第16話 第7部 紛争編 3
ここまでのあらすじ
彩斗達はいきなり警察庁特別捜査官と言う肩書を与えられ、面食らいながらも死霊屋敷に戻り、暖炉の間でワイバーンメンバー達に岩井テレサの邸宅で聞いた現状の説明をした。
警察庁長官、在日米軍、自衛隊も正体不明の集団の討伐に協力する事に驚きあきれたメンバー達。
そして、岩井テレサの邸宅での説明会に出席した彩斗達に警察庁特別捜査官と言う肩書と身分証明書が発行された事をジンコが説明すると…。
以下本文
「成る程ね…そして彩斗やジンコと四郎に警察の身分証と大層な階級が与えられたと…」
「あいや、圭子、わらわも警視なんじゃの!
これからは藤原はな警視殿と呼んでもらうじゃの!」
はなちゃんが手を上げてぬいぐるみの懐から警察の身分証を引っ張り出した。
皆が興味津々に覗き込んだ。
「ひゃ~!かっこ良い!」
「本物なんだ!凄いね!」
「はなちゃんの制服姿かっこ良いよね~!
「あたしもこんなの欲しいな~!」
「司ずるいよ!私もこんなの欲しいよ~!」
「これはなちゃんはどう使うの?
でもかっこ良いね!」
「これを現場でびっと出して、うむ、ごくろう!とか言ってみたいな!」
実物の藤原はなの警視の身分証を見て、皆がかなり激しく食いついている様子を見たジンコが口ごもった。
真鈴が俺達を見て声を上げた。
「ねえねえ彩斗や四郎やジンコも貰ったんでしょ!
もったいぶらないで見せなさいよ!」
俺達は渋々と身分証を出して見せた。
みんなはそれを覗き込みますます盛り上がり、少し狂乱気味になりつつあった。
ジンコはその後の事を説明するのが難しくなったと困った顔をしていた。
うん、その気持ちわかるわ~。
「…それでね…あの…さすがに現場ではなちゃんがこれを出して喋ったりしたら…警官達が別の意味で混乱してしまうと言う事で…」
「そりゃあそうだわね~!」
「藤原はな警視を見て卒倒する警官が出るかもね~!」
「あはは、お人形さんの警視が喋ってはな。」
「敬礼して良いのかどうか、何かのドッキリと思われるかも知らないぞ!」
「きゃはは!それはそうね~!」
ジンコが咳払いをして話の続きを話した。
「どうやら岩井テレサの方で手違いがあってね…他のチームにも1人、オルトロスにも依り代に宿った死霊のメンバーがいて、それは…キューピー人形に宿っていてキューピーちゃんと言う名だったから当然警察の身分証の発行はしなかったんだけど…」
「あはは!たしかにキューピーちゃんに警視の階級は与えられないだろうな!」
「そんなの見てみたいけどきっと笑い転げるわよ~!」
「でも、はなちゃんの名前は生前の『藤原はな』で登録されていたから警視の身分証が発行されたのよ。」
「あはは!どこの組織もおっちょこちょいはいるものだな!」
ゲラゲラ笑う喜朗おじたちを見ながらジンコは言いづらそうに言った。
「そうよね、さすがにはなちゃん警視は無理だけど、せっかく発行しちゃったからその身分証は有効なの…でも、私達の活動に支障が出ると言う事でね…」
「ジンコ、確かにはなちゃんの身分証は実質使えないわね。」
真鈴が笑いながらジンコに言った。
「そうなの真鈴…それでね…あの…私達ワイバーンは…特例でもう一人警視の身分証を…」
笑い転げていた真鈴達の声がぴたりと止まり、じっとジンコを見つめた。
「いや、そんなに見つめないでよ…言いにくいんだけどね…もう一人警視の身分証を発行するから誰にするか選んで欲しいと…言われたの。」
真鈴達が固まり、じっとジンコを見た。
手に持っていた身分証をポトリと落とし、しばし暖炉の間は沈黙に包まれた。
「ごほん、やはりここは俺だろうな。
年齢から言っても一番しっくりくるだろうし。」
「喜朗おじなんか駄目よ!
きっとナンパとか悪用するに決まってるじゃないのよ!
ここは私がやっぱり!」
「圭子!人妻で2人の娘がいて警視様か!
だめだめ!ここは俺が一番しっくりしっくりくるだろう!」
「景行ちんのその発言は女性蔑視で母親蔑視ですぅ!
ここは自他ともに認める人間最強のメンバーの加奈ちゃんに決まっていますぅ~!」
「加奈はそんなときにぶりっこしてバッカじゃないの!
