ゲームの始まり

 封筒の中に入っていたカードに書かれていた私の役職は、《村人》だった。

 皆が役職カードを見た時に、一瞬空気がピリッとした気がした。

 皆の役職も気になるなぁと思っていたら、GMが再び話し始めて――――――――。


GM「皆さん役職は確認しましたね、もう12時を越えているということで、お昼にしましょう。近くの部屋に食堂があるので、そこでお食事をなさってください。スタッフが丹精込めて作ったので、それで英気を養って下さい。もし食べ終わったら食器はそのまま置いて役職カードに書かれたご自分の部屋に行くか、先程の会議部屋に戻るかはお任せします。ご自分の部屋に行かれる場合は、15時には先程の部屋にお戻り下さい。」


 村人と安心したからか、お腹が急に空いてきたのでありがたい提案だった。


 各々が食堂へ行き、私は1人で食べていたところとある人物が声をかけてきた。


「ねぇ、お姉さん軽くお喋りしながら一緒に食べない?」


仁奈「いいですよ!隣どうぞ!」


「よかった!こんな状況でも1人寂しくなんて食べられないからね、私は平田葵って言うの、歳は26よ。アナタの名前は?」


仁奈「名前は相澤仁奈で、年齢は22歳です!なんて呼べばいいですか?」


葵「んー、そうねぇ。葵って呼んでくれてもいいよ?その代わり私からは仁奈ちゃんって呼ぶわね?」


仁奈「仁奈ちゃんって呼んでもいいですけど、私からは葵お姉ちゃんって呼びますね!」


葵「いいよ、葵お姉ちゃんで。それにしても仁奈ちゃん可愛いわねぇ…、元気だし、笑顔で話してくれるし、このゲームが終わっても仲良くしたいわね。」


仁奈「仲良くしてくれるんですか!?やったー!!」


葵「生きていたらの話だけどね?だけど喜んでくれて嬉しいなぁ、ご飯食べ終えたら私の部屋でまた話さない?」


仁奈「是非とも話したいです!!このお皿の分で終わるので、もう少しだけ待ってください!」


 私も食事を食べ終えて、葵お姉ちゃんの部屋である101に案内される事になった。


仁奈「この館の部屋ってこんな風になってるんですね、私の部屋すらまだ入ってないので部屋の内装気になってたんですよ!」


葵「そうなのね、なら軽くお話ししたら仁奈ちゃんの部屋にもお邪魔してもいいかな?」


仁奈「私の部屋がどうなってるのかも気になるので、是非ともご一緒に!それで何かお話ししたい事は?」


葵「そうねぇ…、恋バナと行きたいとこだけど、このゲームに関してのお話しをしよっか?」


仁奈「ゲームに関して…?もしかして私の事人狼だって疑ってたりしてますか!?違いますからね!?」


葵「大丈夫よ、私は仁奈ちゃんのことを人狼じゃないと思ったから話しかけたのよ、安心して?」


仁奈「よかったぁ…、葵お姉ちゃんは人狼じゃないですよね…?」


葵「大丈夫よ、こういったゲームだから信用してとは言わないけど、人狼ではないと言っておくね。」


仁奈「確かに信用はしきれないけど、葵お姉ちゃんは大丈夫な気がします!」


葵「ありがとう、こんなゲームに参加してる人たちで仁奈ちゃんみたいなタイプは珍しいかも知れないわね。」


仁奈「珍しい…ですか……?」


葵「そうね、こう言う場面は大体は人狼じゃないと言ったら渋々納得することが多いんだけど、仁奈ちゃんの場合は私の事をかなり信用してる気がするの。」


仁奈「私はただ信じたいだけですよ、それで痛い目に合うこともあったんですけどね、えへへ」



 そこから少しの間2人で話し合って、私の部屋に移動する事になった。



仁奈「ここが私の部屋…、葵お姉ちゃんの部屋とほとんど変わらないですね!」


葵「確かに変わらないわね、他の部屋もきっとこんな感じなのかしらね。」


仁奈「きっとそうかもしれないですね。」


葵「話しは変わるけど、仁奈ちゃんってこのゲームは初めてなの?」


仁奈「私はテーブルゲームとかアプリではやったことありますけど、こういった凝った感じのは初めてです。葵お姉ちゃんはやったことあるんですか?」


葵「私は2回目よ、前回は今回と人数は一緒だけど確か騎士は居なかったわね。」


仁奈「そうなんですね、ってことは前回は勝利条件に満たしてなかったから今回も参加になったんですかね?」


葵「前回は私勝利したわね、人狼としてね。だけど3億は支払われずに何故か今回も参加になったわ。」


仁奈「えっ…、人狼として勝利したのに何故…?」


葵「よく分からないわね、ちなみにこの事は他の皆には内緒でお願いね?そろそろ時間だから移動しよっか?」


仁奈「わかりました、行きましょう!」



 2人で会議室に移動したら、既に他の4人は自分の椅子に座っていた。

 まだ時間には多少余裕あるのに律儀だなと思った。

 しばらく椅子で待っていると15時になった時に、モニターが付いて白い仮面をつけた男が映った。



GM「皆さん時間内にお集まりいただきありがとうございます。お時間になりましたので、話し合って下さい。」


「さて、何から話そうか?」


「まずは自己紹介からしましょうか。名前と出来たら今回のようなゲームの経歴も教えてくれたらありがたいです。」


仁奈「占い師も出来たら自己紹介の時に、名乗りあげてくれたら嬉しいですね。」


矢田「そうね。」


葵「席の番号的にまずは私からでいいかしら?」


「いいよ。」


葵「私は平田葵よ、こういったゲームの経験はないわ。よくスマホアプリでやってたわね。私は占い師で、役職のカードには誰が白か1人だけ書いてあったわ、その誰かは後で教えるわね。」


