性癖とフェチの違い。
「先行か決めさせてやる、どっちがいい?」
「どっちでもいいです」
「ふん、なら俺が先行だ。俺は人物カード、思春期の男子中学生を召喚。そして、性癖カード、赤点を装備。ターンエンド」
(素行不良? いや、ただダメな生徒の可能性もある。どちらにせよ、あのチャラい先輩のことだ、禁止ギリギリの制限カードで攻めてくる可能性もある)
思春期という無限の可能性。おねショタにもなり、イチャラブにもなり、年上に負けやすい時期でもある。いろんな可能性があるからこそ、胸糞になりうる可能性もある。聖兎は、不安を抱えながら、カードに手を置く。
「俺のターンドロー。俺は制服JKを召喚。性癖カード、幼馴染を装備! さらに性癖カード、罪悪感を装備。ターンエンド」
「は! 大したことねえな」
強がった中江の心には、若干の不安が走った(こいつ、まさか、NTいや、まだ早い。そうだとすると、未闇に召喚はできない)震えながら、カードに手を置く。
「ドロー俺は思春期の男子に、性癖カード、生意気を装備。これでクソガキに進化させる!」
クソガキ。メスガキと違って大きなジャンルは確立できてはいないが、無自覚のファンも多い。メジャーかマイナーかどちらかによって数パターンのジャンルがあるが、やはり大きく派生できずにいる。
「ターンエンド」
聖兎のターン。聖兎は自分の手札を確認して、希望を込めてカードを引く。
「俺のターン! ドロー」
(ダメだ。Dカップ巨乳が来ても意味のないシチュエーションだ)
カードには相性がある。生意気なメスガキに巨乳を装備すると、生意気メスガキロリ巨乳になるが、シチュエーションがわからせの場合は有効打になり得ても、わからされの場合、巨乳に負けたことにもなりえ、生意気なメスガキの価値が有耶無耶になり得る。
相手がその事実に気づいてしまっては、没入がが削がれ、大ダメージは与えられない。
「ターンエンド」
「おいおい随分弱気だな! 俺のターンドロー! 見せてやる。取られても問題なく、むしろ経験がものをいう世界を」
「なんだ!」
「手札から、年上お姉さんを召喚! さらに性癖カード、家庭教師。経験豊富。年下好きを装備!」
「そ、そのコンボ!」
「さらに、シチュエーションカード、ご褒美エッチを発動」
「エッチな家庭教師のお姉さんのご褒美えっち! クソガキの赤点、年下好き。あああああああ」
場に、雷鳴走る。王道! おねショタの王道! 学生なら誰もが憧れるシチュエーション。中学生、高校生、どちらもありなジャンルであり、机の下で手で触られ、「あれ、ここ、どうしちゃったのかな〜」となること必死! まさに王道! 聖兎の脳内に、雷鳴が直撃する!
「あああ、処女厨でも意外とありと思ってしまう、ああ」
聖兎の脳内に仮想の映像が流れる。
赤点のクソガキはペンを回しながら適当に言い放つ。
『ち、勉強なんて意味ねえだろ』
『そうだよね。でも勉強しないと大学行けないよ』
お姉さんは体を近づけ、クソガキの腕に大きな胸が当たる。
平常心を装い負いながら、今日のおかずは決まったと感じる。前に雨の日に来た時に撮ったブラ透けと共に、ディナーの想定しながらペンを走らせる。
『あ、そこ違うよ、こっち』
『あーもうめんどくさい! 別に、高卒でいいし』
『えーじゃあ、こうしない? もし次のテストで八十点以上取れたら、お姉さんがご褒美あげる』
『ご褒美? 別に、まあ。貰えるものは貰っておく』
(どうせ漫画とかペンとかだろ。期待するだけ無駄だよな)
そう思ってはいても、わずかな期待を胸に勉強をこなす。
当日、テストの結果は九十点。
『おめでとう! すごいじゃん! 約束のご褒美』
『別に、期待してないし』
『ふ〜ん。そうなんだ。じゃあこれは?』
お姉さんはズボンの上から何かを触り、大きくなった感触を確かめる。
『私が部屋に入った時だよね。期待はしちゃったんだ』
『ん、ああ。おい、あ』
(やっちゃった。これでおしまい……やだよ)
