ブロンinラムネ
にあ
ブロンinラムネ
「明日なんてこなきゃいいのにね」
そう言って苦笑する彼女の横顔が私は好きだ。
知り合ってから3年。
高校生になって2年。
私が死ぬまで1日。
私達、が。
よく人は、「人はなぜ生きるのか」そんな言葉を口にする。
生きることに意味なんてなくて。
努力なんて報われないし、誰も見てない。
結果がなきゃ誰も認めてくれない。
人って、そんなもん?
風俗業をバカにするのは、自分がそれよりも稼げてないから。
バカが弱いものいじめをするのは、自分の方が劣ってるから。
人間は誰かを下に見ていないと生きていけないらしい。
だから私は、いつも人を下に見る。
でも、これからは物理的に下に見る。
そうすればちゃんと人間になれる。
いま、その願いを叶えるための階段を登っている。
『使えない奴は必要ないよ』
本当にね。
だって切れなくなったハサミなんて誰も使わないでしょ。
広がる青、塗りつぶしたような白。喧騒が耳を通る。
「やっとついたぁ」
「ね。やっと」
「次会えたらクランベリージャム作ろうね」
「まだ覚えてたんだ。約束ね」
私は不意にあの声を思い出した。
『じゃあ次のお休みはブルーベリージャム作ろっか』
なつかしいな。
そんなことをぼんやり考える私とは裏腹に、彼女はバッグから瓶を取り出して中身を手に出し始めた。
それを見て私の分ももらう。
「ありがと」
瓶を開けたとき、ほんのり甘い香りがした。
気のせいかな。
60粒ほど入った瓶の中身を水で流し込む。
2瓶をすべて飲み終えた頃
足もとがすこしフラつくなか、手を繋いで、そして抱き合う。
靴をぬぎ、靴下をぬぎ、メイクをすこしだけ直す。
ビューラー、マスカラ、アイライン、アイシャドウ、チーク、もうキラキラしたものは見えない。
「いこっか」
「ん」
コンクリートの塊にのる。
「せーの、でいくよ?」
「おっけ」
「じゃあ、いくよ」
「「せーのっ」」
多幸感。
耳をつんざくような爆発音が脳裏で流れた。
気がした。
何分たっただろう。
私は、目をあける。
目を、あける。
生きてる?
私の左手には、彼女の右手。
右手の先には綺麗に目をつむった彼女。
すこし温もりのあった彼女の手は急速に冷たくなっていった。
「なんでよぉ、、、」
一緒にいくって。
いっしょに逝ってくれるって。
彼女のカバンにはいつも、大量のラムネが入っていた。
彼女はいつも言った。
『アキちゃんには死なないでほしいなぁ』
あぁ、私が飲んだのはブロン錠じゃない。
ハルちゃんのラムネだ。
「ハルちゃんっ、、」
硬直した彼女の手は離れない。
だから、どうしようもなく、痛みに寄り添って
もう一度
眠りに堕ちた。
ブロンinラムネ にあ @nqrse_x
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