第48話 最終決戦③

「このスマホなら...ナナのアカウントなら晴奈のアカウントを閲覧できるはずだ!」


プロフィール画像に載せるくらいの大親友にアカウントを公開してない訳がない。リュウは急いでナナのスマホを開こうとする...が、勿論ロックがかかっている


(思い出せ...ナナは良い意味で単純だ。なら無難に誕生日とかをパスワードにしているはず)


リュウは必死でナナとの会話を思い出す...その後部屋の中を探索する


(無い無い無い! 何も無い! あんなに泣いたのに! 悲しんだのに! 俺はナナの誕生日さえも分からねぇのか!!)


リュウは壁を強く叩きつける


(そうだ、ナナとは友達でも何でもねぇ...仮に誕生日なんか知ってても祝ったりも何もしない関係......"祝う"...? そういえば晴奈...あ!!)


リュウは急いで2016年小山花火大会の日付を検索する


(花火大会は7月31日! という事は...)


PIN認証 "0" "7" "3" "0"


ロックが解除された。


(前夜祭は友達の誕生日だからと晴奈は圭一の誘いを断っていた! その友達とはナナの事だったんだ!)


急いでフェイスブックを開き友達欄を確認すると晴奈のアカウントがあり、閲覧する事ができた


(晴奈のアカウントは俺しか見れない...フフッ、この勝負、俺の勝ちだ!)



リュウは意気揚々と最終決戦を行っていたモニタールームに戻る


「ソウ! 安心しろ、俺達の勝ちだ」


「そ...それが......」


ソウが焦った様子を見せる


「リュウ...追い込まれたのは俺達だ」


「は? 何があった!?」



「フフッ...」


2人の焦り具合を見てリカが笑い、とある1枚の紙を見せる、それはリカとケイが同盟関係を結ぶ誓約書だ。


ケイ「俺とリカ、どっちが勝っても賞金は折半だ」


リュウ「クソッ! そういう事か...!」


リカ「この後私が挙手をし、そのまま誰も挙手をしないと私とケイの勝ちになる」



~遡る事5分前~


リュウが部屋を飛び出した。


ケイ「なぁリカ、今のリュウの感じ、フェイスブックのプロフィール画像の隣の女の子を知っている様子じゃなかったか?」


リカ「ええ、ナナって言って部屋を飛び出てったんだから恐らくペアだったのかしら。そうでしょう? ソウ」


ソウ「...まぁな」


ケイ「そのナナのスマホなら晴奈のフェイスブックを閲覧できる。そうなったら俺達はもう勝てない」


リカ「いいえ、私達も晴奈のフェイスブックを閲覧できる方法があるわ」


ケイ「どうやって! って、教えてくれるのか?」


リカ「簡単じゃない、リュウが推理を披露してくれるんだから」


ケイ「まぁそうだけど、恐らくリュウは100%完璧な推理を立ててくるぞ、そうなったら意味ないだろ。しかもここで俺とリカどっちかが敗けを受け入れて挙手しないといけない」


リカ「大丈夫、このゲームに勝つ為に100%な推理なんて必要無いもの」


ケイ「どういうことだ?」


リカ「結局、あの暴念って人が一番納得したらいいの。例えば2つの理に適った答えがあったとして、1つはハッピーエンド、もう一方はバッドエンド。息子の事件はどっちで解決してほしい?」


ケイ「そりゃ事実がバッドエンドだとしてもハッピーエンドで終わりたいはず...」


リカ「私の予想ではこの事件は複雑に入りくんだだいぶ胸糞悪い結末だわ。リュウがそれを推理した後、気持ちの良い終わりを1つ付け加えれば暴念はそっちを勝者とするはず」


ケイ「でもよ、暴念もあくまでゲームマスターだ、私情を挟まず勝者を選ぶんじゃないか?」


リカ「だーかーらー! 理に適ったハッピーエンドを見つけなきゃいけないの! そしてそれはケイの役目よ」


ケイ「俺の...役目?」


リカ「この事件をハッピーエンドで終わらす為の肝は恐らく"恋愛感情"よ。私には恋愛感情や人の心なんて一切分かんない、良い意味で普通な人間のケイの方が晴奈や圭一の人間の気持ちが分かるはず。事件の全容はリュウが解決してくれるから、ケイは必死でこの事件に関わった人達の心に寄り添うのよ! そうすれば暴念も納得する答えが出るはず」


ケイ「それは...リカが俺より先に挙手してくれるってことか...?」


リカ「ええ、このままだとソウ・リュウに負けるからね」


ケイ「...ありがとう」


リカ「勿論誓約書はあるわよ。賞金は折半ね」


ケイ「勿論だ!!」



~そして現在~


タイマーは残り10秒だ


「ケイ、安心して。私の推理をリュウが上回れない可能性もあるから」


(ほんの10分でそんな完璧な推理ができるもんか)

とケイは思うがリカは自信満々に挙手をする。


暴念「リカ様、では推理を披露して下さい」



リカ「まず事件の犯人はペラープ宗教団体よ」



(ペラープ宗教団体...?)