ズボンの中で発射してしまい、ご褒美は終わりに思えたが、お姉さんは服を脱ぎ出し、ピンク色の下着を露わになると、クソガキの視線は固定された。
『うふ、わかってる。一回じゃダメだよね。あっちいこっか』
胸で、手で、そして、お姉さんの体がクソガキの上に乗る。馬になった気分で騎乗され、何度も両方から泣かされる。
『ほら、ご褒美だよ。次も頑張ったら、うふ、どうなっちゃうのかな?』
お姉さんは小さく笑うと、腰をゆっくり下ろした。
聖兎のシールドが二枚割れる。
「あああああああああああああああ。ああ、いあ、くそ、こんな攻撃力」
「ち、あと一枚だったが、どうだ、降参するか!」
「誰が」
シチュエーションカードに使用された人物カードは、どちらか一枚捨てなければならない。通常、メインとなる女子を残すことが多いが、純愛や俺にだけなどのジャンル場合、他のカードとペアと組み合わせることができない。
「俺はクソガキをゴミ箱に捨てる」
(次のターン決めないと、負ける可能性がある)
シールドは三枚、聖兎はすでに二枚割られている。あと一枚割られたら負け、貫通した場合心にダメージを負う可能性がある。
聖兎は覚悟を持ってカードに手をやるが、中江はニヤリと口角を上げる。
「おいおい、何終わった気でいるんだ」
「なんだと」
「性癖カード、ローションガーゼを装備。さらに、シチュエーションカード、下着を盗んだ。を発動!」
(人物カード一枚でシチュエーションカード! この先輩、できる!)
通常ペアの関係がメインのシチュエーションを一人。ダメージは少ないが、この状況で聖兎のシールドを削り切るには最適な手。
「くらえ! 下着を盗んでお仕置きお〇〇ぽい○め!」
聖兎の脳にさらに映像が流れる。
『僕君、それ、私のだよね』
お姉さんが下着でオナニーしている子を見つけ、部屋に呼び出す。
『悪い子にはお仕置きだよ。ほら』
お姉さんの手が上下に動き、少年はあっという間に発射してしまう。
『ん、止めて? 止めないよ。お仕置きだもん。ほら』
少年はすぐに二発目を出し、終わったと思い脱力する。
少年の体に電流が走り、体がビクッと跳ねる。電流の原因を確認すると、亀頭に糸を引いた一枚の布。それが横に動き、動きに合わせるように電流が走る。
『あは、潮出ちゃったね。え、うん。大丈夫だよ。気絶したらおしまいにしてあげるからね』
少年はガーゼを持ったお姉さんの姿が、白衣の天使に見えたが、少年の心と体を保つために脳が作り出した幻影、本当のお姉さんは、笑いながら飛び散る潮を舐めとる、悪魔のような笑顔を見せていた。
「ああああああ、ああ」
「これで、俺の! な」
聖兎のシールが割れたかかと思われたが、ヒビが入っただけで済んだ。
「どういうことだ。このシチュエーションなら一枚は確実」
「最後の最後、俺は性癖カード、ドM。をお姉さんを装備したんだ」
「この完璧なシチュエーションいドM! お姉さんへの冒涜だろ! 甘んじで女性上位責めを楽しめクソが!」
無論、本来なら耐えられるダメージではない。ドMのカード一枚では止められないフェチ度の攻撃だったが、一つ前の攻撃に脳がお姉さんが実はドMで逆転というシチュエーションに違和感をもち、聖兎の心を保った。
「クソ! ターンエンド」
(このターンに決めないと流石にまずい。どっちでもいい。えっちでも、フェチでも、このターンに引かないと、来てくれ)
「俺のターン!」
聖兎はカードを引き、カードに目をやると、確信。
「来た! 俺は手札から、人物カード、DKを召喚。性癖カード、背中の古傷を発動」
「な、古傷」
聖兎は中江の表情を見て頬を上げる。それは勝ちを確信した笑みではない。このコンボの成功にできる喜び、布教の可能性の笑みを浮かべる。
聖兎のフィールドには、前半に召喚した人物カード、制服JKに、幼馴染と罪悪感を装備させていた。
「俺はシチュエーションカード、山の遠足で遭難。を発動」
「お、お前、まさか!」
「分かるか。このコンボが!」
