第30話 第8部 発覚編 6
ここまでのあらすじ
ガレージ地下射撃場に集まった彩斗、四郎、明石、喜朗の4人は悪鬼となり死霊を見る事が出来る圭子に何とか『ひだまり』に巣くうスケベ死霊軍団の存在を認めさせるための会議を始めたのであった。
以下本文
「うむ、それで彩斗。
圭子さんがあのスケベ死霊どもの存在を認めるための説得材料の情報と言う物をパソコンで調べていたな。」
俺はパソコンを射撃台の上に置いて開いた。
明石、四郎、喜朗おじがパソコンを囲んだ。
「ちょっと興味深い情報なんだけど…喜朗おじ、初めてスケベ死霊が加奈の足元にたむろするようになったのはいつ頃かな?」
「うん、確か…3年前の5月だったと思ったな。
最初見た時は俺も驚いたが、まぁ、実害が無さそうなので見逃してやったんだ。
それから日を追うごとにどんどん増えて行ったんだが…。」
「喜朗おじ、それは良い判断だったと思うよ!
なるほど!
やはり俺の読みは当たっているよ!
みんなちょっとこれを見てくれる?」
「これは…あのあたりの犯罪の統計だな。」
「どれどれ…痴漢に覗き、不審者や下着泥棒…スケベな犯罪の発生件数か…なに?」
「おお!これは!」
「なんと言う事だ!」
四郎達が口々に驚きの声を上げるのを聞いて俺はにやりとした。
「そうなんだよ。
スケべ死霊が『ひだまり』に集まり始めてから、そして今、恐らく地域のスケベ死霊がほぼ全て『ひだまり』に集まっている状態ではこの手のスケベな犯罪が他の地域と比べてずっと少なくなっているんだよ。
全くゼロになったと言う訳じゃ無いけれど、俺が調べた結果、他の似たような住居環境の地域の2割ほどしかスケベ犯罪が起きていないんだ。」
「…と言う事はスケベ犯罪が8割減…それはつまり…あのスケベ死霊どもが…と言う事か?」
喜朗おじの言葉に俺は頷いた。
「つまりあの地域のスケベ死霊が『ひだまり』に集まって加奈達のあの制服姿に夢中になっている事で街中でのスケベ犯罪が減っているんだ。
つまり、普通だと、『ひだまり』が無いような所では欲求不満に陥ったスケベ死霊どもが町中をうろついて意志が弱い人間の男に憑依してスケベ犯罪に手を染めさせると言う事が起きていると判るよ。
ところが『ひだまり』で欲求が解消されて満足な日々を送っているスケベ死霊どもは町中をうろついて意志が弱い人間の男に憑りついてスケベ犯罪に走らせることをしないと言う訳さ。
もっとも生まれながらのスケベ人間と言うのは一定の確率で存在するからスケベ死霊がそそのかさなくともスケベ犯罪に走るから、スケベ犯罪が全く起きないと言う事は無いのだけど、『ひだまり』のおかげでこの地域のスケベ犯罪の発生率が2割ほどに抑えられているんだよ。」
「…おおお!
地域の役に立っていると言う事じゃないか!
その地域のスケベ犯罪発生の一因であるスケベ死霊達を一つに集めてスケベ欲求を解消していたと言う事だな!」
「つまり『ひだまり』がスケベ犯罪の撲滅に一役買っていると言う事だな!」
「うむ!これは凄い事だ!
欲求不満のスケベ死霊どもを街中に放ってしまうよりもずっと良い事だな!」
俺は四郎達の反応に満足げに頷いた。
「その通りだよ、『陽だまり』にスケベ死霊どもを集めて欲求を解消させる事で俺たちはいつの間にか地域に発生するスケベ犯罪の減少の一役を買っていたと言う事なんだ。
そして、これは『ひだまり』の売り上げ高の推移の表なんだけど、明らかにスケベ死霊が定着して数が増えると共に上がっているんだ。
これはあの疫病などや季節の事や景気の悪さなど関係なしに、更にジンコや真鈴がアルバイトに入ってから更にぐんと伸びていて安定して上昇してるんだよ。
お客の回転率が多少下がってはいるけど客単価は倍以上になっているのさ。
そして来店する客の数は安定して増え続けている。
『ひだまり』はこの世にスケベ死霊がいる限り、スケベ死霊が客を集め続けて地域のスケベ犯罪を減らし続けて、しかも繁盛すると言う事さ。」
四郎が考え込んだ。
「うむ、理屈は充分に判ったがな…しかし世の中にはメイド喫茶などと言う風俗すれすれの接客を売りにしている店もかなりあるようだが…なぜ『ひだまり』にはこんなにスケベ死霊やスケベな男連中が集まるのだろうか…。」
「そうだな四郎。俺も少し不思議には思っていたぞ。
確かに、加奈達の制服が絶妙なだけで、本物の武器を壁に飾ったり独特な落ち着いた雰囲気で、けっしてスケベなイメージは無いぞ。
確かに料理やスイーツは悪鬼の喜朗おじが作るから美味いに決まっているのだがな。」
「それは俺自身も意外には思っていたんだがな。
おれはただ趣味の範囲で加奈の制服を作っただけで決して客にスケベな姿を見せろなんて加奈に言った事は一度もないぞ。」
四郎達が首を捻っている。
俺は自論を展開した。
「そこなんだよ。
『ひだまり』はメイド喫茶でもなんでもなく、あくまで普通の喫茶店なんだよ。
いらっしゃいませご主人様~!とかオムライスにケチャップでラブとか書いたり見え透いた事はしていない。
加奈達だって客に余計な媚を売ったりしないでしょ?