確かに圭一の家のテレビでニュースが流れていたが、何故この事件に宗教団体が関わっているのかがケイには分からなかった。


リカ「ペラープ宗教団体は花火大会でテロを起こす予定だった、でも実際テロは起きなかった、それは何故か、失敗に終わったからよ」


暴念「ほう...何故失敗したんでしょうか?」


リカ「テロを起こす予定だった者がペットボトル殺人鬼に殺されたから」


ケイ「殺されたって確か、元力士の力八関か」


リカ「ええ、力八関には反社との交際疑惑があったでしょ、その反社とはペラープ宗教団体の事、力八関はかき氷に毒を混ぜて大量殺人をするつもりだったのよ」


暴念「確かに晴奈は飲み物を飲んで1時間程してから苦しみ始めました。1時間は普通にいられる毒なら、毒入りのかき氷を気付かれない様に大量に配れますね」


リカ「力八関は頭を殴られて死んだけど凶器が見つかっていない、それは凶器が氷だったからよ。力八関は人混みがピークになるまで普通の氷で商売をし、ピークになったら毒の入った氷を使う予定だった...そしていよいよピークになって毒入り氷を屋台の裏に取りに行った時に、その氷で頭を殴られ殺された」


ケイ「凶器は溶けて消えたのか...」


リカ「いいえ、死体がすぐ見つかれば氷は溶けきらず凶器として現場に残ってしまう。だから凶器を別の屋台に持って行ったの」


ケイ「別の屋台って、まさか!」


リカ「そう、飲み物屋よ。そこには大量のペットボトルと氷が入っていたはず。客が来るまで椅子に座ってる店主だから、通りすがりに氷をペットボトルと氷水が入った容器に落とせば店主にバレずに証拠を隠滅できる。でもペットボトル殺人鬼はその氷に毒が入っているなんて知らなかった、結果的にその後飲み物を買った4人が毒を口にしてしまい死んだ、そして休憩がてらペットボトルを取って飲んだ店主も死に、それ以降は店主がいないから飲み物は買われず、被害者は4人で済んだ」


暴念「ペットボトルの中に毒が入っていたのではなく外側の水滴に毒が含まれていたと...お見事、恐らく真相はそうなのでしょう。全て理に適っています。リカ様、暫定席にお座り下さい。ソウ様は脱落です」


ソウ「まてよ! ペットボトル殺人鬼が力八関を殺した? 確かに力八関には反社との交際疑惑があったがそんな黒い噂がある芸能人なんか他にも沢山いる、あまりにも偶然すぎやしねぇか?」


暴念「現場には大量のペットボトルが落ちていました。それが証拠なのでは?」


ソウ「花火大会だぞ? ゴミとかペットボトルが散乱して当たり前だろ!」


リカ「いいえ、犯人はペットボトル殺人鬼よ」


ソウ「何故そう言いきれる?」


リカ「ペットボトル殺人鬼には悪人しか殺さない以外にも共通点がある、それは...」


~映像に出てきた被害者一覧~


二階堂俊文

三滝裕子

北島四郎

力八関


リカ「全員名前に数字が入っている。反社との疑惑があって名前に数字が入っている人はほぼいない、そしてペットボトルが大量に置いてあったならこれはもうペットボトル殺人鬼がいたとしか説明がつかないわ」


ソウ「ぐっ...勝てない」


ケイは思った。これ以上の推理は無いんじゃないかと、もし...万が一にもリュウがこの推理を上回る事があれば、俺にはそれを上回るなんて無理なんじゃないかと...





リカ(晴奈の名字 "一ノ瀬" と "圭一" この2人の名前にも数字が入っている事に関しては10分では考えきれなかった...ケイ、後は任せたわ)


完璧に思えたリカの推理だが、まだこの事件は深い迷宮にある。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る