【完結】TS転生宇宙人の地球改造計画~ファンタジーの惑星を作ろうと思ったらここ荒廃した地球だったってホントですか!?~

天野 星屑

プロローグ 船出のとき

 イリーナ・ユティアーナ。

 それが今世の私の名前。

 ユティアーナ家の一人娘として生まれ、両親からの愛情を受けて育ち、この度立派な役職に就職することが出来た。


 しかしながら、今世の、と言っている通り、実を言えば私には前世のようなものが存在する。

 前世のようなもの、と言い切ったのは、それが前世として私の人格形成に影響を与えるタイプではなく、どちらかというと1つの人生分の知識が私に与えられたようなものだからだ。


 こどもの頃は、わけがわからなくて良く泣いた覚えがある。

 なにせ頭の中に、自分のものではない記憶が丸ごと人生1つ分入っているのだ。

 むしろ十歳にしてそのことをようやく受け入れることが出来るようになった自分を褒めたい。


 さて、そんな私イリーナだが、私には夢がある。

 それは、前世の記憶のもととなった人の夢を叶える事。

 正確に言えば、いつの間にか私にとってもそれがやりたいこととなっていた。


 人格形成に影響出てるって?

 夢を持ったのは十八の頃だったからセーフだってセーフ。


 さて、そんな私の夢はー?


(ドラムロール)


 ダッダダダダダダダダダダ、ダン。


『ゲームの世界に行きたい』


 でした!


 どうだろう。

 皆さんは正解しただろうか。


 さて、この夢だが、前世の彼は結局叶えることが出来なかったらしい。

 彼、という通り前世の私は男性だった。

 記憶によれば、彼が生きていた場所、時代、世界。

 どれで形容するのが正しいかはわからないけれど。

 

 とにかく彼が生きていた環境では、今世では当たり前の体感型VR技術などもまだまだ未発達だったようだ。

 とてもゲームに入り込むというほどにはいかず、せいぜいがゴーグルのような装置をつけて視覚だけ体感し、ゲームの操作はボタンがたくさんの普通のコントローラーでする程度のものだった。

 

 その後しばらく経って、実際に身体を動かして遊べるような特殊なコントローラーとゴーグルのセットが販売されるようだったが、前世の私は不運なことに、まさしくそのニュースを見て大喜びしている瞬間を車に跳ね飛ばされて死んでしまったらしい。


 つまり前世のわたしは結局ゲームの世界に行くことは出来なかったわけだ。

 

 そこで、今世のわたしは考えた。


 じゃあ、私がその夢を叶えよう。

 ゲームの世界に行きたい、ゲームの中に入りたいというおじさんの夢を叶えてやろうではないか。

 

 というか前世のおじさんが遊んでたゲームがおもしろ過ぎて私も今世で遊びたかった。

 

 なんで前世の人格形成に影響してもいない前世の自分の夢を自分の人生の中心に据えるのか、だとか、結局人格的に影響されてるじゃんと突っ込みたくなる人もいるだろうが待って欲しい。

 

 今世の私が生まれた種族であるシュマーレ族では、娯楽が前世ほどには発達していない。

 美食であったり芸術であったりはそれなりに発展しているのだが、サブカルチャーとなるとまだまだ、というか。


 『芸術なら理解できるけど、アニメの何が良いの?』


 とか平気で言われてしまうような社会だ。

 サブカルチャーの不遇具合では前世の第二次大戦以前の方がまだマシだと言ってもいいぐらいだ。


 そんな中で、前世の記憶でアニメにゲームに漫画にライトノベル。

 ありとあらゆるサブカルチャーを知っている私は、単純な話欲求が満たされなかった。

 

 それはそうだ。

 多くの『面白かった』という記憶や感動の記憶があるのに、具体的な内容は記憶力の問題で覚えていないものばかり。

 覚えていたとしても細部までは覚えていない。


 そんなものに私が惹かれ心焦がれたとしても仕方が無いことだろう。

 だからその欲求を満たすための1つの方法として、私は前世の私の夢を叶えることにしたのである。

 後は少しだけ、私にサブカルチャーというものを教えてくれた、今は無き前世の私に対する鎮魂歌代わり、なんてことも考えていたりはする。

 

 そんなわけで、今世の私の夢はゲームの世界に行くことである。


 とはいえ、である。

 ゲームの中に行くことは、実を言えばこの世界ではそんな難しくない。

 ゲーム自体は私が用意する必要があるが、シュマーレ族のまだ若い人の教育や、働いている人が実際に作業を行う前の研修で使用する仮想現実体験マシン、通称VRマシンを使えば、容易く作ったゲームの世界を体感することが出来る。

 

 しかし、果たしてそれを使ってゲームを作って、そこの中に入り込んで「目標達成!」と言って私は満足できるだろうか。


 否。


 否である!


