



「この場所が再び私たちの村の歴史にどのような影響を与えるのか、そして誠一郎さんが安全に帰れることを心から願っています。」彼女の声には期待とわずかな不安が混じっていた。



通路の終わりに巨大な扉があり、その重厚な木の扉には精巧な天体図が刻まれていた。カムイがゆっくりと扉を押し開けると、中からは眩い光が溢れ出た。




彼らは一歩一歩慎重に「星の間」に足を踏み入れ、その壮大な光景に息を呑んだ。



部屋の中央には大きな円盤があり、その周りには金属と宝石で飾られた複雑な装置が配置されていた。天井からは巨大な水晶が吊り下げられており、光を部屋全体に反射させていた。この場所はまさに時間を操るための聖域であるように見えた。




「ここが、私たちが儀式を行う場所です。」カムイが静かに説明した。「この装置は天体のエネルギーを集め、時間の流れを制御するために用いられます。今日、私たちはこの装置を使って、誠一郎さんを元の時代に送り返す試みを行います。」




誠一郎はその説明を聞き、深く感謝の気持ちを表した。「カムイさん、アヤさん、本当にありがとうございます。ここまで導いてくれて。」




カムイとアヤは装置の前で位置を取り、誠一郎も彼らの隣に立った。カムイが古文書に基づいて儀式の準備を進める中、誠一郎は自分が経験してきたすべてのことを振り返り、未来への帰還が成功することを心から願った。




儀式が始まると、部屋は不思議な音と光に包まれ、時間そのものが歪むような感覚に襲われた。カムイの声が響き渡り、アヤがタイマツを高く掲げてその光を装置に集中させた。誠一郎はその全てが自分の運命を変える瞬間であると感じ、深く目を閉じた。




​​​​儀式の準備が整い、誠一郎、アヤ、そしてカムイは緊張の中でその開始を待っていた。カムイは深く集中し、古文書に記された言葉を静かに唱え始めた。その言葉は古い言語で、アヤと誠一郎には完全には理解できなかったが、そのリズムとトーンが非常に重要なものであることは感じ取れた。




誠一郎は自分の手に持っていた遺物を慎重に装置の中心に置き、その表面が薄く光り始めるのを見た。装置から放たれる光が徐々に強まり、彼の心臓の鼓動がそれに合わせて速くなっていくのを感じた。




アヤはカムイの隣で補助の役割を果たしていた。彼女は松明で特定の模様を照らし、それが装置の一部に反射してさらに別の部分を照らすようにしていた。この精巧な光のやり取りは、儀式の重要な部分を形作っていた。




「誠一郎さん、心の準備はいいですか?」カムイが低く問いかけると、誠一郎は深く息を吸い込んでから頷いた。



「はい、準備はできています。何が起こるかわかりませんが、このチャンスに賭けたいと思います。」



儀式が本格的に始まると、部屋全体が振動し始め、壁の彫刻からはほのかな光が放たれ、それが装置に向かって流れていく様子が見えた。




カムイの唱える言葉が高まり、その声に力が込められるにつれて、装置からはさらに強い光が放射された。

アヤはその光の中で誠一郎の手を握り、彼に勇気を与えた。

「大丈夫です、誠一郎さん。私たちはあなたと一緒にいます。」




突然、装置の中心で誠一郎が持ってきた遺物が強烈に光り輝き、その光が一点に集中した後、部屋中に爆発的に広がった。三人はその光に包まれ、一瞬、時間が停止したかのような静寂が訪れた。




光が消えたとき、誠一郎、アヤ、そしてカムイは自分たちが元の場所に立っていることに気づいた。しかし、何かが変わっていた。部屋の空気が新鮮で、装置の周りには以前には見られなかった細かい彫刻がくっきりと浮かび上がっていた。




「成功したのでしょうか?」誠一郎が期待と不安を込めて問うと、カムイは周囲を慎重に見渡した後、ゆっくりと頷いた。「何かが起こったのは確かです。詳しく調べてみなければなりませんが、この変化は儀式の効果かもしれません。」

彼らはこの新たな状況を理解し、どのように進めばよいかを計画するために、再び協力して情報を集め始めた。

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