「2番の森口翔也です、僕はルールだけは知っていますが、誰かとやった事もアプリでもやったことはありません。僕は村人陣営です。」


矢田「もう私の番なのね、矢田貴美子よ。そうねぇ、私は今回みたいなゲームは1度だけやったことあるわね、勝利条件は満たせずもう一度ここに来たわ。私は占い師ではないわ。」


仁奈「4番の相澤仁奈です、私はよく友達とかアプリでやってました。こういう本格的と言うか本気のやつはやったことはありません。私も村人陣営です!」


谷口「俺か、俺は谷口竜也だ。ツレを集めてよくやってたが、アプリとか今回みたいなマジモンのやつはやった事ねぇな。俺も占い師じゃねぇよ。」


「最後は僕だね、僕の名前は織田風弥だよ。僕は過去に1回このゲームに出て勝っているんだ。だけど何故か賞金は支払われず、こうやってまた出ることになった。あとは僕も占い師でカードに僕以外の1人が白だと書いてあるよ。」


矢田「やっぱり占い師2人出てきたね。」


谷口「そうだな、占い師と名乗った2人は、誰が白かをこの後にせーのって言うからそいつに指を指してくれ、いいな?」


葵「おっけー」

織田「いいよ」


谷口「せーの!」


 2人とも私を指差した。


葵「あら、被ったわね。なんでその子にしたの、人狼さん?」


織田「そのセリフをそっくりそのままお返しするよ、人狼さん。」


葵「私のカードには4番席が人狼ではないと書いてあったのよ、君のカードには仲間の名前が書いてあったんじゃないの?」


織田「僕の方こそ本物の占い師で、その子が人狼ではないと書いてあったんだ。」


葵「早くシッポと耳を出したらどう?」


織田「僕は正真正銘の占い師だからシッポと耳は無いんだよ、ごめんね。君の方こそシッポと耳を出しなよ。」


谷口「気持ちは分かんではないが落ち着こうか、2人とも。」


織田「あぁ、すまない。」


葵「ごめんなさいね。」


谷口「過去にゲームに参加した2人は、占い師と名乗る者同士でこんな感じにヒートアップしてたか?」


矢田「そうね、私の場合はよりヒートアップしてたかな?前回は今回みたいに止める人が居なかったから、お互いに殴りかかろうとしてたわね、今回の首輪は前回にも付けられてて、それによって収まったけどね。」


織田「僕の場合は今回は当事者だからちょっとなんとも言えないけど、僕の方の前回も熱くなってたけど、殴り合いとかそんな雰囲気は無かったかな?」


谷口「そうか、教えてくれてありがとう。今の状況を整理すると、占い師が2人出てきてお互いに4番の相澤さんに白出しをしている、俺含め完グレが3人。さてどうする?」


森口「そうですね…、やっぱり6人の場合は占い師を決め打ちして進めるべきですかね?」


矢田「そうね、決め打ちすることが大半だと思うし、私の前回のゲームも決め打ち進行してたね。」


織田「僕の前回も占い師は決め打ってたよ、まぁ僕が本物なのでね。」


葵「私が本物よ?」


谷口「お前ら2人は落ち着けって。」


仁奈「アプリでもよくこういった場面は決め打ち進行ばっかりですね、私は決め打って良いと思ってます。」


谷口「俺も決め打ちでいいかと思っているが、占い師名乗ってる2人はどうだ?」


葵「決め打って構わないわよ、織田さんに入れてくれるならね?」


織田「僕も決め打ちでいいよ、平田さんに入れてくれるなら。」


谷口「2人が良いって言ったってことで決め打ちするか、もうちょいしたら投票の時間になりそうだけど、占い師以外の皆はもう決めてるか?」


仁奈「私は決めてますね、言わないですよ?」


森口「僕も一応は決めてますが、その時に変える可能性もありますね。」


矢田「私はちょっと決めかねてるかなぁ…、投票の時に決めるね。」


GM「皆様投票の時間がやって参りました、投票の方法はこの後箱を持たせたスタッフを現場に向かわせてますので、その箱の中に名前を書いた紙を入れてください。箱を持たせたスタッフはそのまま、私の所に戻ってきてもらいます。」


 誰かが部屋に入ってきた。


スタッフ「失礼します。」


GM「ちょうどいい所に来てくれましたね。そちらのスタッフの箱の中に1番の方から紙に名前を書いて入れていって下さい。」


葵「わかりました。」


 全員紙を入れてスタッフが戻って行った。


GM「皆様お待たせしました、集計が終わりましたので、最も票を貰っている方を発表いたします。最も票を貰った方はこの方です―――――――」



 ―――――――――――――――――――


 どうも、エミたろでございます。

 2話目で主人公の役職を明かすかどうか悩みましたが、1話のラストをあんな感じにしたので明かそうと思い、こういった形にしました(´-`).。oO

(この話のように確白にしたら6人だと村人以外はおそらくほとんど成り立たないと思って、わかる人にはすぐわかると思ったから明かしたなんて言えない…)


 そして想定よりも文章が長くなってしまいました(´・ω・`)


1話大体3000文字前後にしようかなと思っていたのですが、この話は4000文字を超えてしまいました(´・ω・`)

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