私が史上最年少の警視になって!」
「司!私の方が年下だから最年少警視は私がぁ!」
「司も忍も何を言ってるんだ!
少女警視なんてありえないだろうがぁ!
俺は父親として許さんぞ!」
「パパ!
バカじゃないの!
世の中にはこまわり君て少年警察官だっているんだよ!
ほら!死刑!とか!んが!とか!」
「そうよ!アフリカ象が好き!とか八丈島のキョン!とか!」
「おおおお!ガキでかぁ!
なんでお前らはそんな大昔の下品なコミックを知っているんだぁ!
圭子!どういう事だぁ!」
「うちにそんな下品なコミックある訳無いでしょ!
『ひだまり』よ!『ひだまり』に置いてあるのを見たわよ!
喜朗おじ!うちの子達が変態になったらどうするのよ!」
「あのコミック達は店の売りでもあるんだよ!
ろくに子供の管理が出来ない親には警視の権利など無いぞ!」
「ズラかぶって偽の髪振り乱してヲタ芸やる変態クソヲタ親父が警視になったら日本の破滅ですぅ!
ここは絶対!
絶対に加奈がぁ!警視様にぃ!
そうすればもっと加奈のファンがぁ!」
「あんたら何を言ってるのよ!
私はこのメンバーでも一番古顔なのよ!
私が咲田真鈴警視に一番ふさわしいでしょうがぁ!」
「トレーニングの時にどさくさに紛れて加奈のケツの穴に紙の棒を突っ込もうとしたド変態女にはそんな資格無いですぅ!」
「きぃいいいい!
あれは加奈のケツががら空きだったから突きを入れたら加奈が急に動いたからけつの穴に刺さりそうになっただけよ!
あんたまだ根に持っていたのね!
加奈はつらは可愛いかも知れないけど腹黒よ!
腹黒女は警視は無理!」
「俺の戦闘経験が一番!
この中では最善の選択だぁ!」
「長生きしてるからって大きな顔してるんじゃない!
ここは俺が一番見た目的に!」
「変態クソヲタ爺が何言ってるのよ!
人妻娘持ち警視が駄目なんていう奴も駄目!
ここは私がぁ!」
「子どもの権利を認めない社会に反抗するわ!
ここは少女警視の存在がぁ!」
「アフリカゾウが好き!」
「八丈島のキョン!」
呆気に取られてこの酷い状況を見ていた俺の脇をジンコがつつき、切迫した声で囁いた。
「彩斗、あなたリーダーでしょ!
何とかしなさいよ!
このままじゃワイバーンは殺し合いを始めて壊滅よ!」
「うむ、そうだな、このままでは音楽性の違いがとか言って解散記者会見をするような羽目になるぞ。
ワイバーンの危機だぞ。」
ジンコと四郎に言われて俺は必死に考えた。
皆があれほど特別捜査官警視の警察の身分証に食いついて来るとは思わなかった。
何とかここを治めなければ!
将来の遺恨が残らずに何か良い方法、良い方法…。
「じゃんけんだぁ!
じゃんけんで決めろぉ!
お前ら醜い争いせずにきちんとじゃんけんで決めろぉ!」
俺が立ち上がって叫ぶと皆がぴたりと黙り俺をじっと見た。
「何回勝負!
何回勝負にするのよ!」
「リーグ戦で総合得点を!」
「予選リーグで勝ち残った人が決勝トーナメントに!」
「最初はグーから始めるかいきなりじゃんけんぽんで決めるのか!」
「子供はハンデをつけてよ!」
「あいこ5回でPK戦で!」
「見た目年寄りの俺にもハンデを!」
真鈴が口火を切って皆がそれぞれ騒ぎ出した。
ジンコが立ち上がり怒鳴った。
「ああ~!うるさいうるさい!
勝負は一回!全員で一斉にじゃんけんぽんで勝負付けるわよ!
最後まで勝ち残った者が特別捜査官警視の身分証を手に入れる事にします!
後だしやオフサイド、その他の反則は即レッドカードで敗北とします!
私が主審!彩斗と四郎が副審!はなちゃんはラインマン!
さぁ、そこで始めて!
あっ!ちょっと待って!」
ジンコがそう叫び2階に走って行った。
「彩斗、ラインマンて何じゃの?」
はなちゃんが小声で聞いた。
「良く判らないよはなちゃん、一番端っ子に座っているからかな?」
ジンコがホイッスルを首に下げて戻って来た。
「じゃ、始めるわよ!」
ジンコがホイッスルを吹いて特別捜査官警視身分証獲得じゃんけん大会が始まった。
「じゃ~んけ~ん!ぽん!」
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