そういう、スケベ要素があるにもかかわらず、ごく普通の接客をしていると言う事はね、スケベな客にとって凄くお得感が有るんだよ。
萌えると言っても良い要素だと思うよ。
客は実は敏感であざとい感じで演出してもすぐに見抜いてしまうんだよ。
裏に隠れた商売っ気を見抜いてしらける事も有るんだ。
それに、メイド喫茶やキャバクラとかに行ってスケベ感満載な服を着た女性のパンチラや胸元の隙間から見えるブラジャーや胸の谷間なんかよりも、ごく普通の女性がふとした時に意識なく見せるパンチラや胸の谷間の方が俺の調査だと12・6倍くらい興奮するものなんだよ。
風俗商売みたいなあこぎに高い値段でもなくごく普通の飲み物や食事を頼んで、そういうラッキーな物を見れると知れば世の中のスケベが放っておく訳が無いよ。
しかも加奈をはじめとして真鈴やジンコ、時々応援で入る圭子さんだってレベルが高い美人と言えるよ。
変な媚びを売らないで普通に一所懸命に接客をしている。
だから女性客だって年をとった客も来る。
『ひだまり』程度の値段ならばどんなに通ってもサラ金に走ったりして人生を壊すような心配もないからね。
そしてここに居ついたスケベ死霊達がどんどん客を連れて来てくれる。
だからこれからの『ひだまり』の未来は明るいと思う。」
俺の説明に四郎達が感心した。
「いや、彩斗の分析は物凄いな!
30過ぎまで2回と4分の1野郎だったり、鯨女顔面鷲掴みキス拒否られなどの修羅場をくぐって来たからかぁ!」
「けつの穴花火事件はともかく半分皮を被っているのを金髪美女に笑われたりしながらもよくぞ真鈴のブーツの臭いを嗅ぐ程度の犯罪しかしなかったのは特筆に値するぞ!」
「そのスケベ心をスケベ犯罪手前で抑え込んでいる彩斗こそがワイバーンスケベリーダー!
いや!ワイバーングレートスケベリーダーだな!」
四郎達が口々に俺を褒めてくれて少し照れ臭かった。
「しかしだな彩斗、地域のスケベ犯罪の減少や『ひだまり』の売上向上にあのスケベ死霊どもが貢献すると言う事はしっかり判るのだが…。」
「そうだな、スケベ死霊どもが役に立っていると言う事は判るがしかし…。」
「そうなんだ、加奈やジンコや真鈴の足もとに群れてスカートを覗くスケベ死霊達のビジュアルを見て圭子さんがどういう反応を…。」
俺はにやりとした。
四郎達の懸念は既に考えてある。
『ひだまり』の売り上げが向上したり地域のスケベ犯罪を減少させたりしたとしても、圭子さんが加奈や真鈴、ジンコの足元にスケベ死霊が群がりスカートの中を覗くと言う事を許せるのか…ましてや圭子さんが手伝いに入る時に圭子さん自体がスケベ死霊にスカートを覗かれると言う事を容認できるのか…。
ここ数ヶ月、命懸けで悪鬼を討伐してきた俺を舐めてもらっては困るのだ。
四郎を復活させた当時の弱虫2回と4分の1野郎の俺と今の俺とは違うんだ。
この短期間で俺の性体験は9回と4分の1で4倍になった。
つまり、今までの俺が『1スケベレベル回数彩斗』だとしたら今の俺は『4スケベレベル回数彩斗』になっているのだ。
「ふふ、その辺りは既に計算して対策を練っているんだよ。
まぁ、これを見て欲しいんだ。」
俺はパソコンの画面を新たに開いた。
はなちゃんにインタビューした動画だ。
『霊体を通り抜ける時』とタイトル。
画面上のはなちゃんがおもむろに語りだした。
「うん?
死霊が密集している所を通り抜けるとどうなるかじゃと?