中江は大きく取り乱す。NTRだと思っていたカードが正反対を行ったこと、さらに普通ではなく、完全同意ではない、なし崩しだということ、この二つの事実が、中江を惑わす。
「お前、ああ。罪悪感と背中の傷。幼馴染の男女。そして、遭難」
中江の脳に映像が流れる。
過去。
小学生の女の子が道に飛び出す。
『きゃー』
『危ない!」
男の子が咄嗟に駆け出し、女の子を庇って傷を負う。
『う、ああ』
『〇〇! 〇〇! なんでわたしのために『
『〇〇ちゃんが、う』
幸いに男子は一命を取り止め、後遺症などなかったが、背中に大きな傷を負うことになった。銭湯や学校のプールは一人だけ見学。罪悪感と申し訳なさを感じながらも、素直になれない女の子。
現代。
高校生になった二人は、同じ学校で同じクラス。関係は進んではいないが、お互いを思って恋人は作らず、ただ青春を消費していたある日、学校の行事で山に遠足と花ばかりの登山行事に参加したが、急な雨もあり、走って戻るうちに二人だけ遭難してしまった。
『こっち見ないで。服、濡れてるから』
『ごめん。でも、風邪……あ、僕替えの服持ってるからつかって』
二人は運良く誰も使われていない山小屋を見つけ、勝手に入るのは悪いと思いながらも雨宿りのために入ることにした。
女子が着替え終わり、男子は濡れた服を干す。
山小屋は小さく、埃も溜まって使われた形跡がなく、暖房になりそうなものも見つからなかった。
ふと、女の子は男子の背中に視線を向ける。
『その傷。ごめん』
『え、別にいいよ。それに、あれは僕がしたことだ』
男子の方は気にしていなくても、女の子は罪悪感に飲まれている。例え許してもらっても、どこかで心に感じている。
昔話をしていると、女の子はふと当時のことを思い出した。
『そういえば、気絶する前、なんて言ったの?』
何気なく聞いた言葉だが、男子は焦って背を向けながら答える。
『え、忘れちゃった、ハクショん!』
『やっぱり風邪引いちゃう。こっち来て』
二人はぎこちなく抱き合う。
女の子は普段こんなことをするタイプではないが、なぜだが今はしたい気分だった。それは罪悪感から来たものなのか。
『これは、お礼だから。その、昔の』
『ごめん』
『なんであんたが謝る。って、こんな時に何反応してんの!』
抱き合った故の生理現象、男の子は隠そうとする。
『ごめん! 昔から大好きだった人とこんな、あ』
『大好き……なんだ』
二人の吐息と雨音、沈黙なのに鳴り響き、静かに聞こえる。
男の子は、少女の吐息を感じる。
『ちが、くない。ごめん、忘れたって言ったの嘘なんだ。覚えてる。好き。そう言った。正確には言えなかったけど、僕はそう伝えたかった』
『そうなんだ』
『うん』
沈黙が訪れたが、それはただ黙ったわけではない。勇気を出すための時間。
『僕と付き合って欲しい』
二人は顔を見合わせていないが、どこか分かる。
『こんな状態で言われても、エッチ』
『ご、ごめん! あ、まってすぐに収まらせるから』
女の子は、男子の手を自分の胸に誘導する。
『これは、昔のお詫びと、助けてくれたお礼と……恋人になった記念』
雨音が二人から発する音を消し去り、窓は白く結露していた。
「ああああああああああ! なんだ! 純愛! まさかの純愛だと!」
中江のシールドが二枚割れる。
「な、なぜ割れた、俺は興奮はしていないはず!」
「先輩、性癖は抜きありきかもしれません。でも、フェチっていうのは、己の心を出して、好きを表現するものなんですよ。俺は、抜けなくても、純愛が好きです」
「純愛で抜く異常者。だが、俺は正常。なるほど、俺は、ただ、疲れていたのか」
「先輩は、年上お姉さんの中に、愛を、感じたかっただと思います」
「そう、か」
中江の最後のシールドが砕け散った。
白川が宣言する。
「あ、しゅ、勝負あり! です。勝者、壁野聖兎!」
「負けたぜ、聖兎」
「こっちも、いいおねショタ女性上位でした」
二人がトイレに駆け込んでから、第二試合が始まった。
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