近夢
@yuhei063
夢
私は小さい頃から時々見る夢がある
暗い部屋で大きな車用のタイヤが裁縫用の細い糸で吊るされて一人でに揺れている光景
この夢では自身を自覚することもなければ他人がでてくることもなく
音もなく、視界の移動もできず
ただその光景を眺めてるだけ
何か起こったわけでもなく、そこまでインパクトのある夢でもないのになぜか覚えているし、時々見る
気になった私は夢について調べたこともある
追われる夢を見る人は余裕がないから、などオカルト的なことが多く
怖い夢というわけでもないので該当するものが見当たらなかった。
しかし、夢というのは自分になにかしら関係しているらしい。
私は車の免許は持ってはいるが、あんな大きなタイヤがついた車は乗ったこともないし裁縫だってできない
この夢を見る頻度も全く多く、半年に一回もしくは年に一回くらい
この夢に対して疑問を抱き始めたのが小学校4年生
そして現在 25歳である
夢について調べたのも6.7年ほど前だ、今だにこの夢を見ることはあるし、関係した出来事も起きていない
しかし、大きく事が動き始めたのは今年のこと
今年はかなり雪が降った、積もるくらいに降った日も何度もある
私は電車で通勤しているのだが、大雪でも車でくる同僚もいる。
「こんなに雪が降ってるのに車なんて怖くない?道路とか滑るだろ?」
と聞いた
「まぁ、逆に車も少ないからスリップだけ気をつければ意外と快適なんだよ」
なるほど、皆んな命が惜しいからこんな日には車には乗らない、つまり同僚のような命知らずなやつは道が空いてラッキーというわけか
滑り止めのタイヤチェーンらしきものも付けてはいるし、大丈夫なんだろうな
私は仕事を終わらせ帰ろうとしたところ、同僚に送ってやるよと言われたが
もし死んだらお前と最後はごめんだねとジョークに見せかけた本音で断った
次の日も同僚は車で来ていた。
しかし、車が変わっている。かなり大きい
ハマー?という車種か
どうしたんだと訊ねると
「タイヤチェーンが壊れちゃってさ、実家の車をしばらく借りることになったんだ」
「それにしても運転が難しそうな車だ、もし小さい子が飛び出してきたら見えないんじゃないか?」
「見えないだろうな。だが、俺の帰り道は民家ひとつない山道にこの大雪、子供なんて遭遇しないさ」
「それもそうか、こんな大雪の日に山道に行かせる親もいないだろうしな」
たしかに同僚は夜は真っ暗な山道を通って帰る。
子供も飛び出してくることはないだろう、仮に子供がいたとしても同僚の車に飛び出す前に山の中で凍え死んでしまうだろうな
また私は仕事を終わらせ電車で帰宅した
次の日、同僚が窓から駐車場を見ながらなにやらイラついている
どうしたんだ?とたずねると
「俺の車の近くにある、あの女。昨日からウチの前で俺の車をずっと見てんだよ。車に何かされるかもしれないから監視してんだよ」
こんな大雪で女1人で知らない人の車を見てるとは気味が悪い。心底、俺じゃなくてよかったとホッとしていた
「あ!あいつなんかやってるぞ!!」
と同僚は飛び出していき、私も気になり後を追った
駐車場に着くと女の姿はなく、特になにかされた形跡もない
「どこらへんいじられてたんだ?」
「たぶんタイヤになんかしてた、穴開けたんじゃないだろうな?!」
雪で視界が悪かったが、タイヤに穴は空いていなかった。
その日の晩に同僚から電話がかかってきた
「またあの女、ウチの前にいて車になんかしてる」
いざとなったら男のお前のほうがチカラは強いんだし、ガツンと言ってこいよと私は言ったが
ふと目を離すと女は姿を消していたそうだ
それから2日後、同僚は雪山で事故を起こし亡くなった
タイヤが切られていたそうだ。
同僚の葬式が行われ、一服しようと喫煙所に向かった。近くでも葬式が行われていたようで
さきほどは見かけなかった女性が喫煙所にいた
「こんな偶然あるんですね」
女はそう言った、確かにそう言った
「はい?」
「あなた、◯◯さんの同僚ですよね」
「なにも聞かされてないと思うけど...」
と女は話を続けた
実家の車に変えたあの日、帰り道に同僚は子供を轢いてしまったらしく
大雪の音と車体の高さで最初は気づかなかったそうだ
家について、血がついてるのをみて何か轢いたんだと気づいたかもしれないが
同僚は誰にも言わなかった
そして、その子供は今目の前にいる女の子供だった
俺たちが駐車場からみた気味の悪い女と同一人物で
その日、女と子供は祖父の家に車で山道を走らせていた途中にガソリンが尽き、祖父に連絡し迎えを待っていた。
女は向かう途中で枝にひっかかって破れてしまった子供のニット帽を車で縫っていた
子供は近くで雪だるまを作っていた
しかし、同僚の車の音が聞こえ、子供は祖父の迎えと勘違いしてしまい道路に飛び出してしまった
それを同僚は轢いてしまったのだ
そして子供は深い山の中に落ちていき遺体の捜索が遅れたため同僚の葬式と日程が被ったのだ
「運命ってあると思うの」
「私、あなたとは今日初めてあったけど夢で見た事がある」
「糸に吊るされた大きなタイヤを見ているあなた」
そう言って女は写真を見せてきた
同僚の乗っていたハマーのタイヤに糸がつけられていてもう片方の糸の先には同僚が吊るされていた
死因は事故ではなく、事故で気を失ったタイヤの重みで同僚を糸で絞殺していた
「夢を思い出して同じ事をしてみたの」
そう言われて思い出した
私が見ていた夢に糸で吊るされていた人影があったことを
近夢 @yuhei063
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