そして精霊は目を開ける〜せっかく異世界に転生したんだからこの世界では頑張って生きてみようと思う〜

赤い猫の目

やりなおし

プロローグ「俺」

[不合格]

見慣れた文字だ。


「ああぁぁ!まただ!クソ!」


これで六浪…

俺はベットに寝転がり、ここ一年を振り返った。


逃げて来た、勉強から。1時間集中するのもままならない。

俺は集中が少しでも持たなくなると、

すぐさまベッドに横になり、スマホをいじりだしていた。


「受かる訳がなかった…」


俺の人生は詰みなのか…?

きっと俺の事を気に入っている様な奴は

この世界には何処にも居ないだろう。


俺はずっと無駄なプライドを抱えていた…


中学生時代は

クラスの奴らをただただ見下していた。


俺に友達はいなかった…

自分から他人に話しかけられなかった…

そのせいで俺はクラスの奴らがグループを作っていく中で1人になった…

他者に嫌われるのが嫌だった…

だから、自分から他人に話しかけようとせず、

見下していたクラスの奴らに話しかけられても良い顔をしていた。


好かれなくてもいい、嫌われたくなかった…

俺は妙なプライドを抱えた臆病者だった…


俺は勉強が嫌いで、勉強から逃げていた。

そのせいで、高校受験は苦労した…


高校も中学と同じ様に、

友達が出来なかった…

イジメられる事も少しあった…

高校生活の最後の方は学校に登校する事も無くなった…


そして、今の俺は両親の家で部屋に引きこもり、

浪人人生を送っている…


きっと父さんはもう俺を見放しているだろう…

父さんはこんな出来損ないの俺に失望したのか、

2年前から俺に話しかける事も無くなった…


けど母親はまだ俺を完全には見捨てていない…

しかし、自分は母親のせめてもの期待に応える努力をしなかった…

母親はいつも俺の部屋の扉の前にご飯を置いてくれる。

けど、それに対して自分はお礼を言う事も無かった…

母は昔の様に俺を励ましてくれる事も無く、

受験会場までの車の中でも無言だった。

母親は参考書を良く買って来てくれるが、

それを使う機会は殆ど無かった…


俺は部屋から出て、一階のリビングに行き、

母親に受験結果を話した。

すると母親は終始考え込み、

そしてこう言った…


「もう大学を諦めて、高卒でも入れる様な所に就職して、良い加減自立しなさい」


俺は理解した。


「家から出てけって事か…?」


「もうこれ以上親に依存してたら、手遅れになるという事よ」


「………分かったよ」


もういい。もうどうでも良い。

要するに俺は遂に母親にも見放されたのだ。

母親は俺に手を差し伸べてくれた…

けど、俺はそれを蔑ろにしたんだ…


「全部、俺のせいじゃねーか………」


俺は家から近くのマンションの屋上に向かった。


「どうせもう詰みなんだ…これ以上長く生きても…仕方が無いだろ…」


目的地に着くと、一瞬躊躇した…

まだやり直せるんじゃないか…?

しかしそんな考えもさっきの母親の言葉を思い出し、消えていった…


そして俺は飛び降りた。


自暴自棄になっていた…


けどもうこのクソみたいな人生からやり直す様な気力はもう俺には無かった。


「ドン!!」そんな音が鳴り、激痛を感じたのも一瞬、

俺の意識は途絶えた。

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