第7話 魔力以外にも未知のエネルギー的なのはあってですね

「けどナノマシンを魔力じゃなくて生体エネルギーとかの方向性で使うとなると……魔法は無しの星にする?」

「魔法ありきで発展した文明というのも見てみたくはありますが、リーナはどうしたいんですか?」


 マリーの言葉に、イリーナはうーん、と深く考え込む。

 確かにファンタジー系の星となると、魔法が存在している世界、というのはある種鉄板ネタみたいなとことがある。

 取り敢えず魔法があればファンタジーっぽくなる。


 だが一方で、魔法がないとファンタジーっぽい世界観にならないかというと、けしてそうではない。

 巨大なモンスターと渡り合い大自然を生き抜く狩人を操作するゲームも、機械の獣との戦いながら生き抜くゲームも、魔法が無くてもファンタジーの世界というのは創造出来る。


 つまるところ、現実と異なる世界観であれば十分にファンタジーたり得る、というのがイリーナの考えだ。

 ちなみにイリーナの母星であるエルフィアには、基本的に地球と同じでファンタジーほど巨大な生物などはいないので、元の記憶から見てもファンタジーらしさに感動することは無かった。

 魔法のように見える技術があってなお、である。

 

 それはイリーナの人格形成がエルフィアでの生活で行われたからかもしれないが、その事実は、イリーナにとっては魔法こそファンタジーという考えが薄れる要因となった。


「取り敢えず魔法は無しでいってみよっか。その代わりナノマシンを生体エネルギーとか龍脈とか地脈とか言われる感じのエネルギーの源にしてさ。そうすればモンスターも人間も、重力と比較しても高い身体能力を持つことが出来るんじゃない?」


 イリーナの達の文明が使うマシンは、その大きさは文字通り1ナノメートルあるかないか。

 すなわち、水などの様々な分子と同じ大きさなのである。

 だから使い方次第では、大きなものを動かす力を発揮することもあるが、逆に水のように流体として流れることも、砂漠の砂のように積もることも容易く出来るのである。


 イリーナ達の惑星ではこのナノマシンの大きさと拡散性を利用して、自然のあらゆる場所にシュマーレ人の管理の手を届かせ、自然を完全に支配することに成功している。

 また例えば体内に取り込むことで、体内の他の分子の代わりとして働いたり特殊な働きをしたりと、様々なことが出来る。

 

 これを使えば、重力環境下でも本来ならありえない大きさの生物が普通に活動することが出来るようにすることも出来る。

 

「そうですね。その使い方なら、前世のリーナの記憶からすれば十分にファンタジーな世界を作ることが出来そうです」

「前世だと、巨大生物は大きくなるほど自重で動けなくなるとか、夢の無いことが言われてたからねえ」


 物理法則が存在している以上、生物の身体の構造ごとに限界となるサイズというのは自然と決まってくる。

 例えば前世の地上で全長30メートルもある哺乳類が存在したとしても、重力という環境下ではまともに動くことが出来ない。

 それをナノマシンを使えば無視させることが出来てしまうのだ。


 ちなみに恐竜があの大きさで機敏に動けたのは何故か、なんて話があるが、奴等は哺乳類よりも色々と融通が効いたので、大型の草食竜は機動力を捨てて身体の保持に性能を割り振っているし、肉食恐竜系は骨を鳥のようにスッカスカにすることで軽量化を図ったりしている。

 もちろん生物の進化的にそっちに進むのは構わないが、取り敢えずイリーナの記憶の中の地球のように、陸上生物の最大が数メートル、なんて夢がない惑星にはなってほしくない。


「取り敢えず、でかい生物はある程度設計までしておこっか」

「世界観の構築、ではないのですか?」

「それはもちろん! どんな方向性で行くのかはちゃんと考えておくよ。でも、そこに生きる生物を作ってからそれに合わせた世界観を考えることも出来るわけだしね。最初から完璧にしようとしちゃうと融通が効かないから」


 例えば、爬虫類系の中でも竜種が繁栄している世界観にするのか、それとも哺乳類系の生物が繁栄している世界観にするのか。

 あるいは大精霊がいて小規模な精霊がいて、その他にもモンスターがいるような世界観にするのか。

 それだけでも空想は無限に広がる。

 

 ではその世界観の中で、違和感無く強力なモンスターは何か。

 生態系はどうなっているのか。


 先にそれを全部決めてしまうというのは、なかなかに困難だ。

 モンスターを作っているうちに自然と新しいアイデアが湧いてくることもあれば、作りたくなったモンスターに合わせて世界観を変えていく可能性も有り得る。


 だから、色んな事を並行で進行した方が良いのだ。


「マリーはどういうのが良いとか、無いの?」

 

 ディスプレイのメモにいくつも書き込みながら、イリーナはマリーに尋ねる。


「私は……そうですね。以前環境維持機構として自然を司る精霊などを作るという話をしまましたよね?」

「うん、今も頑張ってくれてるガルーダちゃん達だよね」


 ちなみにガルーダとは惑星の大気の浄化のために多数飛ばしている巨大な鳥類である。


「モンスターを作るなら、それと関連付けた方が良いかなと思いました」

「なるほど~。ていうか、ならマリーも一緒に考えようよ」

「良いのですか?」


 てっきりイリーナが全部自分で決めたいのかと思っていたのでマリーは話を聞きながらもサポートに回るようにしていたのだ。


「もちろん、ていうか1人でゲーム1本どころじゃない数のモンスターを考えるのは無理。あんまりパクリはやりたくないし」

「ふふっ、そういうことなら、私も一緒に考えさせてください」




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