死霊が見えない人間や、少数だが死霊が見えない悪鬼はそのまま通り過ぎるじゃの。
その時、見えなくとも霊体を通り抜ける時多少の抵抗はあるのじゃの。
死霊とは言え何らかのエネルギーがそこに存在するから、それを通り抜ける時には気が付かなくとも何らかの抵抗はあるじゃの。」
画面外から俺の声が聞こえる。
「はなちゃん、それはさ、死霊が密集している所を通った場合、多かれ少なかれ体に負担がかかると言う事かい?」
「まぁ、そういう事じゃの。
なにも存在しない、空気だけの所を通るよりはずっと抵抗があるじゃの。
体にある程度の負荷がかかると言う事は確かじゃの。」
「ね。
そういう事だよ。」
俺はにやりとして四郎達に言った。
「うむ、負荷がかかるのはわれでも判るが…。」
「彩斗が言いたい事が良く判らんな…。」
「確かに加奈がスケベ死霊に纏われだして暫くは足が少し重くなったと言っていたが…だから俺は大入りを出してやる事にしたのだがな。」
「それだよ!喜朗おじ!
じゃあ、これを見てよ。」
俺は別の動画を見せた。
ジンコが客に注文を取っているのを横から撮った動画でジンコの下半身をアップした画面だ。
スマホの動画にはスケベ死霊が映らないのでジンコの足がクリアーに見る事が出来る。
「なんだ彩斗、お前激写小僧になったのか?」
「このスケベ野郎め!もう少しカメラが低ければ盗撮レベルだぞ!」
「ジンコの足のラインがまるわかりだぞ!
やはりスケベリーダーだな!」
四郎達が口々に文句を言ったが、ジンコの美しい足に皆はくぎ付けだった。
やはりこいつら全員スケベだった。
「違う違う!これはある科学的な根拠を立証するために撮った動画なんだよ!
けっしてスケベな意味で撮ったんじゃないよ!
俺を盗撮野郎と一緒にしないでくれ!
あのね、これはジンコがバイトを始めた頃の動画なんだよ。
次に1か月後の同じようなアングルで撮った動画を見せるよ。」
俺はその1か月後に似たアングルでジンコを撮った動画を見せた。
「おお!やはりジンコの足は美しいな!」
「すらりとしていてしかも健康的だ!
絶妙に絶対領域が見えそうで見えないぞ!」
「確かに素敵な足をしているが…ん?
なんか、前よりすらりとしている感じが…普通に細くなったと言うよりも何と言うか…。」
流石スケベキングな喜朗おじはジンコの足の変化に気が付いた様だった。
「さすが喜朗おじだね。
俺はジンコの足の変化に気が付いてくそ高いソフトを買って画像解析をしたんだよ。
これがそれ。
1か月でジンコの足の太さと筋肉の付き具合の変化が判るでしょ?」
画像解析をした画面にはジンコの足に筋肉が付き贅肉が落ち、それでいて変なムキムキ足になっていない事を示す色分けした足の画像が現れた。
それは次に見せた別の解析画像の、美脚で有名な女性アスリートの足と似た比率になっていた。
「おお!これはぁ!」
「その通り、さっきはなちゃんが言っていたようにジンコは足にまとわりつくスケベ死霊に気が付かずにその中を通り抜ける事によって足に負荷がかかった状態を維持していたんだよ。
一種の加圧トレーニングみたいな物でさ、スケベ死霊が足元に密集している『ひだまり』でウェイトレスのバイトをしているだけで知らず知らずにトレーニングをしていたと言う訳だね。
これは数年やっていた加奈や最近始めた真鈴も同じ事だよ。
最近特にジンコや加奈や真鈴の足が速く敏捷になった事は四郎達も判っているでしょ?
最近スケベ死霊の密度が濃くなっているからね。
トレーニングも強化されていると言う事なんだ。」
「確かにそうだな!
短時間で凄く敏捷になったのは間違いないぞ!」
「うん、俺も少し驚いていたんだが…まさかこういう事か!」
「これは彼女たちが強くなり生き残る確率も上げると言う事だ!」
「そうでしょ?
圭子さんもこれを見たらあながちダメとは言わないと思うね。
加奈達はスケベ死霊の存在も知らずにしかも体も鍛えて美しい足と敏捷性を身につけているんだよ。
これで後、俺が考えている事は通販番組みたいに使用者の感想、加奈達にスケベ死霊達の存在を隠して足が敏捷になった事を実感するようなインタビューをした動画を圭子さんに見せれば、スケベ死霊に実害は無いし良い事だけしか起こらないし、ひょっとしたら圭子さんも積極的にスケベ死霊を利用するかも知れないしね。」
「う~ん、あのスケベ死霊どもに圭子のスカートの中を見せるのは抵抗あるが…まぁ、実害は無いし圭子の足も奇麗になって敏捷になるならば…しょうがないな。」
「しかし凄いな彩斗!
これで完璧に圭子さんを説得できるぞ!
流石は俺達のスケベリーダーだ!」
「皆!彩斗を胴上げしよう!」
「そうだな!」
「やろうやろう!」
「彩斗を胴上げだ!」
四郎達は笑顔でス・ケ・ベ!サ・イ・ト!と言いながら俺を胴上げした。
なんか誇らしかった。
そしてスケベ死霊問題が発覚するはるか以前に俺がジンコの足を撮ってパソコンに保存していた事に誰も気が付かずに済んだ。
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