 絶対に私は、そんな簡単なことじゃあ満足できない。

 そもそもが1人でそのレベルのゲームを作り上げるというのは非常に困難である事を置いておいても、自分が作って全て知っているゲームを遊ぶのでは物足りないし、それ1つで満足できるはずもない。


 それに、やはりゲームだとわかってしまうと何処か興奮が萎えてしまう部分もある。

 だから、そう。

 ゲームの中に入りたい、じゃなくて、ゲームの世界に行きたい、なのだ。


 だから今世のわたしは、すごく頑張って勉強もかつての世界よりも結構進んでいる内容とかあったのをすごく頑張って、とある職業についた。


 その名も『荒廃惑星再生者』。


 これは読んで字の通り、荒廃した惑星を再生させる仕事である。


 あ、ちなみに明言していなかったが今世の私は地球人から言うところの宇宙人である。

 耳だってちょっと長いしめちゃくちゃ美人だし額に第三の目は開くし寿命だって数百年は余裕である。


 それだけの時間を使ってやることを私は決めたのだ。


『荒廃した惑星を再生する。そしてその再生するときに手を加えて、ブロックごとに様々なゲームの世界観を再現する』。


 別に荒廃惑星を再生する際に、知的生命体を誕生させろとか言われてないし、自分たちが住めるようにしろとも言われていない。

 ただ、宇宙に浮いている星が何らかの理由で荒廃しているならもったいないから、ちゃんと綺麗にして稼働するようにしなさい、というのが『荒廃惑星再生者』の仕事である。


  なお、給料はすごく良いがなりたがる人が非常に少ないことで有名な仕事である。

 というのも簡単な話で、星の再生にはこの私の今の種族、シュマーレ族の寿命でも長いと思えるほどの時間がかかる場合がほとんどだ。


 いくら大金がもらえるからと言って、それほど長い時間を一人、あるいは複数人で宇宙船の中で寂しく暮らすのはごめんである。

 

 それぐらいだったら、普通に働いて、惑星開発がしたければまだ知的生命体がいない生存可能な惑星を買って改造した方がはあるかにマシである。


 ついでに言うならば、荒廃惑星再生者の達成したことは別に他のシュマーレ族からすれば大したニュースでもなんでもなく、仕事の大変さと認知度や世間からの称賛が比例していない。

 

 そんないくつもの要素があって、結構な不人気職業である。

 なお前回新しい人が入ったのが50年前なので、まあ後は察して欲しい。


 そんな仕事を私が選んだものだから、当初家は非常に荒れた。

 父も母も私を大切にしてくれている。


 だからこそ、そんななる人が少ない仕事につき、長い間帰ってこないなんて信じられない、と言われた。


 だが私も、前世の人から引き継いだものではあるが自分にとっては確かな夢である。

 だから全力で両親を説得した。

 

 私が何がしたいのか。

 なぜ荒廃した惑星を再生させたいのか、就活用に用意した壮大なストーリーを両親にも丁寧に話した。

 それを聞いて両親も、「そこまで思い入れがあるならば」「体に気をつけるのよ」と送り出してくれたのだ。


 なお実際はゲームの世界が作りたいだけである。

 大切に育ててくれた両親には申し訳ないが、私はそれほどに前世のサブカルチャーに焦がれていた。


 そんなことはおいておいて、いよいよ私の船が出発する瞬間である。

 このシュマーレ族は非常に科学技術が強く、またそこから派生した魔法に近い技術まで操るために、基本的に宇宙の行き来も自由に出来る種族だ。

 

 そのため、今からいざ飛び立たんとしている私の船のすぐとなりには、見送りにきた両親が乗っている船もある。

 宇宙に出ることだってちゃんと道具があれば容易く出来てしまうというわけだ。


『イリーナ、ちゃんとご飯食べるのよ』

『辛くなったら帰ってきても良いんだからな、頑張るんだぞ』

「うん、お父さん、お母さん、行ってきます」


 両親に別れを告げて私は船を統括するAIに指示を出す。


「マリー、巡航速度で登録していた惑星に向かってちょうだい」

『了解しました。惑星20911252121への進路を取ります。それと、まもなく私の本体が到着するので、机の上を片付けておいてください』


 この船のスピーカーから響いている声が、この船を統括しているAIであるマリーだ。

 私も船の操作は出来るように学んでいるが、基本的に操作はAIがやってくれる。

 おかげでシュマーレ族の知能指数は下がるばかりだ、と学校の教授が嘆いていたのを思い出した。

 その教授の仕事をAI搭載のバイオロイドが手伝っていたのは内緒だ。


「なにか作ってくれたの?」

「簡単なものですがケーキを」


 質問に対する答えは、天井のスピーカーからではなく、ぷしゅ、という音とともに開いた後方のドアの方から聞こえてきた。


 振り返って見えたのは、薄い青色の髪をショートカットにまとめ、前世で言う所の近未来的な露出多めのスーツを身にまとった少女の姿だった。


「ありがとうマリー!」

「いえいえ。せっかくの船出ですから、一緒にお祝いしたいなと思って」


 ちなみに先程天井のスピーカーがこのマリーのことを本体と言っていたが、一応本体は船そのものやこのバイオロイドのマリーなど複数箇所に保管されている。

 これは一箇所が壊れてもマリーがいなくならないようにするための処置らしい。


「それでは、早速ですが船出を祝って」

「「カンパーイ!」」


 マリーが作ってくれたチョコケーキとジンジャーエールで、私達はちょっとした祝杯を上げるのだった。

 ちなみにチョコもジンジャーエールも、前世の記憶から似た特徴を持つものを探した私が勝手にそう呼んでいるだけで、シュマーレ族の間では別の名称が使われている。


 まあでも、わかりやすいほうが良いよね。

 知識を学校で習う前に前世の記憶から引き継いでしまった私は、知識面でも前世風に考えた方がわかりやすかったりするのだ。



~~~~~~~~~

一人称は基本そのキャラ中心で語りたいとき、それ以外は三人称で書こうと思います。

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